幸せな131分。私を月に連れてって『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』【映画レビュー】
★★★★☆(4.5/5)
鑑賞日:7月21日
イオンシネマ大高
監督:グレッグ・バーランティ
出演:スカーレット・ヨハンソン
チャニング・テイタム
米ソ冷戦下の1960年代、1961年4月12日 ”地球は青かった”ユーリイ・ガガーリンを筆頭とするソ連が世界初の有人宇宙飛行に成功した。
米ソの宇宙開発競争で辛酸を嘗め続けてきたアメリカ。ジョン・F・ケネディは、国民の心像を掴むような宇宙計画を模索していた。そこでぶち上げたのが“60年代中に人間を月に到達させる”「アポロ計画」だ。
そんな背景を踏まえ映画は展開していく。
波乱続きのアポロ計画、コールはその過程の中を生きている。
なんといってもテンポがいい。
オープニングでスカヨハ演じるケリーの仕事ぶりを見せ、NASAでのチャニング・テイタム演じるコールの立ち位置も分かりやすく教えてくれた。
その後ダイナーで 二人が出会った時のコールのセリフ(これが好感もてるイケメンぶり)がいい。
「記憶力はいい方だが君ほどの美人に出会ったことがない。何時間でも話していたいが時間が無いから…君のことを忘れることにするよ」(うろ覚え)
そして次に出会ったときには反目し合う。ただ秘めたる想いは同じ、みたいな。主演のふたりの相性がいいぞ。
スカヨハの60年代ファッションも見所だ。
失敗続きのアポロ計画に国民の関心も薄れ、泥沼化するベトナム戦争も相まって、予算取りが厳しくなっていた。そこでマーケティングのプロ、ケリーに白羽の矢が立ち、今までにない、時に強引なやり方で次々と成果を上げていく、「ビートルズよりも有名にする」痛快だ。
最初は反発していたコールだが人類初の月面着陸を成功させるという同じ目的のために共闘する二人。
ついに “ 11号” 打ち上げが決まる。そんな最中、ケリーは政府関係者モー(演ウディ・ハレルソン)からあるミッションを命じられる。
あの “都市伝説” を地でいく極秘ミッション。
1969年7月20日、アポロ11号が月に着陸。
7月21日午前2時56分(日本時間21日午前11時56分)ついに人類はその足で月面に降り立った。
「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩である」
ニール・アームストロング船長の生の言葉。ケリーの用意した台詞でなく「あんな言葉思いつかない」と言わしめた。面白かった。
しかしあれから55年、今まで宇宙に行った人数は500人以上。そのなかで月面歩行したひと(ムーン・ウォーカー)は未だにアポロ計画時の12人のみである。これほど技術の進歩目覚ましいのに月へ行かない理由はなにか。そこで生まれた“都市伝説”「本当は月に行っていない」「あの映像はフェイクだ」まことしやかに語られている
思い出すのは“本当は月(火星)に行ってないんじゃないか?”政府陰謀説を描いたピーター・ハイアムズ監督「カプリコン・1」(1977年)(面白いので是非!)
制作にはNASAの全面協力を得て 40万人以上の関係者をリスペクト アポロ1号の事故で犠牲となった3人の宇宙飛行士へのレクイエムも描く。
果たして月面着陸は「本物か?偽物か?」そしてケリーとコールの想いは真実の愛か否か。
SF色が強いのかと思っていたが
これは幸せな気分にさせてくれるロマンティック・コメディ映画。
ドタバタもありの王道ラブストーリーで、それがまた最高に良かったのだ。
余談
タイトルはジャズの定番曲「Fly Me To The Moon」から拝借。
訳すと「わたしを月に連れてって」。
「愛してるって意味よ」と続く。夏目漱石の「月がキレイ」もそうだが
月とはロマンチックなものだ。
今までに数えきれないほどカバーされてきた超有名スタンダード・ナンバー
近年は“エヴァ”のエンディングに使われていたから馴染みがあるかも。
アポロ計画が進んでいた1964年
フランク・シナトラのカバーが爆発的ヒットに。時代を象徴するテーマソングとなった。
その後アポロ10号と11号にシナトラのカセットテープが積まれ
本当に月まで届いたという 最高なエピソードが残っている。
(text by 電気羊は夢を見た)