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異常検知の「異常データがない」問題を生成AIで解決する (ソリューション編)

分析屋の町田です。

近年の生成AIの目覚ましい技術発展は、様々な業界にかつてない変革を起こそうとしています。今年8月にGoogleが正式リリースした「Imagen 3」というモデルは、現実と見分けがつかないほどリアルな画像を生成することで話題になりました。こうした流れの中で、生成AIを企業の取り組みに活用しようという動きも活発になっています。

今回の記事では、生成AIをデータ分析に活用する取り組みの一つとして、異常検知への活用ソリューションについて紹介したうえで、生成AIを正しく活用するためのノウハウについても触れていきたいと思います。


1. 異常検知の課題とソリューション

1.1. 異常検知とは?

異常検知は、通常とは異なる状況や動作を自動的に見つけ出す技術です。この技術は、センサーやカメラなどを用いて異常の発生を早期に予測・検知し、問題に対して早期に対処することを可能とします。そのため、多くの企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として導入が進んでいます。

異常検知は様々な分野で活用されています。例えば、工場製品の表面の傷や変色を検知して不良品として仕分けたり(外観検査)、クレジットカードの不正な利用を防止(不正検知)するなどの事例が挙げられます。特に近年はAIを用いた異常検知システムの開発も進んでおり、AI技術の発展に伴い活用範囲は拡大し続けています。

1.2. 異常検知を阻む「異常データが無い」問題

ところが、この異常検知を実現する上で大きな壁となっているのが「異常データが無い」問題です。AIを使って異常を見つけるには、通常、正常なデータと異常なデータの両方が必要です。しかし現実世界では、異常データを集めるのが困難なケースがあります。

例えば工場の生産ラインでは、非常に高い品質基準が設定されていることが多いため、そもそも異常が発生すること自体が稀です。また異常データを増やすために故意に製品に傷をつけようとしても、製品が高価なものであればコストが膨らんでしまいます。そういった理由などから、異常検知システムを開発しようとした際に「異常データが足りない」あるいは「異常データが全く無い」といった事象が頻繁に発生するのです。

1.3. 生成AIがもたらす革新的ソリューション

この問題を解決する新しい方法として注目され始めているのが、生成AIの活用です。

生成AIを使えば、実際には起こっていない異常な状況の写真などを、プロンプトから作り出すことが出来ます。例えば、工場製品の表面に傷がついた画像や、Webサイトでの不正な操作など、普段は見ることのできない異常な状態を大量に生成することが可能となります。

さらに生成AIを使えば、まだ現実に起こったことのない新しいタイプの異常も想定してデータを作り出せます。これにより、未知の問題にも対応できる、より柔軟な異常検知システムの開発も可能となります。

2. 異常検知に生成AIを活用するためのポイント

2.1. 正常画像をベースにして異常画像を生成する

品質の高い異常画像をゼロから生成するのは、非常に困難なアプローチです。プロンプトで非常に多くの情報(製品の特徴や色、模様、位置、背景色など)を細かく指定する必要があり、それらをすべて指定したとしても、出力される画像は現実とはかけ離れたものになってしまいます。

この問題を防ぐには、正常画像をベースとして異常画像を生成するアプローチが有効です。「画像編集」という手法を用いることにより、ベース画像とテキストプロンプトを生成AIに入力して異常画像を生成することが可能です。また「インペインティング」という手法を用いると、異常を生成する箇所も指定することが可能です。

2.2. 生成した画像は必ず人間がチェックする

AIが生成した画像には、必ずしも好ましい異常が現れているとは限りません。生成したい異常の特徴を完璧に言語化するのは難しいでしょうし、そもそものAIの精度の問題もあります。したがって、生成した画像はそのまま利用するのではなく、必ず人間が確認して問題がないかどうかを判断する必要があります。

2.3. データの機密度に応じたモデル選択を

品質検査の画像データなどは機密情報扱いとなっているケースが多いため、その取り扱いには厳重な注意が必要です。特に、MidjourneyやDreamStudioなどの画像生成サービスの利用は慎重に行うべきです。安易に画像生成サービスを利用すると、機密情報が社外に流出してしまうリスクがあります。したがって、機密データで社外に出すことが出来ない場合には、オープンソースの画像生成モデルの利用を検討しましょう。

3. まとめ

生成AIの登場により、これまで異常検知の実現を阻んでいた「異常データがない」問題を解決する新たなソリューションが誕生しました。一方で生成AIを正しく活用するためには、生成AIの特性や得意分野を理解したうえで、適切な活用策を見出していく必要があります。次回の「検証編」では、実際にAIモデルを用いた異常画像生成を体験しながら、実践上のノウハウについて紹介していく予定です。


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