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黒猫のサヤカ マイリストmyWrist外伝

「ブンちゃんやっとタトゥ入れたんだよ。mixiにあるから見てね」

2ヶ月ほどmixiに姿を見せなかった19才の少女サヤカから久々にメッセがあった。

手首にぐるりと黒猫とダイヤが

そしてもうほとんど治りかけている無数のリスカの後。

「サヤちゃんらしい素敵なタトゥだね^^こんなに綺麗なタトゥだともう切れなくなっちゃうよね。」

「うん。もう切れないね。もうね去年の12月からやってないよ」

中学時代にいじめにあっていたサヤカ。

クラスのある女子がカッターで1mm程度の軽度のリスカをしていた。
その子はいつも先生や友達に心配されていた。

「相談にのるからね」「大丈夫?」

サヤカはある日その子の真似をして手首の見えるところをカッターで切ってみた。それを見た担任が言った言葉はこうである。

「そんな事してかっこいいとでも思ってるの? 」

*****

いじめの発端は島田さんといういじめ好きの女子の嘘の噂による。

「さやちゃんがあなたの悪口言ってたよ」

まわりがどんどんいなくなって、クラスから無視されて

階段から突き落とされてからは、学校にはほとんど行かなくなっていった。

それでも仲よくしてくれた子がひとりいた。でも学校に行かないうちにすっかり洗脳されてしまった。

塾ではわざと単位をおとして個別クラスにいった。


その間にもリスカはどんどんエスカーレトしていって
ひじまで切るようになって

ひじの裏も切って

足も切っても足りないから

首も切って

「罪悪感を全部押し付けてる感じがして
自分の汚れを全部手であらわしてる感じがして 」

中学に行けないサヤカを家族は攻め立てた。

「何故学校に行かないのだ」
と、毎朝怒られた。

ある日担任に母親とともに呼び出されてこう言われた。

「うつ病だからって甘えるんじゃないよ」

こんな無知な教師が採用されている事が信じられないのだが、これが現実である。

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日本の中学教師は(全てとは言わないが)子供の心に無知で不勉強な者ばかりが採用されている。これが日本の現在のリアルで、変えていかなくてはならないが、変えるための途方もない時間の間に犠牲になる子は誰が救うのだ。
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それでも親に無理やり修学旅行だけは行かされた。

無理やりいじめの主犯グループと同じ部屋にされた。

ディズニーランドではやる事がなくて一人でベンチに座っていた。

それを見た一人の教師が怒る。


教師「甘えるな 何のために修学旅行きたの?」

サヤカ「親に怒られたからです。」

教師「なんでお前はみんなと行動できないんだ?」

サヤカ「いじめられてるから無理です 」


教師「誰にいじめられているかわからないと何もできない」

サヤカ「島田さんにいじめられてます。」

教師「ちょっと待ってろ」


そのまま教師は自分の彼女へのプレゼントを買いに行きサヤカは放置された。


サヤカはそのまま卒業式も出なかった。

その間にミナミの帝王の銀ちゃんみたいなお父さんがサヤカの元を去った。

サヤカ「パパの武勇伝を聞くのが楽しかった。」

サヤカに彼氏ができた。ネットゲームで知り合った。でもその彼氏はサヤカを追い出した隙に、共通の友人ユミちゃんとできていた。

それから、それまでカッターでちまちま切っていた自傷はさらにエスカレートし、深く深く切るようになった。


それでも、あるクラスメートたちとは遊ぶようになってきた。
その中にはサヤカのリスカのきっかけとなったあの子もいた。

彼女の部屋は溜まり場になり、毎週のように誰かが泊まりにきた。

でもサヤカ以外のみんなで盛り上がっていた。

ある日初音ミクの「南条あやになりたくて」を聞いていたサヤカは友人の目の前で深くぱっくり切った。

みんな引いた。


ブン「あの歌好き?」

サヤカ「嫌い。わたしとは違うと思う。」

ブン「南条あやはどう思う?」

サヤカ「否定もしないけど肯定もしない。」


サヤカ「明日ね、その集まりで飲み会があるんだって、でもグループの中にマイミクを拒否した人がいるから行きたくない。」

ブン「人間関係にはストレスがつきまとう。でも限度があるよ。過度のストレスを感じるなら行く必要ないよ。」

サヤカ「友達がいなくなるのが怖い。」

ブン「そうだな~。多くの人にサヤちゃんの個性を理解してもらうのは無理だと思うよ。でもサヤカの個性に偏見を持つ人を友人と呼べる?
全ての人が理解しないわけではないよ。見返したかったら強くなるしかない。」

タトゥは自信と強さをもたらしてくれると思う。

必要としている。選ばれているという意識は人を強くする。

逆に必要とされていない。選ばれていないと思うと人は沈んでいく。

ブン「20歳の誕生日までに何か俺と約束しよう。何か思いつく?」

サヤカ「1年さぼってたベースの練習をするよ。プラ(Plastic Tree)の曲を弾けるようになりたい。」


ブン「有村さん好き?」

サヤカ「うん大好き。椎名林檎も好き。」

ブン「では有村さんのように生きればいい。真似るのはビジュアルではない。生き方を真似るんだよ。」

サヤカ「わかった。有村さんと椎名さんを合わせたような人になる。」

うん最初はそういう一歩でいいんだ。傷だらけのまま歩んでいけばいい。

絶望を抱えながら進むものは最強だと俺は感じる。
希望は人間を堕落させるが、絶望は人間に力をくれると思う。

サヤカなら命より心を大事にできる人になれる気がするよ。

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