先輩 4
先輩 4
週末、いつもの居酒屋で、
「おい、加津上、俺たちはなこうして酒を飲んでる時も常に感謝の気持ちを忘れちゃいけねぇんだ」
「はぁ、どうしてですか?」
「まず、健康に感謝だ。
次にだな、世界のあちこちで貧困、虐待、戦争等々で悲惨な目にあってる人たちが沢山いるだろ。
俺たちはこうして、1日働いて給料日にはちゃんと給料をもらえて酒が飲めるんだ。
この幸せに対して感謝しなきゃだめだ。
まかり間違っても、あーだこーだ愚痴をこぼして酒なんか飲んじゃ駄目なんだ」
「なるほど、そうですねぇ先輩。
先輩のおっしゃる通りです。さすが先輩です!」
「だろ、よし、色々なことに感謝の乾杯だ」
「はい!カンパーイ!」
こうして、分かった様な分からないような話をしながら飲んでいると‥
「先輩、さっきからどこ見てんですか?」
「おい、見てみろ。
あのテーブル。すごくかわいい娘が2人で飲んでるだろ」
「そうですね。それがどうかしたんですか?」
「おまえ、私たちとご一緒しませんか?
て、声をかけて来い」
「ぼ、僕がですか?
そんなこと出来るわけないじゃないですか。
それより、先輩が言ってきてくださいよ」
「馬鹿だな。俺が行って断られたら恥ずかしいじゃねぇか」
「・・・」
「それ、僕が断られても、僕恥ずかしいですよねぇ」
「まあなぁ・・・」
「あれ?このくだりどこかで、見たような・・・」
などと言ってると‥
「あれ?なんだよ!あの冴えない2人組の男、あの娘たちのテーブルに同席したぞ」
「そうですね。同僚かなにかでしょ」
「なんであんなのが、あんな可愛い娘と飲めるんだよぉ。
世の中おかしいよなー。納得いかねぇよ‥」
「せ、先輩、さっきの感謝の話はどうなったんですか?」
「カンシャ?
なんだよそれ。俺はなこのシチュエーションに納得いかないの!」
これが、負け組‥いや、牧上先輩だ。