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デブの戯言

最近の私は太っている。私の身体は順調に育ち、私史上最高のデブを更新し続けている。このままではいけないと思いつつ、しかし、お腹は空くし、どうしようもないという気持ちも大きい。

まったくダイエットや健康的な食生活というのは、時間的にも経済的にも精神的にも余裕がある高等遊民にしか達成できないものだとつくづく思う。
運動をしたり健康的な食事を用意したりなんてことは、その分の時間もかかるし、お金もかかる。何より日常のストレスを手っ取り早く解消するために、やけ食いや、やけ食いとまでは行かずとも、「今日は食べたいものを食べたいように食べるんだ!」というタイミングが存在しているわけである。そういう救いが必要のない生活を送っている幸せな人にしか、ダイエットなんて所業は達成できないのである。



そんな偏見に満ちた思想に支配されている私でも、痩せていた時期がある。
その時期は、いろいろなことがうまくハマり、ダイエットに成功していた。
なぜ、うまくいったのか。
思い当たる要因はひとつしかない。
そう、当時の私が、意識していたわけではないが結果的に実践していたダイエットは、「あつ森ダイエット」である。


「あつ森ダイエット」とは、その名の通り、「あつ森」、つまり、「あつまれどうぶつの森」というゲームに起因する減量を指す。
当時の私は、「あつ森」にハマっていた。そのため、「あつ森」をプレイするために最適化された生活スタイルを送っていたので、痩せることができたのである。「あつ森」をプレイしたことがある人はご存知だと思うが、「あつ森」では、時間帯によってできることが違う。朝・昼・夜、それぞれ出現する生き物が違う。捕まえたい生き物がいたら、私がその時間帯にプレイしなければならない。また、島の中のお店の営業時間や住民の活動時間にも法則性があり、日中にプレイできないと買い物や住民との交流ができない。島の木々になるフルーツは、午前と午後のそれぞれ1回ずつと決まっている。このように、「あつ森」を最大限楽しもうと思ったら、私が生活スタイルを合わせていくしかない。

というわけで、まず、朝、少し早めに起きる必要があった。出勤するまでの間に、午前中の分のフルーツの収穫、朝にしか出現しない生き物の採集、あとは、漂流物や特別イベントの発生を確認する。店はまだあいていないが、効率よく物を売れるように、売りたい物を店の前に並べて準備しておく。これらのことを終えてから出勤できるように起きる時間を30分早めた。さらに、朝ごはんを用意するのが時間の無駄なので、前日に用意しておいたパンを齧りながらプレイしていた。
次に、なるべく「たぬきち商店」があいている時間に退勤する必要があった。遅めの営業時間を設定していたので、トラブルが起きない限り間に合っていたと思う。結構頑張れば、服屋さんがあいている時間帯に帰れる日もあった。そんなわけで、なるべく残業をしなくてよいように、仕事にも精を出すようになった。昼休みにも仕事を進めようとするので、昼ごはんも簡単に食べられる物を用意していた。
そして帰宅後は、すぐに「あつ森」の世界へ入る。しかし、熱中しすぎて寝不足になると、朝起きれない。朝起きれないと、午前中の分の回収物が回収できないから、不利になってしまう。だから、帰宅したらすぐに洗濯機を回したり、お風呂にお湯をためたりということをした上で、Nintendo Switchの電源を入れるのだ。お風呂がたまり、洗濯が終わるまでに、最低限の日課をこなす。当然お腹は空いているが、夕食を準備する時間は無駄なので、買い置きしてあるサラダチキンを齧りながらプレイする。

そんな毎日を送っていたので、必然的に食べる量が減る。さらに、余計な寄り道や外食をしないので、想定外の摂取カロリーがないし、「あつ森」に夢中になっているので、好きな物を好きなように食べられないことに対する精神的な苦痛がない。

まさに、いろいろなことがぴたりとハマって、無理なく痩せることができたのである。


今の私には、そこまで熱中するものがない。今の私を手っ取り早く癒してくれるのが「美味しいものを食べる」という行為なのだ。「食」以上に夢中になれるものがなければ私は太り続けるしかない。

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