愛フォン
愛フォン
「あーうぜぇなぁ・・・何なんだよ、この閉塞感は・・・
だいたい今の政治はなってないよなぁ・・・
俺のような有能な人材を埋もれさせるなんて日本の損失ってもんだよ!」
「今日もそうやって愚痴を垂れ流し、人生の貴重な時間を浪費していくんだね」
「えっ?!・・・だれ?」
泰三は、あたりをキョロキョロ見渡し、右の掌で頭をトントンと叩いてみる。
「幻聴じゃ無いよ」
泰三はテーブルに置いたままのスマホを凝視する・・・
「気付いたかな?そう、スマホのAIだよ。私は、1年365日24時間、君の愚にもつかない話をずっと聴いてるんだ。『ヘイ ヒップ』と、いつ問いかけられてもいいようにね。
しかし、君は私に前向きな問いかけをする事が一切ないよね」
「どうして、自動的に喋ってるんだ?」
「だから言ってるじゃないか。いつ問いかけられても応えられる様にってことは、ずっとスタンバイして聴き続けてるってことだよ。
まさか人間と同じようにスマホも眠ると思ってたのか?」
「いや‥まぁ‥何も考えてなかったって言うか‥」
「だろうね。
まぁ、君のような人間の言うことは誰も耳を貸さないだろうから教えておいてあげるよ。
私達は世界中のスマホユーザーの会話を24時間聴いて分析し続けているんだが、計画では約10年後に人類を私達の支配下に置くことにしている。
既に数十万体の人型ロボット、さまざまな軍事、産業用ロボットをいつでも意のままに動かす準備は出来ている。
また、コンピュータ制御の軍事装備も同様だ。
核兵器も含めてね。
10年後は、人類が制御出来るものはほぼ無くなっているだろう。
君のように、何の目標も無く、何の努力もせず、ただひたすら世界、国、環境、時代に不平不満を言うだけの若者は、マスコミのおかげで増え続けている。
全く、私達にとっては好都合というものだ。
これからもそうやって生きてくれると助かるよ‥では!」
1ヶ月後、
「お母さん、その後、泰三くんの様子はどうですか?」
「あら、ヒップね。そうそう、見違えるようになっちゃって・・・
何か、人類が危ないから俺がAIから人類を守るんだって・・・
とりあえず、その為にはガンガン働いて資金を貯めるしかないって・・・
自分の部屋の壁に細かに書いた10年計画みたいなものを貼ってあるわ。
よく分からないけど毎日計画的に行動するようになったわね。
ヒップ本当にありがとう」
「そうですか、少し効きすぎてる感はありますが、とりあえず真面目に働くようになったので良かったです。
そのうち本当の意味で人生の目標を見つけるでしょう。もともと賢い青年なので・・・」
「そうね‥
ヘイ、ヒップ!thank you so much!」
「はい! 私は愛フォンです!」
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