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実在するということ

姉は、いつものようによく喋り、よく笑った。

「じゃ、まー君身体に気を付けて頑張るのよ」

「うん、お姉ちゃんもね。ばいばーい」

正弘はビデオ通話のスイッチを切った。


生前の姉そのものだった。


実際、半年間、姉の死を知らずに会話をし続けたのである。


姉は僕の受験の半年前に急逝した。

別に病の床にあった訳ではなく、交通事故による予期せぬ最後だった。
姉は僕より5歳上だった。
東京の短大を卒業してそのまま東京の会社に就職した。
歳が離れていたせいか姉は僕を可愛がってくれた。

僕にとっては受験前の大切な時期だった為に、両親は悩んだ末に僕には知らせないことを決めたらしい。

僕がお姉ちゃん子だった事が大きかったようだ。

おかげでと言うべきなのかどうか‥

僕は無事、難関の大学に入学出来た。


合格発表があって1週間が経過した時、両親があらたまった顔で、

「正弘、話がある」

と言われた。


「えっ!お姉ちゃんが死んだぁ!?そ、それも昨年・・・?

うそ・・・・・

だ、だっていつもスマホで話してるじゃない!

しかもめっちゃ元気そうだし‥」


「あれは、AIが作り出したお姉ちゃんなの・・・」と、母。

「あなたは、受験勉強一筋だったから知らないだろうけど‥」


母の説明によると、生前の姉のビデオ映像、生年月日、血液型、身長、体重・・・etc
を送信すると生成AIが生前の姉を復活させる。

何回かのテストランにより不自然なところに修正をかけほぼ完全な姉が
復活したと言うことらしい。


僕は、しばらく言葉が出なかった。


そして

「葬式はどうしたんだよ‥」

「お前が無事合格したから、これからしようと思ってな。

寺に事情を話し、遺骨は預かってもらっている」


「信じられないよ。

合格した時もあんなに喜んでくれたがお姉ちゃんがAI?・・・


ねぇ、生きる・・・実在してるって・・・


どういうことなの?・・・」


文酔人卍

Koji Doi さんのイラスト(note利用可画像)
にインスピレーションを得て書きました。
ありがとうございました。


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