人生で一番クリアな10秒、道東の冬
釧路から北上。道東は弟子屈エリア、阿寒摩周国立公園がある。
「冬の道東は最高、絶対こないと勿体ない」
この台詞を去年の6月に聞いてようやくこれた冬の道東。
冬は晴天率が高く、晴れていて夕焼けも朝焼けも綺麗に見れる。話には聞いていたので地元横浜の晴れた日の夕焼けをイメーじしていた。
なんだこれは。絵画のようなオレンジが空を覆っていて、真っ白な雪は青い色をほのかに暖かく染めていく。空気は澄んでいて、湖の先の山の輪郭まで見える。少しづつ山の奥に沈んでいく夕焼けを息を潜めて見つめた。
静か。あたりに生物がまるでいなくなったような静けさ。リッチ。この至高の状態を毎日味わってる鹿(そこら中にいる)たちが羨ましくなる。パキ、パキッパキッと地面に落ちている小枝が折れ軋む音だけが聞こえる。
大きく息を吸うと、少しだけ夕焼けの暖かさを吸った気持ちになる。けどもちろん冷たい。けど嫌な冷たさではない。
スーッと凛として綺麗で澄んだ空気たちが鼻に、少し口をかすめ、喉奥に、そして肺の隅々まで入って収まっていく。
いや広がって浸透していく。ふわっと広がっていく。
日が沈んだ、山の奥に今まさに沈んだ。映画一本を見たような体験をしたので一緒にいるメンバーに「10秒静かにしてみない」とお誘いした。
みんなに「いくよ」と声をかけて、10秒をカウントダウンし始めた。
10 数え始め、目を閉じることを忘れていた。目を閉じる
9 足元に風が通り、足がひんやりする。
8 心の中で8を数える時目の力が抜けていた。
7 自然体で、身を任せて立っていた。
6 あたりの静けさに驚く。さっきよりも静か。
5 味わう。
4 時間がゆっくりすぎていく。まだ4秒ある。
3 後3秒、遠くでパキッと音がした。心地良い。
2 残り2秒。ふとあと人生で何回こんな時間を過ごせるのかと考える
1 最後、多分またこれる。と心の中で思う。
目を開けた、そして大きく息を吸い込んだ。
さっき味わった空気の味とはまた別の空気の味がした。
満足感、そんな味。空気に味はないとは思うが多分その時は満たされるようなそんな味が確かにした。
目の前には暗くなった、真っ白の湖と広い空。どこまでも自由でどこまでも雄大な自然のありがたさを体全身で味わった10秒だった。
人は何かを考えなくてはいられない。日常過ごしていても何かに必ず追われている、頭の中で考えないように考えないようにとしても絶対に何かが出てくる。
今回の旅のハイライトは間違いなくこの「人生で一番クリアな10秒だった」それは何かを考えないようにするのではなく、何もかも受け入れその時間を満喫する、今ここに集中した10秒が満足できたからだと思う。
多分、この景色はまた見にくるだろう。その時の10秒で僕はなにを思い感じるのだろう。楽しみに取っておきたい。
横浜→中野 現在はイベント運営企画,組織マネジメントをしています。