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フリーシチュボ台本│危険な夜

【概要】男声・1人用・シチュエーションボイス
【目安】約1500字・5分程度

本文

は!?お前っ…!?なんでここに!

チッ。くそっ、場所を変えるぞ!着いてこれるか!?走れ!

……はぁ、はぁ、危なかった。
お前、なんでここに……。
…仕事帰り?チッ、クソが、俺の女をこんな時間に帰らせやがって。

あー!クソだ!
…いや、お前が悪いわけじゃねぇ
お前がここにいると俺は…冷静でいられなくなる。
クソ!だせぇ……

…まぁいい。
それよりも、こんな状況で、お前を巻き込むつもりはなかった。
俺がどんな仕事をしてるか、少しは分かってるだろ?……お前には1番遠い場所にいて欲しかった。

でも、今さらそんなこと言っても仕方ないか。
こんなのは防ぎようがねぇ。
お前がここにいる以上、俺は全力で守るしかない。

いいか、これから何があっても、俺のそばを離れるな。何があっても、お前だけは守る。

……おい、震えてるじゃねぇか。
クソッ!!
……ちがう、お前を責めてるわけじゃない。
お前を巻き込んだあいつらと…俺の不甲斐なさに腹が立ってんだ。
…泣くな、大丈夫だから。
大丈夫、大丈夫だ。俺がいる。お前を絶対に守るって、約束する。

…俺は今まで、どんなにハイリスクな仕事でも感情を出さずにやってきた。
冷静にいることが、この世界で生き残るコツだからな。
どんな場面でも冷静でいられるって自負もあった。
でも、実際お前がここにいると、そんな風にゃいかないな。とてもじゃねぇが、冷静にはなれない。

はは、久々だぜ。冷や汗なんてかいたのは。

こんな感覚なのか、恐怖や焦りってやつは。

……クソッ、あいつらまだ追ってくる。さっきうまく撒いたつもりだったのに、気抜けねぇな。

…怖いか?
……いや、謝ることなんざない。
こんな状況で平気な一般人なんていない。それが普通だ。
お前の”普通”なところに俺は惹かれたんだ。
温かくて、柔くて、優しい……。そういうところに。

それに、俺だってビビってるよ。
お前に万が一がありゃしないかってな。

……大丈夫。
俺は守るやつがいるほど強くなれるタイプだぜ?
はは、お前と付き合い出してから知ったんだ。
お前と居たら、自分のことなのに知らないことがボロボロ出てくるぜ。

……おい、こっち来い。少し休もう。ここならしばらく見つからないはずだ。
ほら、ここに座りな。
大丈夫だ、今は俺たちだけだ。

顔、少し見せてくれ。
…やっぱり、少し青ざめてるな。
悪い、こんな怖い思いさせて。
もっと穏やかで、安全な場所で笑っててほしいのに。
……俺が謝ることはないって?はは、こんな時までそんなぬるいこと言ってくれるのかお前は。
そのぬるさが…いや、優しさ、か。俺はほんとに好きだぜ。
…愛してる。

“一生の別れみたいだからやめて”って?
はは、そんなに勢いよく怒る元気があるなら大丈夫そうだな。
…分かった、分かった、怒るなよ。
そんなつもりじゃないさ。
確かにガラじゃないのは自覚してるが…ここで伝えたいと思っただけだ。

……手、握ってもいいか?少しだけ、こうしていたい。
お前の温もりを感じると、落ち着くんだよ。
ずっと1人でやってきたはずなのにな。はは、情けないぜ。

……お前の手、あったかいな。
俺の手、冷たいだろ?
こういう場所にいると、どうしても体温が下がる。
……温めてくれるのか?
一生逃れられない冷たさだと思ってたが…お前といればこの冷たさも和らぐのか。

……俺はさ、お前のこと、本当に大事なんだよ。
ガラじゃないのはわかってる。でも、言わなきゃなんねぇ気がするから。
…俺がこうして生きていられるのは、お前がいるからだ。
お前の存在が、俺にとってどれだけ大きいか…お前にはまだ分からないだろうけどな。

お前がいるから、俺はもっと強くなれる。もっとリスキーな状況でも、前を向いて進めるんだ。

だから、今はもう少しだけ、こうしていたい。
お前を連れて明るい世界でまた笑えるように……。
この絶望的な夜で、お前の温もりだけが唯一の救いだから。

……そろそろ、また動かなきゃならない。
でも、何があってもお前を守る。
俺のそばから離れるなよ。

お前が無事なら、それだけで俺は何だってできる。
……だから、どんなに怖くても、俺を信じてくれ。

一緒に戻ろう、あの家に。
俺たちなら、きっと大丈夫だ。

…さぁ、行くぞ。

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