DXとマーケティングその26:デジタルサービスの開発とマーケティング情報ニーズの評価
分析屋の下滝です。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とマーケティングの関係を考えてくシリーズの26回目です。
今回は、DX書籍の一つである『デザインドフォー・デジタル』の続きを行いたいと思います。
具体的には、DX領域における「デジタルサービス開発」の位置づけと、マーケティング領域における「マーケティング情報システム」との位置づけとの関係を見ていきます。
これまでと今回の記事の流れは以下の図となります。
これまでの記事
第1回はこちら。経産省のDXの定義とマーケティングとの関係について考察しました。
第2回はこちら。『DX実行戦略』におけるDXの定義とマーケティングとの関係について考察しました。
第3回はこちら。「無料/超低価格」のビジネスモデルを分析しました。
第4回はこちら。「購入者集約」のビジネスモデルを分析しました。
第5回はこちら。「価格透明性」のビジネスモデルを分析しました。
第6回はこちら。「リバースオークション」のビジネスモデルを分析しました。
第7回はこちら。ここまでの記事をまとめました。
第8回はこちら。「従量課金制」のビジネスモデルを分析しました。
第9回はこちら。『マーケティング大原則』という書籍におけるマーケティング定義を確認しました。
第10回はこちら。『マーケティング大原則』という書籍で紹介させている「戦略的コンセプト」をDXの視点から関係性を見ました。
第11回はこちら。DXの実行プロセスとマーケティングのマネジメントプロセスの関係性を見ました。
第12回はこちら。DXの実行プロセスとマーケティングのプランニングプロセスの関係性を見ました。
DXと経営篇
第14回はこちら。DXと経営との関係付けの準備を行いました。
第15回はこちら。DXと事業の定義がどのように関係するのかをみました。
第16回はこちら。DXと「われわれの事業は何になるか」と「われわれの事業は何であるべきか」がどのように関係するのかをみました。
第17回はこちら。DXの背景を整理しました。
第18回はこちら。DXの背景と「顧客は誰か」との関係を整理しました。
第19回はこちら。DXの背景と「顧客はどこにいるか」との関係を整理しました。
第20回はこちら。DXの背景と「顧客は何を買うのか」との関係を整理しました。
デザインドフォー・デジタル篇
第13回はこちら。『デザインドフォー・デジタル』というDXの書籍をもとにDXとマーケティングの関係をみました。
第21回はこちら。シェアード・カスタマーインサイトとマーケティングの関係を指摘しました。
第22回はこちら。シェアード・カスタマーインサイトとマーケティングでの新製品開発との関係を整理しました。
第23回はこちら。シェアード・カスタマーインサイトとマーケティングでのカスタマーインサイトとの関係を整理しました。
第24回はこちら。シェアード・カスタマーインサイトとマーケティングでのカスタマーインサイトチームとの関係を整理しました。
第25回はこちら。シェアード・カスタマーインサイトとマーケティングでのマーケティング情報システムとの関係を整理しました。
おさらい:デザインドフォー・デジタルでのDX
以下の図は、『デザインドフォー・デジタル』でのDXの概念を整理したものです。青色がDXでの概念、赤色がマーケティングでの概念です。
デジタル対応化:デジタル対応化ができる企業になれば、イノベーティブなデジタルサービスを開発できる組織能力を備えるようになり、そのデジタルサービスは、より高度なバリュープロポジション(顧客への価値提案)を実現できるものだとされます。
バリュープロポジション:バリュープロポジションは、顧客のニーズに対しその企業のみが提案できるような価値を指します。
DXと組織能力:DXは、デジタル対応化に向けての取り組みとされます。この取り組みは、ビルディングブロックと呼ばれる組織能力を構築することから構成されます。ビルディングブロックは5つあり(図の左上)、各ビルディングブロックは、「人材」、「プロセス」、「技術」の変化をもたらすものとされます。
今回の記事では、ビルディングブロックの一つである、「シェアード・カスタマーインサイト」を扱います。
「シェアード・カスタマーインサイト」は、デジタルサービス開発におけるプロセスのあり方を扱うようなものです。付随してデジタル技術や顧客に関する理解、理解の蓄積と共有といった行いやそれらを行うための体制も関わります。
おさらい:シェアードカスタマーインサイトの構成要素
以下の図に、シェアード・カスタマーインサイトの構成要素を示します。
『デザインドフォー・デジタル』でのニュアンスを拾いきれているわけではありませんが、整理してみたものになります。
本文でどのように書かれているのかは、過去の記事を参照してください。
基本的には、顧客のニーズに応えられるデジタルサービスをいかに開発していくか、ということになりそうです。
以下で、特徴を整理します。
開発プロセス:デジタルサービスの開発は、実験的に何度も行いながら、「デジタル技術が可能にするソリューション」と「顧客ニーズ」が重なり合う部分を見つけるというアプローチを取ります。
顧客の理解、顧客の参加、サービスのアイデア創出:実験では、カスタマージャーニーマップといった顧客を理解するための手法や、外部パートナーや顧客自体の参加、アイデアを募るための仕組みといったのが使われます。
ビジョン:実験においては、ビジョンを定義しておくことは、どのような実験を新たに実施するのか、実験結果の評価基準をどうするのか、という疑問に答える上で役に立ちます。ビジョンは例えば「スマート・エネルギーマネジメント・ソリューションを提供する」や「低コストでヘルスケアの成功を高める」といったものです。
業務プロセス:実験の際に、顧客の理解やデジタル技術の学びが得られます。この学びを蓄積し、社内で共有する必要があります。共有が必要なのは、同じような実験が行われないようにするためです。
組織体制:組織体制としても新しい試みが必要となります。
・IT部門やマーケティング部門等が、製品開発の初期から参加するといった機能横断型のチーム
・実験からの学びを社内に共有・拡散することを目的とした部門
おさらい
この連載は、DXとマーケティングの関係を考えていくものです。関係の捉え方として、ここ数回の記事では、マーケティング領域での概念と、シェアード・カスタマーインサイトでの概念がどのように重なるのかを調べてきました。
マーケティング領域での概念とは、例えば、「カスタマーインサイト」や「マーケティングリサーチ」といったもののことです。
上記の図で示すように、大きく、2つの可能性があります。
1.マーケティング領域での概念に、シェアード・カスタマーインサイトの概念がすべて含まれる可能性
2.マーケティング領域での概念に、シェアード・カスタマーインサイトの概念が部分的に含まれる可能性
また、以下の可能性も考えられますが、恐らくありません。
3.互いに関係が全くない可能性。これは、これまでの記事の結論からするとありません。
4.シェアード・カスタマーインサイトにマーケティング領域の概念が含まれる可能性。シェアード・カスタマーインサイト自体が、マーケティング領域より広い概念を扱うとは見なせないと思われます。
この可能性1と2を分析するために、これまでの記事では、具体的には、次のような流れをもとに議論してきました。
1.まず、マーケティングにおける「新製品開発プロセス」と「マーケティング・リサーチ」との関係性があるのではないかと指摘しました。
2.次に、「新製品開発プロセス」との関係性を議論しました。
3.次に、マーケティング領域での「カスタマーインサイト」との関係性を議論しました。
4.次に、マーケティング領域での「カスタマーインサイトチーム」との関係性を議論しました。
5.次に、マーケティング領域での「マーケティング情報システム」との関係性を議論しました。
以下では、2~5で具体的に議論した流れを振り返ります。これら2~5は、参考にしている『コトラー、アームストロング、恩藏のマーケティング原理』の書籍の5章と8章に対応します。
・5章:マーケティング情報とカスタマー・インサイト
・8章:新製品開発と製品ライフサイクル戦略
では、このようにマーケティング領域とDX領域の関係を分析することで何が得られるのでしょうか。
・体系的な取り組み:マーケティング領域自体は、歴史があり、上記の書籍のように一定の体系化がされています。もちろん、環境の変化に応じて、これまでの知見は適切でなくなったり、新たな知見が組み込まれることはあります。
では、この体系化された領域に対し、比較的新しいDXは、どのような影響を与えるのでしょうか。何らかの関係があるなら、その関係は、整合性や一貫性が取れていることが望ましいと思われます。そうでなければ、それぞれの部署や従業員の活動において衝突や矛盾が発生し、十分に成果が出せなくなるかもしれません。
これまでの分析のふりかえり
では、以下の順でこれまでの分析をふりかえります。
・新製品開発プロセス
・カスタマーインサイト
・カスタマーインサイトチーム
・マーケティング情報システム
新製品開発プロセス:新製品開発プロセスでの整理は以下の図となります。DX領域での「デジタルサービス開発」は、マーケティング領域での「新製品開発」の一種として分類しました。
マーケティング領域においては、新製品開発で言及されている特徴として、以下があります。
・顧客中心の姿勢:開発プロセスに置いて顧客を巻き込むこと
・チーム型の製品開発:プロセスの最初から最後まで様々な部門の関係者が関与すること
これらは、シェアード・カスタマーインサイトでも言及されている特徴と同様のものであると考えられます。
シェアード・カスタマーインサイトでは、デジタルサービス開発のプロセスにおいて、以下の4つが言及されています。
・ビジョンの設定
・顧客のニーズを満たせるようなサービスを見つけるために実験的に開発を繰り返すプロセス
・開発プロセスにおいて、デジタル技術と顧客に関して学習したことの蓄積・共有
・学習内容の蓄積と共有に責任を持つ組織体制
これらの特徴は、マーケティング領域では言及されていませんでしたが、新製品開発プロセスの枠組み内に位置づけたとしても、問題はないと思われます。また、これらの特徴は、デジタルサービス開発に特有の特徴である可能性があります。
カスタマーインサイト:新製品開発プロセスの枠組みでは、上記の4つの特徴は言及されていませんでしたが、マーケティング領域おける他の概念の説明時に言及されているかもしれません。そこで、次に、マーケティング領域における「カスタマーインサイト」について調べました。カスタマーインサイトは「顧客に関しての深い洞察」と意味されます。
DX領域におけるシェアード・カスタマーインサイトは、その名の通り、カスタマーインサイトに関するものです。シェアード・カスタマーインサイトにおけるカスタマーインサイトの定義は見つけられませんでしたが、「顧客に関しての深い洞察」と大きくは変わらないと思われます。
マーケティング領域でのカスタマーインサイトの概念を調べた結果としては、マーケティング領域におけるカスタマーインサイトの概念は、シェアード・カスタマーインサイトでの議論の枠よりも広いものと言えそうです。以下の2つの観点から、違いがありそうです。
1.カスタマーインサイトの位置づけ。カスタマーインサイトは、他の概念とどのように関係するのか。
2.カスタマーインサイトの使われ方。得られたカスタマーインサイトはどのプロセスで使われるか。
1つ目は、以下の図で示すように、マーケティング領域においては、「マーケティング情報」という概念があり、カスタマーインサイトは、その情報から抽出されるものと位置づけられています。シェアード・カスタマーインサイトでは、マーケティング情報という概念は出てきません。
上記の図では、マーケティング情報を得る手段の一つとして、マーケティングリサーチを位置づけています。
2つ目は、カスタマーインサイトの使われ方に関するものです。以下の図で示すように、マーケティング領域おいてはカスタマーインサイトの使われ方は、新製品開発に限りません。広告キャンペーンといった他のプロセスにも使われます。シェアード・カスタマーインサイトが想定してる範囲では、広告キャンペーンは言及されていません。
マーケティング領域におけるカスタマーインサイトの概念は、ここまでとなります。シェアード・カスタマーインサイトでの4つの特徴に対応するような概念は、存在しませんでした。
カスタマーインサイトチーム:続いて、マーケティング領域では、カスタマーインサイトチームと呼ばれるような組織体制が紹介されています。カスタマーインサイトチームは、以下の図に示すように、様々な方法でマーケティング情報を収集し、カスタマーインサイトを抽出する役割を持ちます。
カスタマーインサイトチームは、シェアードカスタマーインサイトにおける以下の特徴に近い役割を持つと言えます。
・開発プロセスにおいて、デジタル技術と顧客に関して学習したことの蓄積・共有
・学習内容の蓄積と共有に責任を持つ組織体制
しかし、特徴を細かく見ていくと、違いがありそうです。
1.カスタマーインサイトの蓄積と共有の有無:カスタマーインサイトチームの役割として、カスタマーインサイトを蓄積し、社内で共有する、とまでは書かれていないこと。
2.新製品開発プロセスでのカスタマーインサイトの抽出の有無:カスタマーインサイトチームの役割として、新製品開発プロセスでのカスタマーインサイトの抽出とは書かれていないこと(上記の図では、新製品開発プロセスを対象としても問題はないとして付け足して拡張したものです)。
3.技術要素の理解の有無:カスタマーインサイトチームの役割として、新製品開発プロセスでの「技術要素の理解の蓄積」に関しては、書かれていないこと。デジタルサービス開発では、デジタル技術の理解が必要となります。
ここまでの議論踏まえて、以下の図に、シェアード・カスタマーインサイトの特徴とマーケティング領域での概念の関係性を整理しました。
この図では、シェアード・カスタマーインサイトの特徴を、これまで議論してきたものより、細分化しています。理由としては、マーケティング領域における概念が、どの特徴を対象とするのかをより細かく分析するためです。
マーケティング情報システム:カスタマーインサイトは、マーケティング情報から抽出されるものであるとされています。ただし、マーケティング情報自体をどのように収集し、収集したマーケティング情報からマーケティングインサイト(とマーケット・インサイト)をどのように抽出するのかのプロセスは、適切な仕組みが存在するのが望ましいとされます。マーケティング情報システムは、そのような仕組みであるとされます。以下の図は、マーケティング情報システムを示しています。
では、マーケティング情報システムは、シェアード・カスタマーインサイトでの以下の特徴を備えているのでしょうか。
・デジタル技術に関する
・学習内容の蓄積
・学習内容の共有
・学習内容を共有する責任を持つ体制
・顧客に関する
・学習内容の蓄積
・学習内容の共有
・学習内容を共有する責任を持つ体制
現状の結論としては、以下のようになりそうでした。
1.マーケティング情報システムは、マーケティング情報を対象としており、カスタマーインサイトの蓄積や共有、共有に責任を持つ体制に関しては、扱ってないように思われる。
2.マーケティング情報システムは、デジタル技術に関する学習内容の扱いを対象外としている。
ただし、この結論は、マーケティング情報システムの概要をもとに生み出したものですので、詳細をさらに見ていくことで、結論が変わるかもしれません。
今回の話
前回からの続きとなります。マーケティング情報システムの構成図を以下に示します。
マーケティング情報システムは、大きく7つの要素の関係するようです。
1.マーケティング・マネージャーなどの情報のユーザー
2.情報ニーズの評価
・マーケティング情報の抽出
3.社内データベース
4.マーケティング・インテリジェンス活動
5.マーケティング・リサーチ
6.情報の分析と利用
7.マーケティング環境
今回は、「情報ニーズの評価」を対象に、シェアード・カスタマーインサイトとの関係を探ります。「情報ニーズの評価」は、「情報のユーザー」との関わりを持ちますので、上記項目の1と2を扱うことになります。
具体的には、シェアード・カスタマーインサイトの以下の特徴に関係する記述があるのかを見ていきます。目的は、シェアード・カスタマーインサイトと共通する点、異なる点を把握することです。
・デジタル技術に関する
・学習内容の蓄積
・学習内容の共有
・学習内容を共有する責任を持つ体制
・顧客に関する
・学習内容の蓄積
・学習内容の共有
・学習内容を共有する責任を持つ体制
マーケティング情報に関するニーズの評価
では、具体的に分析していきます。
マーケティング情報システム(MIS)は主として、マーケティング部門をはじめとする各部門のマネージャーに向けられている。しかし、供給業者や再販業者といった外部パートナーに情報を提供することもある。例えば、北海道の生活協同組合コープさっぽろでは、取引先メーカーに、年間わずかな会費を支払うだけで、コープさっぽろのPOSデータ(売上データ)を入手できるようにしている。メーカーはデータを分析することにより、どの店で、どんなブランドが、どれくらい売れているのかを正確に把握できる。
──『コトラー、アームストロング、恩藏のマーケティング原理』, コトラーら, pp.115-116
まずは、どのようなユーザーがいるのかです。
・マーケティング部門のマネージャー
・マーケティング部門以外のマネージャー
・外部パートナー
・供給業者
・再販業者
ユーザーではないですが、提供している情報の例としては以下が挙げられています。
・POSデータ(売上データ)
情報の使い道の例としては以下が挙げられてます。
・どの店で、どんなブランドが、どれくらい売れているのかを正確に把握する
続けます。
優れたMISは、「ユーザーが手に入れたいと考える情報」、「本当に必要とする情報」、「実際に提供できる情報」のバランスがとれている。情報収集の際には、まずマネジャーにインタビューをしてどんな情報を求めているかを探り出す。本当に必要かどうかをよく考えもせず、情報なら何でも欲しいというマネジャーもいるだろう。情報は多すぎると少なすぎるのと同じくらい有害であることを理解しておく必要がある。
知らなければならないことを見落とす、あるいはあってしかるべき情報を求めないマネジャーもいる。例えば、ブログやソーシャルネットワーク上で自社ブランドに関する議論が沸き起こっているなら、それが好意的なものであれ好ましくないものであれ、マネジャーは知っておかなければならない。ところが、このようなものの存在をしらなければ、当然求めようともしない。
──『コトラー、アームストロング、恩藏のマーケティング原理』, コトラーら, p.116
ここでは、マーケティング情報システムの品質を議論しているようです。優れたマーケティング情報システムは、以下のバランスがとれているとしています。
・ユーザーが手に入れたいと考える情報
・本当に必要とする情報
・実際に提供できる情報
次に、「情報を必要としているユーザー」と関わりをもつ人物が出てきています。名前はついていませんが、「ニーズ評価者」と呼びたいと思います。
・ニーズ評価者は、書かれているように、マネジャーにインタビューして、どんな情報を求めているのかを探り出す。
次に、マネジャーの情報感度について書かれているように思えました。マネージャーは情報の感度が低い可能性があります。
・知らなければならないことを見落とす
・あってしかるべき情報を求めない
続けます。
情報の入手、分析、集積、提供に要するコストは、瞬く間にかさんでいく。さらなる情報から得られるインサイトの価値が、その情報を提供するために費やされるコストに見合うものなのか見極めなければならないが、情報の価値もコストも往々にして査定が難しい。
──『コトラー、アームストロング、恩藏のマーケティング原理』, コトラーら, p.116
ここでは、情報はタダではなく、コストを伴うものであり、情報から得られるインサイトは、コストとのバランスを見極めるものであることが述べられています。
考察
では、今回の目的である、シェアード・カスタマーインサイトでの以下の特徴が議論されていたのかを見ていきます。
・デジタル技術に関する
・学習内容の蓄積
・学習内容の共有
・学習内容を共有する責任を持つ体制
・顧客に関する
・学習内容の蓄積
・学習内容の共有
・学習内容を共有する責任を持つ体制
まず、デジタル技術に関する特徴は見られませんでした。
次に、顧客に関してはどうでしょうか。顧客に近い記述としては次の2つでしょうか。
1.メーカーはデータを分析することにより、どの店で、どんなブランドが、どれくらい売れているのかを正確に把握できる。
2.ブログやソーシャルネットワーク上で自社ブランドに関する議論。
1つ目は、マーケティング情報としての売上データであり、そのマーケティング情報を把握することで、何らかのカスタマーインサイトが得られるという感じでしょうか。このように考えるとすると、以下の特徴があるようには読み取れません。
・顧客に関する学習内容の蓄積:外部パートナーとしての取引先メーカーが、この情報や情報から得たカスタマーインサイトを蓄積しているかもしれませんが、それは外部の企業での取り組みとなります。したがって、マーケティング情報システムの特徴では無いと言えます。
・顧客に関する学習内容の共有:蓄積と同様です。
・顧客に関する学習内容を共有する責任を持つ体制:蓄積と同様です。
2つ目は、「ブログやソーシャルネットワーク上で自社ブランドに関する議論されている内容」をマーケティング情報として見なしていると思われます。「情報ニーズの評価」の時点では、どのような情報をマネジャーが把握しているべきか、ということであって、得られた情報をその後どのように扱うのかは議論されていません。したがって、以下の特徴があるようには読み取れません。
・顧客に関する学習内容の蓄積:蓄積に関して議論されていません。
・顧客に関する学習内容の共有:共有に関して議論されていません。
・顧客に関する学習内容を共有する責任を持つ体制:体制について議論されていません。
まとめると、マーケティング情報システムにおける以下の要素においては、シェアード・カスタマーインサイトでの特徴は見られませんでした。
1.マーケティング・マネージャーなどの情報のユーザー
2.情報ニーズの評価
まとめ
今回は、マーケティング領域でのマーケティング情報システムとDX領域のシェアード・カスタマーインサイトとの関係を分析しました。
マーケティング情報システムとは、マーケティングに関する意思決定を適切に行うための仕組みとされます。マーケティングに関わる情報からカスタマーインサイトを得るための仕組みであり、どのような人たちが、どのように関わり合いながら、どのようにマーケティング情報を得て、どのようにカスタマーインサイトを得るのかを示したものです。
今回は、マーケティング情報システムの構成要素である以下の2つを特に詳しく見ました。
・マーケティング・マネージャーなどの情報のユーザー
・情報ニーズの評価
結論としては、シェアード・カスタマーインサイトでの特徴は上記の2つでは見られませんでした。
次回は、以下を詳しく見ていきたいと思います。
・社内データベース
・マーケティング・インテリジェンス活動
続きはこちら。
これまでの記事
第1回はこちら。経産省のDXの定義とマーケティングとの関係について考察しました。
第2回はこちら。『DX実行戦略』におけるDXの定義とマーケティングとの関係について考察しました。
第3回はこちら。「無料/超低価格」のビジネスモデルを分析しました。
第4回はこちら。「購入者集約」のビジネスモデルを分析しました。
第5回はこちら。「価格透明性」のビジネスモデルを分析しました。
第6回はこちら。「リバースオークション」のビジネスモデルを分析しました。
第7回はこちら。ここまでの記事をまとめました。
第8回はこちら。「従量課金制」のビジネスモデルを分析しました。
第9回はこちら。『マーケティング大原則』という書籍におけるマーケティング定義を確認しました。
第10回はこちら。『マーケティング大原則』という書籍で紹介させている「戦略的コンセプト」をDXの視点から関係性を見ました。
第11回はこちら。DXの実行プロセスとマーケティングのマネジメントプロセスの関係性を見ました。
第12回はこちら。DXの実行プロセスとマーケティングのプランニングプロセスの関係性を見ました。
DXと経営篇
第14回はこちら。DXと経営との関係付けの準備を行いました。
第15回はこちら。DXと事業の定義がどのように関係するのかをみました。
第16回はこちら。DXと「われわれの事業は何になるか」と「われわれの事業は何であるべきか」がどのように関係するのかをみました。
第17回はこちら。DXの背景を整理しました。
第18回はこちら。DXの背景と「顧客は誰か」との関係を整理しました。
第19回はこちら。DXの背景と「顧客はどこにいるか」との関係を整理しました。
第20回はこちら。DXの背景と「顧客は何を買うのか」との関係を整理しました。
デザインドフォー・デジタル篇
第13回はこちら。『デザインドフォー・デジタル』というDXの書籍をもとにDXとマーケティングの関係をみました。
第21回はこちら。シェアード・カスタマーインサイトとマーケティングの関係を指摘しました。
第22回はこちら。シェアード・カスタマーインサイトとマーケティングでの新製品開発との関係を整理しました。
第23回はこちら。シェアード・カスタマーインサイトとマーケティングでのカスタマーインサイトとの関係を整理しました。
第24回はこちら。シェアード・カスタマーインサイトとマーケティングでのカスタマーインサイトチームとの関係を整理しました。
第25回はこちら。シェアード・カスタマーインサイトとマーケティングでのマーケティング情報システムとの関係を整理しました。
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