落語 竹の水仙
いつしかふと思い、youtubeで落語を聞きたくなった.......そこで、検索をし出てきたのは…桂歌丸師匠の【竹の水仙】
どれどれと聞いてみる…。
ttps://www.youtube.com/watch?v=Ur9d0YR8PA8 ←カチ
パチパチどどん!パチパチパチパチパチどん!パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ(拍手)ちゃっちゃんちゃん♪どっどん!ちゃっちゃかちゃんちゃっちゃんちゃん♪ちゃっちゃんちゃん♪ちゃっちゃかちゃんちゃっちゃんちゃん♪ど…どん…!
桂歌丸師匠登場
「まっどうぞ♪しばらくのあいだお付き合いを申しますが、…世の中には.......なまぃ(名前)を残したという方は数多くいらっしゃるようでございます、なにか発明発見をしてなまぃを残した方、あるいはこの善根を積んでなまぃを残した方、或は自分で建てた寄席を自分でつぶして…いやまあれこれま(早口で){あははは(客席が笑う)…。これはちょと名前の残し方が違いますけど…」
座布団に座り深くお辞儀をして、膝をさすりながら語り口が開き…右へ左へゆっくりと見渡しながら目を配らせるつつ枕(ご機嫌どうですか?)が始まる。ニコニコ語っていると思ったら、失敗談のところでは右から左へぱっと顔をふって終わった時には”渋そうな表情”をして、体を傾けてダメな話と分かりやすいように表現する。
「大工さんのほうで…それも彫り物細工物のほうでなまぃ(名前)を残した方に、ご案内の通りっ甚五郎利勝という方がいらっしゃいまして、飛騨山添の住人だったそうですが…、十三の時に三代目すみなわじんべいのところに弟子入りをいたしまして、二十歳になりました時には師匠すみなわが、…目をみはるばかりの上達を遂げていたそうですが…」
飛騨......岐阜かな?飛騨牛どぶろくまんじゅう
「そこで甚五郎に『あたしはおまえさんに教えることは、みんんな教えてしまって何もない。で、あたしの弟弟子でたまぞのというのが京にいる。お前も京へ行って修行をするように…』添え状を持たせまして、京におりますたまぞの棟梁のところにこの甚五郎を差し向けます」
棟梁…大工さんの親方だっけ?
「文面を読んでみますと…[この人間は大層、腕の確かな人間だ。ただし、ちょっと人も変わっている。酒も好きだけれども面倒を見てくれと…]という文面の為に、伏見に一軒家を持たして甚五郎を住まぁあせます。ある時…御所から、『何か珍しいものを拵えろ』というご下命が下りましたので、甚五郎にも『腕試しだ、何か拵えてみろ』言われて甚五郎が竹で水仙を拵えて御所に献上をいたします」
むむ!もしかして、甚五郎って人は…。
「『誰のつくりしものだ?』『手前どもにおります甚五郎というものが、作りましたものにございます』『ん!目通り許す』すぐにお目通りを許されて大層なお褒めの言葉を頂いて、で、この時に【左冠】というものを許されたんだそうでございます。左甚五郎という名人がいるということが、日本全国津々浦々にパアアァットっと広がりまして」
影響力ある人に【理解】できるものを示して、広まったのか…。
「しかし、もともと変わった人ですからぁ…、あまりそういうことを鼻にも掛けず相変わらず…、伏見の家でぶらぶらしている。すぅ…ある日のこと…」
名声は酒にならんからねぇ。
『ごめんくださいまし、ごめんくださいまし』
『ほぁああい…、...なんだい?』
『ちょっとお伺いいたしますが…、左甚五郎先生のお宅はこちらでございましょうか?』
『んぁああ、甚五郎の家はここだよ』
『恐れ入りますが、お目にかかりたいのでございますが?』
『.......お目にかかってるよ、….......もうお目にかかってるよ』
『.......あの…、おああっさまが有名な左甚五郎先生で?』
『…何か不審なことがあるんか?』
『いいえそうではございませんで、失礼をいたしまして実は手前は、江戸は表駿河町三井八郎右衛門のところの番頭で、とうべいというものでございますが、この度主が…去るお方から運慶先生の拵えました…、恵比寿を一体手に入れましてしかしどうも恵比寿一体では具合が悪い、この度左冠を許されました甚五郎先生に、大黒様を掘っていただいて、恵比寿大黒一対にして、商売繁盛の神として、の…残したい、これをお願いに上がったようなしだいでございますが…』
『運慶先生の拵えた、恵比寿を手に入れた?お前さんそこに持ってんのかい?ちょいとこっちへみせておくれ、どいうぅ..............、これかい…?流石に運慶先生だけことわあるいい出来だな…。お顔がいい。福々しいお顔をしていらっしゃる。大した出来だ…、.......。よし、私が大黒を掘ろう』
『お引き受けくださいますか!ありがとう存じます。......失礼でございますが、御代は如何ほどで…』
『100両だ』
『っほ?』
『100両だ』
『あの…大黒様一体で、でございますか?』
『高いと思ったらおよし、あたしのほうから掘らしてくれと頼んだわけじゃあない、お前のほうから掘ってくれと頼んだ、高いと思ったらおよし、しかしお前に聞くが…、三井は100両の金で土台がぐらつくのかい?』
『とんでもない話でございまして、それでは何分よろしくお願いをいたしますが…、すぅ……手付は如何ほど置きましたらよろしゅうございましょう?』
『30両ももらっておこうか』
『ここに30両ございますからお納めのほどを…。100両の内から手付に30両、すっ…残り70両は…、できあがりまして…えー、お届けに上がりますので、…、……いつごろできますでございましょう?』
『わからない』
『…、いえ手前できますまで、この、京に逗留をしておりまして…すぅ…できましたら、江戸に持て帰りたいと思いますが…』
『そらむりだ…、一年先になるか五年先になるか、だいちこの京でできるか江戸でできるか奥州でできるかどこでできるか、わからない。できたときにはこっちからそっちに知らしてやるから、お前さんのほうからそこまで取りにおいで、......で、もしもできなかった時にはこの30両、......香典だと思って諦めておくれ』
『これもう恐れ入りましたな。え、それでは、何分よろしくお願いをいたします』
ぽんぽんぽんぽん顔を変え右へ左へ誰がしゃべってるかわかりやすい......。
「っと、甚五郎先生ここで甚五郎先生30両の金が入りましたために…」
およ?着物の羽織り脱ぐの?これからが本題かな?
「もう京の町も見飽きましてしまった。『繁盛を極めている江戸見物に行ってきたいと』ということを、すぅ…たまぞのにこの相談をいたしますと『何事も修行の為だ、のんびりと行ってこい』許しが出ましたので、これからすっっっっっかり支度を整え…って、おいおい江戸に下って参りました。しかしもともと…、のんきな人ですから…、まっすぐ江戸には入りませんで、あっちに遊び、こっちに見物し、今一歩で江戸に入るという、神奈川の宿にかかりました時には、もう懐の中は一文無し。着ている着物も汚れ放題汚れて、猫の百尋(ひゃくしろ)みたいな帯びを締めて、擦り切れた草鞋をつっかけて、神奈川宿へ…。ご案内の通り昔の宿場でございますので、暮方になりますと道の両側に、宿の客引き女中が、赤い前垂れをかけて顔に真っ白に白粉を塗って、御神楽の仮面のような顔をいたしまして、盛んにこのお客様をこう呼び込んでおります。ここへこの甚五郎が入ってまいりまして…」
猫の百尋って…猫のはらわたのことか…。昔はアグレッシブな表現おkなのね。
『もし…、そちらのお客様…、お泊りではございませんか?』
『俺のことか?』
『いいえ、後ろの御出家様のことです』
『……。誰も俺を呼ばねぇな…。懐の中が一文無しだってのが透けて見えるんかね?早く呼んでくれぇねぇと...。宿をでちまうよ...。また野宿かい?呼んでくれたらそこへ潜り込んじまうんだが...。はえぇこと呼んでくれねぇかなぁ?』
『もし?そちらのお客様?お泊りではございませんか?』
『俺のことか?』
『へぇ、さようでございます』
『占めた!』
『うぅんん?なんでございます??』
『んえいえ...、良く呼んでくれた。お前の家に厄介になろう』
『こりゃどもう、ありがとう存じます。どうぞこちらへ、おおぃ!お客様だよ!おすすぎのお支度をして、ようこそおいでをいただきまして、ええ、手前が、当宿の主の......大黒屋金兵衛と申しますが』
『...。大黒屋金兵衛...?欲の深い名前だね』
『まっその代わりといっては何ですが、手前どもでは、一切奉公人を置きませんで、手前と家内とが親切を旨として…やっておりますが』
『私はね…そいう家が…大好きだ。ことによると…、当分…。お前のところに厄介になるよ』
『ありがとう存じます。ごゆっくりお過ごしくださいまし』
『酒が好きだ。飲ましておくれ』
『ぅうぇ、どうぞお召し上がりください』
『一日三升だ』
『?!さっ…、三升!?』
『朝一升、昼一升、夜一升…。あたしは一日三升の酒を飲まないと、二日酔いになる』
『どうぞ…たんと召し上がってください』
『ここは神奈川だ、うまい魚はいくらでもあるだろう、お前たちに任せるから、うまい魚を食べさせしておくれ』
『招致をいたしました』
『それからねぇ…、茶代だの、紙代をいちいち出すのは面倒だ、まとめてでいいだろう?』
『ふふ、どうぞお氣遣いなく、すぅ…手前どもでは一過何十日お泊りくださいましても、お立ちになります時に、まとめて頂戴をさして頂いておりますんで…』
『そうかい…ふふ、それを聞いて安心した。……あっ、それからね。怒っちゃいけないよ、いいかい?お前さんたちをけして疑ぐるわけじゃない、怒らないでおくれ、実はねぇ…、…。この…、懐のものだ』
『…?…!大層膨らんでますなぁ…』
『重くてしょうがない…っ』
『さようでござんしょうな』
『商売預けなくてはいけないのだが…、あたしは自分のものは自分の身に着けてないと心が落ち着かない、こりゃぁ一つ勘弁しておくれ』
『ぅそれはまあ、お客様のご自由でございますんで…ただ、十分、お氣を付けになって』
『それからね、いろんなことを言ってすまないが、静かなとこの好きな人間だ、部屋も静かな部屋に入れておくれ』
『ちょうどいいところがございます、にじゅっ、二階のこの一番端に…、上段の間というのがございますんで、そこにこのお入り願います』
『ジョウダンの間?ふざけながら入るんだな?』
『なんづす?』
『冗談の間』
『こりゃどうも恐れ入りましたな、どうぞごゆっくり』
しゃれてるねぇ…。
「なんて…、で…、さあこれから甚五郎先生、毎日毎日、朝一升、昼一升、夜一升…。三升の酒を飲んで…ずぅず(お茶を飲む)。部屋ごろごろゴロゴロしておりました。日数が…。経つにつれまして…。台所を預かっている女将さんがこら黙っちゃいませんでしてね…」
噺で酒を飲むから…”お茶を飲む音の演出と口に水分補給”…なるほどなるほど。
『ちょいとちょいと…、ちょいと!…、なんだいあの二階の客は?まんいちまんいち(毎日毎日)酒飲んで部屋でもってごろごろゴロゴロしてんね!』
『いいじゃねぇか…。客が宿屋の二階で酒飲んでゴロゴロしてるのんに不思議なことはないよ。これが醬油飲んでゴロゴロしてるだったんなら氣味わりよ?なんでもありゃしないじゃないか…』
『何言ってんだよ…、たぁにもぅ…、食べる魚だってそうだよ贅沢なことばっかり言ってて…、鯛だ鮃や蛸や烏賊て竜宮城みたいなこと言ってるんじゃないか…、お前さんの前だけどけね、あの人は。そんな贅沢なこと言えるような身分じゃないと思うよ、……、着ている着物をご覧着ている着物、あら正宗だよ…』
『…?なんだい着物が正宗ってのは?』
『触ると切れるよ…あれは。ああいう着物を正宗っていうんだよ、ごらんなさい、泊まってから一文も宿賃入れないから、台所のものはみんな切れちまったよ。米は切れるし麦は切れるし砂糖は切れるし塩は切れるし味噌は切れるし醬油切れるし、…薪は切れるし炭は切れるし、…切れないのは包丁と二人の腐れ縁だよ』
『……、よくしゃべんねお前は』
『ど、どうもこうもないよ、半分だけでもいいから宿賃もらっておいでよ』
『……そりゃダメなんだよ』
『どうしてさ!』
『あの人が泊まる時にぃ…ん、一過何十日お泊りくださいましても…、お立ちになる時に』
『言ったかは知れないかもでもさ…、…、探りを入れてみるんだよ』
『…、なんだいその探りを入れるってのは?』
『毎日ゴロゴロしていたんではお退屈でございましょう?いいかがでございます?金沢八景でもご見物なさいませんか?今時分でございますと兜嶋が大層綺麗見える頃でございます。なんでしたらこちらで、ご案内申し上げてもよろしゅうございますから、…。いかないっっったらぁ………、危ないんだからね、実は、近頃このか…神奈川宿で決まったことでございますが…、どんなお馴染みのお客様でも、五日に一遍づつはお勘定いただくようになりましたから、ふ言って、もらっておいっでよ』
『ぅうううるせいな…行ってくるよほんとにまぁ、うるせいカカだなぁ…んぁあ、人の顔見りゃぎゃあぁぎゃああぎゃあぁぎゃああ言ってんやがんほんとにまぁ、名前が悪いんだ”ふじこ”っていうんだあん畜生ほんとにまぁ、冗談じゃねぇよほんとにま…。え、ごめんくださいまし…。え、ごめんくださいまし…』
『ふふふふ…ご亭主か?まっまっ、…、こっちへお入りよ、…、汚い部屋だが』
『あたしのうちだよ…ここは…。毎日、そうやってお部屋でゴロゴロなすってのは…、退屈でございましょう?』
『退屈しない。この窓から下を見てるとおもしいな。…、女は通るし、男は通るし、…、犬と猫は追いかけっこするし、…、退屈しない…面白いな』
『すぅ…いかがでございましょう?すぅ…金沢八景でもご見物なすっては?えー今頃でございますと、兜嶋が大層綺麗見える頃でございますが…』
『…、絵で見てるからいい』
『…絵で?』
『絵ほうが腹が減らない。くたびれないな...』
『あぶねぇな…どうもなぁ…。ん゙ん゙っか゚ぁ、実はでございますな…、近頃決まったことでございますが、っちぁ当神奈川宿では…、どんんなお馴染みなお客様でも、五日に一遍づつはこのお勘定を…』
『くれるのか?』
『いえそうじゃぁございませんでして、すぅ…頂戴をすることんなったんでございますが』
『勘定か…、そろそろそれを言って来る頃だと思ったっぁ。だいぶさっきから下の方できーきーキーキー黄色い声が聞こえてた、んっ。いくらになった?』
『ありがとう存じます、えーけ゚、ここに、書付をもってまいりましたんで、すぅ…ただいまのお勘定が、二両三分三朱でございますが…』
『二両三分三朱?間違いないかい?』
『ぅんええ、間違いじゃございませんで』
『安い。安すぎる。』
『ありがとう存じます、すぅ…ぐっと勉強さしていただいておりますので』
『しかしまあ、二両三分三朱というのは半端だ、どうだ?そこへあたしが一朱足して、……、三両にしてお前に渡そう』
『こりゃどうも、ありがとう存じます』
『それでいいだろう』
『っへ、結構でございます』
『っふ、ご苦労様』
『…。?いやあの、お勘定が、二両三分三朱でございますんで…』
『だからさ、そこへあたしが一朱足して、三両にしてお前に渡そう』
『ありがとう存じます』
『それでいいだろう』
『っへ、結構でございます』
『っふ、ご苦労様』
『…。?お金が出ませんな?』
『金か?』
『っへえ』
『金は…ない!』
『はは♪?
なあああああぃいいいいい!!????
無いたってお前さんなにかい?一文無しかい?おい!…、空っ穴かい?』
『なんだいそのカラッケツってのは?…、ないんだよ?』
『いやないんだよって落ち着いてんね、おい!…、あのね…お前さんん、…、商売なんだい?商売べぇは?』
『商売か?番匠だ』
『…?なんだいそのバンジョウってのは?』
『江戸で言う大工だな』
『大工!あそう、大工だったらなんだよ、宿賃の代わりにどっか傷んでるところなんやら直してもらおうじゃねぇえか、そうだ、試しにね、この辺にちょいとぉ、棚を吊っておくれよ』
『やめたほうがいい…、俺が吊った棚は物を載せると落ちるぞぉ』
『やねぇ大工だな…おぃ…』
『がたがた言わなくても良い、…、裏に大分立派な竹藪があるな』
『おおぅ、あれはうちの竹藪だよ、自慢の竹藪なんだよ、春つぁき(先)になるてぇといいタケノコがぴょこぴょこ飛び出してね、あれはうちの竹藪だよ』
『すまないが。よおおおく切れる鋸を一丁持ってきてきな』
『どうするんだい?』
『鋸を持って一緒に竹藪の中においで、竹藪の中で…。宿賃を払う算段をする』
『…!?鋸を持ってぇえ?竹藪ん中ぇえ??…俺をバラバラにするつもりだな?』
『馬鹿なこと言うな、宿賃を払わないあ゚お前に怪我をさせるそんな馬鹿なことはしない。いいから持ってきな』
『…わかったよ…。…、おっ母、お前は目が高い、あれ、一文無し』
『だろぉぉぉおおおおおおおう!どうも”目つきの悪いやな奴”だと思ったよぉん…、お前さんは碌な客をひっぱりこまないね…、んとにもぅ…!どうするのさ!』
『どうするんだったらな…、よく切れる鋸一丁持って来いっ…』
『鋸をどうするの!?』
『で鋸持って裏の、竹藪一緒に来いって…、竹藪の中で、宿賃を払う算段するっ…』
『…。鋸持って?お前さんが一緒に竹藪へ?……、…、どうも二三ち日前から影が薄いと思ったんだよ…。お前さんバラバラに』
『おい!変なこと言うなよ…!おぃ!んかが(いい加減or馬鹿)なこと言うなよ!おい!…、一文無し!』
『んな一々一文無しと言うな』
『鋸持ってきた』
『持ってきたか、持ってきたら裏の竹藪へおいで。…、良い竹がそろってるなぁ…』
『もぅ先も言う通り自慢の竹藪、この竹はみな孟宗竹ってやつだ』
『ちょいと待ってくれ…、…、…、んっ!この竹とこの竹を二本、長さを三尺ぐらいにそろえて切っておくれ』
『自分でぇ切れぁあ良いだろう、自分で』
『あたしが算段をするんだからお前が切りな。人間体を動かさないと鈍るぞ』
『お前にんなこと言われると思わなかったよ』
『切れたか?ちょいと待ってくれ、…ここに、細めの竹もある、これも長さをそろえて切っておくれ、切れたか?切れたら座敷ぇ持ってきな、そこに置いて、…か゚、宿賃を払う算段が着いたらお前を呼ぶから、それまで決して…、中を覗いてはいかんぞ、…。覗くと俺は…、算段はしない』
『覗かないよ!…、俺にはそいう趣味は無ぇんだから、…、はえぇとこ算段してくれよ!』
「ピタッ…、と、障子を閉めてぇ…下へ降りていくぅっ゙…、...。この様子を…ジッッッッッッッッッッッッと伺っておりました甚五郎が、…、…、懐から取り出しました柄包み、中から出しましたのが、飛騨を発ちます時に師匠すみなわが譲ってくれた大鑿小鑿…。命よりも大事に身に着けていたっ。この膨らみを最初の晩に親仁がどうもお金と間違えたらしいんでございますんが、これを取り出しますと、コツコツカリカリコツコツカリカリ何かやり始め…。大分……夜も更けましてから…」
大事な人からもらった道具を大切にする!和多志も貰った広辞苑…!今でも持ってるし使ってる♡
『(拍手)ご亭主ゅや(拍手)ご亭主ゅや』
『うるせいなぁ…あの一文無しは…ぁっはもぅ、すぅぅん…文無しなの癖に威張ってるやんだから、もぅ゚、人がせっかく寝かかったんてぇのに大きな声で呼びやがってもぅ、変な客引っ張り込んじゃったよ…ほんとにま。なんだい?一文無し?』
『一々一文無しと言うな、算段が着いた、こっちぃお入り、汚い部屋だが…』
『そっちこそ汚なぇ汚なぇ体じゃねぇか…、なんだい?』
『出来た』
『?何が?』
『っさ…、これだ』
『?…、なんだぃそりゃ?』
『なんだぃそりゃって見てわからないかぃ?』
『…たけっぺらの先に何か丸い物がぶら下がってるね…。なあにぃそれ?』
『竹で拵えた…。水仙の蕾だ…』
『つまらねぇ物を拵える…、どうするんだよ…そんな物』
『同じくここに竹で拵えぇた花立がある。この花立の中に水を一っっっっ杯に酌んで、…………この水仙を挿しておいで、お前の家の表の一番目に付くところに掛けておいで、……紙に売り物と書いて貼っておきな、明日になれば必ず買い手が着く、買い手が着いたら宿賃払う』
『…着いたら……、たぁああら?…………鱈だのだろうなんてあまり当てにならないけれどもな…』
『お前に言っておくがこの…。花立の中の水を切らすと、取り返しのつかないことんになるぞ…』
『わかったよほんとにっも、夜も遅いんだからこっちに貸しなよ…』
「そこは、人のいい宿屋の親仁でございますのでぇ、花立の中に水を一っっ杯に致しまして、この中に竹の水仙をっこし…、挿して、表の...、目立ちます釘に引っ掛けた、半紙に【売り物】と書いて…。奥へ入ります。もう真夜中近くでございます、で宿屋稼業というものは朝の早いもで…。暗いうちに...。大戸を開けて…。氣になりますので昨日のこの、花立を手に取って...ひょっと中を見て…」
素直♡
『………?...………?.....…………………….…??漏るんじゃねぇえかこらぁ?ずいぶん水が少なくなってんね...。漏るような花立拵える…。碌な腕じゃねぇなありゃな…。水切らすなってそう言ったよな』
「また水を酌んで…………。表を綺麗に掃除して奥へ入ります。でこの時に…何かの都合で朝早ゃゃゃっくに神奈川宿に入って参りましたのが…、肥国熊本本妙寺細川越中上様の御行列が神奈川宿に入って参りまして、で、殿様の御駕籠が、大黒屋の前に差し掛かりました時に……、お天道様が上がって………、辺り一面に朝日がぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっと、射しますと。どういう仕掛けがしてございましたのか?竹で拵えた水仙の蕾が…………。...ぱち。小さな音を差して立っっっ派に、竹で拵えたっ、水仙の花が開いて、辺り一面に何とも言えない、良いっっ香りが漂いまして、でこれを御駕籠の中からほっとご覧になった越中上様が…」
『駕籠を止めい』
「御駕籠がピタッと、止まります。じっっっっっっっと駕籠の中からこれを見て…」
『ぎょうぶ…、ぎょうぶはおらぬか?』
『お呼びでございますか』
『んっ、余は、あれに掛かている竹の水仙大層氣に入った、求めてまいれ。本陣で待っておるぞ』
「そのまま御駕籠は本陣宿…、あとへ残りました、御側用人の大槻ぎょうぶ。ただ、ただ…、硬い…だけの人でございます…。…、硬いだけということはモノを何も知らないという人でございまして…」
『たっぁあ゚…、うちの殿様てのはぁ勝手だねぇ…、見るもの見るものみんな欲しがんねぇ…、あんなつまらねぇものは休みの日に俺が拵えてやものを…んとにま、金出して買うことぉぁねぇんだ…、許せよ』
『いらっしゃいまし』
『その方が、主か?』
『手前が当宿の主の、大黒屋金兵衛と申しますが…』
『欲の深い名前だな…』
『よく言われますそいうことを…、何か御用で?』
『実はな、拙者は、細川越中上様の側用人の大槻ぎょうぶと言う者である。今、殿が御駕籠で御通行になってあれに掛かっている竹の水仙大層御意に召した。値は如何ほどだ?』
『…………………。なんです?』
『聞いてないのかお前は?……殿様が大層氣に入った。値は如何ほどだ?』
『……………………アタイですか?うちはアタイはない…………、夜中に蕎麦屋が引っ張ってくるのが屋台』
『なぁあああああにぃぃぃをもうしておる?日本人かお前は……、値段はいくらだと聞いておる?』
『値段ですか!値段なら値段ってそう言ってくださいよ…。アタイだアタイだって言うからわからないな………はぁあ゚あ゚…、………………………?…………うううぅぅぅうぅううう????』
『いかがいたした?』
『いぃいや、今、あれを拵えたのが二階におりますから、聞いてまいりますから恐れ入りますが、暫くお待ちくださいまし。おっ、お茶を差し上げて。………、おおい!一文無し!』
『また始まったな…………。どうした?』
『…………喜べ!買い手が着いた』
『買い手が着いたか。相手はどんな奴だ?』
『………どんな奴だなんてことを言うと口が曲がるぞぉ……、名前を聞いて驚くな、肥国熊本のお殿様、細川越中上様だあ』
『ほう!越中か!』
『んな褌みたいな言い方するなよぉ……、けどお前、珍しい腕持ってじゃねぇ……、今朝みた時には何かこうまあるくなっつたのでのに……今侍と喋りながらひょっと見たら……、なんだかこう花みたいに開いてじゃねぇかよ。珍しい腕持ってるじゃねぇ…、まあ…………あんな物売ったて精々五文か十文だが………、…。相手は大大名だ………、どうだ?…………思い切って、…、一朱ぐらいのことを言ってみるか?』
『馬鹿なことを言うな、お前の家の勘定が二両三分三朱、それ一朱で売ってどうする?』
『…………じぃぁいくらっていう?』
『そうよなぁ……。他の大名であれば今少し欲しいところであるが、ん、越中上様ならば………、二百両貰っておこう…』
『自分で言ってきな!自分で!………、なこと余裕はないよぉうんなぁ……、なことうっかり言ってみろ、高々竹で拵えた水仙を二百両とは、足元を見んのにも程がある、長いがぞうをぎらりと引っこ抜いてスパッと首でも切られられてみなよ、明日から表に歩くんのに方法がつかなくなっちまんだ』
『むやみやたらに刀が抜くものではない、精々殴られるくらいだ…』
『だからやなんだよ…お前ぃは……』
『いや。お前の前だが…、この世に人と生まれて、何が苦しいと言って金儲けをするぐらい苦しいことは無い……!行って苦しんで来い』
『…。あいつはいいんだよ…一人でガタガタ言っていれあ良いんだから…、言うこっちの身にもなっても……。…大変長らくぅ…。お待たせをいたしまして…』
『なんだ司会者みたいなやつが出てきたな…』
『ええ、二階の奴のぉ、申しますのには…。他のぉ、大名であればっ、今少し欲しいところであるがっ』
『んっ』
『越中ならば…』
『んなぁあああにいぃぃぃぃぃぃ?!』
『いや。あたしがそう言ったんじゃないんですよ。二階の奴がそう言ったんですから。うんと怒っておきました。そんな褌みたいな言い方すんなって…』
『お前のほうが悪いんだ..、お前の方が…。いくらだと申した?』
『ですからあの、二階の奴が申しますのには…。ほか…他の大名であれば、今少し、欲しいところであるが…』
『んっ』
『越中上様であれば………、ばんねえぇええありゃありゃありゃありゃりゃ…』
『…。大丈夫か?お前は?はっきり喋れ。いくらだと申した?』
『ですからあの…、他の大名であれば…』
『そこは分かった。…いくらじゃと申した?』
『ですから…。越中上様であれば…、これだ(指二本見せて)と申しておりましたが…』
『他の大名であれば今少し欲しいところであるが越中上様であればこれじゃ(二本指)と申したか…。おおさようか…。二十文か?』
『ん゙ん゙??話はまるで合わねぇなどうも…。二百両だと申しておりましたが…』
『なに?二百両?高々竹で拵えた水仙を二百両とは、足元を見るのも程がある!この!たわけモノ!』
『ほりゃ、言わないっこっちゃない…。だから、殴られるってそう言ったんだよ、殴ったて買ってくんならいいけど、買わねぇで真っ赤になって怒って帰ぇちゃったよ…。どうするんだよ!』
『怒るな怒るな、暫く表で立っててみろ…。今お前を殴った侍が青くなって戻ってきて…。すずず(お茶を飲む)…。「主っ、最前は手荒な事をしてすまなかった。どうかあの竹の水仙拙者に譲って貰いたい」っと…、お前の前へ両手をついて頭を下げる』
『ほんとかよぉ…おぃ?どうもおめぇの話は夢で屁を踏んづけてるようで当てにならねぇけれども…、じゃ立っててみるよ』
「こちらは…大槻ぎょうぶでございますモノを知らない人ですから、竹細工を二百両と言われて…、かぁっかかカカかかカカしながら本陣に戻りまいりまして」
『殿、ただいま戻りましてございます』
『ぎょうぶか、待ちかねたぞ。いかがであった?』
『それがあまりと申せば、…高価でございまして…』
『高いと申すか、…いくらじゃと申した?』
『っほ。先方が申しますのには…。他の大名であれば…、今少し欲しいところであるが…』
『んっ』
『越中上様であれば………。これじゃ(二本指)と申しておりましたが…』
『なにっ。他の大名であれば今少し欲しいところであるが余であればこれじゃ(二本指)と申したか…。おおさようか、…二萬両か』
『んっぷ゙。話がまるで合わないなこりゃどうも…。二百両だと申しておりましたが…』
『なに?二百両?…ぎょうぶ、その方それが高いと申して求めてこなかったか?…モノを知らんにも程があるぞ…。よいか?あれを作りし者を誰じゃと思う?この度左冠を許された名人甚五郎の作りし物だ。よいか?あの品は、京の大内山に一品、あの旅籠に一品、この世に二つと言う品である。それを二百両が高いと申して……...。求めてこぬタワケが…どこにある!!すぐに戻って買いもどしてまいれ!もしもあの品が売れてしまったその時は大槻ぎょうぶ……
その方役目不行き届きにつき…家は断絶身は切腹を申し付ける!』
『そんな馬鹿な…』
「こちらは宿屋の親仁でございます」
『なこと言ったけれども…、ほんとに帰っ、戻ってくんかしら…?』
「表でぼぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおっ、菊蔵みたいな顔して立ってますよね。慌てて、本陣を飛び出しました大槻ぎょうぶ、余程慌てたとみえまして…、下駄と草履を片っ方づつ突っ掛けて、砂塵を受けて…っつてばああああ」
『来た来た来たあああ!あの二階の奴は八卦をも見んのかね彼奴は?あの野郎さっきは人の事殴りやがった畜生目…!っぷ゙!』
「敵討つあこの時だとばかりにとの慌てて竹の水仙を店の中に仕舞い込みますんと、ふぅう【売り切れました】と札出したんで…悪い奴がいるん…」
『許せよ!』
『んん゙っっっなんだぁ!…威張るな!』
『主、最前は手荒な事をしてすまなかったどうかあの竹の水仙、拙者に二百両で譲って貰いたい…』
『あれねぇええええええ、あれ今三百両になったんすがな?』
『…?!僅かの間に百両値が上がったのか?!』
『へぇ!手前どもには変動相場制をとっておりますんで、...あなたさっき一つ殴ったでしょ?一つ殴ると百両づつ上がることんになっている』
『三百、五百のいと安いこと...どうかぁあ竹の水仙を...、拙者に譲って貰いたい...』
『...貴方に伺いますが…。どいうわけで…、そんな…、あの?高いお金を出してあれをお求めになるのでございます?』
『…主、その方にはわからぬか?”モノを知らんにも程があるぞ?”あれを作りし御方をどれだだと思う?この度左冠を許された名人、甚五郎の作りし物だ』
へぇ?!
あの一文無しが?!
あの有名な...甚五郎先生?!
『どうか拙者に譲って貰いたい』
「三百金払って...大槻ぎょうぶ、竹の水仙を抱えて意気揚々と本陣へ引き上げます。ふぅ...あとへ残った宿屋の親仁が驚いた」
『おっ母あ!!』
『なんだよ…』
『っか゚…おめえな…ん゚…あのんんん…二階の人…、あら只の人じゃねぇ?!』
『只だよあれは…。一文払わないんだからから…只…』
『とんでもない話だ…、あぁあの人が今有名な左甚五郎先生だ!』
『あの人が…”目付きが上品だと”思ったよ』
『よくそんなこと言えんね…。謝っちまおう一緒に来な…。ごめんくださいまし…ごめんくださいまし…』
『ほほ?ご亭主かい?女将さんも一緒かい?珍しいね?こっちへお入り』
『汚い部屋でございますが徹させしていただきますんで…、左甚五郎先生とはつゆ知らず、数々のご無礼、どうぞ、お許しの程を…』
『…現れちゃったか、勘弁しておくれ、お前たちを揶揄うつもりじゃなかった…』
『それから…あの、竹の水仙でございますが、三百両で売れましたので…、どうぞ…お納めの程を…』
『?三百両?あたしが言ったのは二百両だよ?百両はそっちの儲けだ。どぁそっちにとっときな』
『いいぇ!そんな!』
『良いから取っときな。考えてみればあたしが卸やお前が小売や。百両はお前の儲けだ後はあたしが貰っておくから二百両ちょいとお待ち、ざっ(分ける動作)…。ここに五十両ある。これを宿賃、そして今まで掛けた迷惑糧として取っといておくれ』
『とんでもございませんでして!』
『良いから取っときな、余ったら女将さんに、着物の一枚も買ってやっておくれ”正宗でないやつをな”』
『…!?…!!!!!』
『遭えて憎まれ口を利かしてもらうが、宿屋稼業をしていればどんな客が泊まるか知れない。身なりで決して、人の良し悪しを決めてはなりませんぞ』
『すいません…』
『甚五郎先生にお願いがございます』
『んっ?なんだな?』
『いかがでございましょう?…神奈川十の竹を買い占めますので…、あの竹の水仙コテコテ拵えていただいて…』
『馬鹿なこと言っちゃいけない、お前さんの前だがあたしは…。二度と再び、あれは…作らぬつもりだ』
『へ?!どうしてでございます??』
『考えてごらん、竹に花を咲かせれば…寿命が縮む』
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