見出し画像

「えっ?!」 その3

「えっ?!」 その3

で、この状況である。
「えっ!?・・・
お、俺、死んだってことかぁ?・・・」
 
「すると、この景色は・・・
三途の川に賽の河原・・・?
これって、仏教だよな。
おいおい、俺は仏教徒じゃないぞ・・・
にも拘らず、この状況ということは、死ぬと概ねこういった所を通るってことか?」
 
「待て待て、俺はまだ死んでないぞ。
こんなに意識がしっかりしていて死んでるなんてあり得ねえよ!」
 
加藤、ぶつぶつ言いながら目の前の景色を漫然と見る。
 
「俺はまだ結婚もしてない・・・
これといった親孝行もしてない・・・
人生はまだまだ長い、ゆっくりやっていけばいいや・・・くらいにしか思ってなかった。
そうだ、俺の人生はこれからだったんだ・・・
死ぬわけにはいかないんだ」
加藤は、すっくと立ち上がった。
すたすたと川の方へ歩いていく。
 
「この川を渡ったら本当に死んでしまうということか・・・
せっかくここまで来たんだから、少しだけ向こう岸を見てみよう。
岸へ上がらなければ大丈夫だろう」
などという信じられないような考えにいたる。
 
加藤、川へ足を踏み入れる・・・
「うわっ!」
一歩目で首まで川の水がくる。
「な、なんだぁ?!
たしか、みんな膝くらいまでしか水に浸かってなかったはずだぞ」
加藤、そっと二歩目を踏み出してみる。
「うぶっ・・・
ぶはぁ、あ、足がつかない・・・や、やばっ、ブクブク・・・
お、おぼれるよー
ん?
死者がうかばれない・・て、こういうことなのか?」
などという意味不明な考えが頭をよぎる。
 
加藤、やっとの思いで元の岸に戻る。
「ふーっ、死ぬかと思ったよ・・・
三途の川でおぼれ死んだなんて聞いたことないよな・・・」
 
「ん?
そうか、俺は死ねないということか・・・
しかし、どうやって現実の世界にもどればいいんだよ」
 
加藤、今まで前方の景色にばかり目がいっていたが、なんとなく後ろを振り返ってみた。
その、瞬間、
ドーンという、物凄い衝撃が胸を貫いた!
 
「ウ、ウワッ!」
 
「せ、先生!電気ショック成功です!
か、加藤さん意識を取り戻しました!」
 
                    完
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?