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「えっ?!」 その1

「えっ?!」 その1
 
なんて美しい川なんだ‥
向こう岸は、うっすら霞がかかり、はっきりした景色は見えない。
こちら側の河原では子供たちが石を積んで遊んでいる。
うららかな陽光が川面にキラキラと反射している。
全くため息の出るような景色である。
河原に腰を下ろし、この素晴らしい眺めを堪能する。
数人の男女が川の中に入り向こう岸へ渡ろうとしている。
水深は膝くらいまでしかないようだ。
それぞれが会話している様子はない。
ふと川上の方を見ると、浅瀬を子供数人がやはり向こう岸を目指している。
これも、はしゃぎ合っている様子はない。
川のせせらぎは聞こえるのだが、その音にかき消されるのか人の声は聞こえない。
まぁさして気にするほどのことでもない。
それにしても静か過ぎやしないか。
ちょつと待てよ、俺はどうしてここにいるんだ?
 
頭の中が混乱して整理できない。
しばらく、下を向いて考えてみる。
少しずつ記憶がよみがえる。

「そうだ!
俺はインフルエンザで病院へ行ったんだ・・・」
 
一通りの検査が終わると、すぐに別棟のAー4と表示された部屋へ案内される。
部屋へ入るとテーブルの前に椅子が1脚。
テーブルの向こうは全面ガラス張りだ。
しばらく待っていると、スピーカーからまもなくドクターが来られますというアナウンス。
ほどなく、ドクターと呼ばれた医者がガラスの向こうの椅子に腰掛ける。
医者は検査結果をやや深刻な顔をして、
「加藤さん、どうやらインフルエンザですね。
少し症状が気になりますので2〜3日入院してもらいましょうか」
「えっ?たんなる風邪程度の症状なんですけど、入院の必要があるんですか?」
「いえ、大事をとってということです」
「そうですか、じゃあ一度家に帰って入院の準備をしてきます」
「いえ、既に要隔離症状が出てますので‥
このまま入院していただきます。
連絡すべき方がおられたら今のうちにお願いします」
加藤、少しあせる。
「いくらインフルエンザでもちょっと大袈裟過ぎないか‥
まっ、この際指示に従うほかないか・・・」

つづく

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