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ひなまつり
三郎はいつものように仕事帰りにスーパーに寄り、晩酌のお供を買う。
もうすぐ3月3日、雛祭り。
スーパーのレジを済ませて出入り口へ。
その間に、イベントコーナーがある。
小さなスピーカーから
「灯りをつけましょぼんぼりに~♬♪、
お花をあげましょ桃の花~♫」
聞くともなしに耳に残る。
三郎はいつものように、出入り口横のベンチに腰掛けてタバコに火をつける。
ここには灰皿が置いてある。
ふーっと紫煙を空に向けて吐く。
あたまの中は、ゴジラをイメージしている。
すると‥
「灯りをつけましょ~♫・・・」
無限ループのように、イベントコーナーの音はまだ聴こえる・・・
それを聴きながら三郎はぼーっと今日という1日を振り返る。
と、3台並んで据えられたベンチの向こう端に一人のおじさんが座って何か口ずさんでいる。
手には缶ビールが握られている。
三郎は右耳を少し大きくした。
どうやら、イベントコーナーの雛祭りの歌に合わせて口ずさんでいるようだ。
音楽 「灯りをつけましょ🎶・・・」
おじさん 「かきのたね〜♫」
音楽 「お花をあげましょ‥♫」
おじさん 「かきのたね〜♫」
音楽 「五人囃子の‥♫」
おじさん 「かきのたね〜♫」
音楽 「今日は楽しい‥♫」
おじさん 「かきのたね〜♫」
ここで、音楽は間奏に入る。
おじさんは美味しそうに、かつ満足そうにビールを飲む。
「めっちゃ合ってるじゃん‥」
三郎は感激し、一日の疲れを忘れてしまった。
「この人は昔から音楽に携わっていたんじゃないか?
完璧に調和してるじゃん・・・
しかも、歌ってる歌詞は(かきのたね)だけ」
三郎は思わずそのおじさんに声をかけたくなった。
「あのーおじさん‥」
まで言って、おじさんの左手を見た。
右手に缶ビール。
そして、左手には(かきのたね)ではなく、
ポテトチップスだった
三郎
「柿の種じゃねーのかよ!」
後書き
この超が付くほどのくだらない短編を読んでいただいた読者様は、何処かのスーパーでこの音楽を聴くと、まず、かきのたねが思い浮かぶことでしょう。
その時に、読者様は初めてニタリとするのです。
完
文酔人卍
尚、イメージ画像は
t_and_s_coach 氏の作品を使用させていただきました。
感謝