あおぞらの憂い7

次の日、夕日が沈む時刻。私はまたあの海へ向かった。そこにはまた昨日と同じようにパックのコーヒー牛乳を咥えた少年がいた。
「あれ、今日もきてる。」
「仕事なくて暇なので。」
そう少しやりとりをすると2人は夕日に染まったオレンジ色の海を見つめた。
「友達と遊ばないの?」
「まあ、僕って友達が少ないから」
少年はどうも男友達がいないらしかった。いつも部活の女の子とばかり店に来ていたのも納得できた。少し気まずくなった空気に耐えられなくなり私はあわてて話題を変えた。
「音楽とかなに聴くの?」
「あー、音楽、、」と少年はカバンからウォークマンとぐちゃぐちゃに絡まったイヤホンを取り出した。そしてウォークマンをカチカチと操作しながら
「これめっちゃハマってて、あっ、これ知ってる?」
見せてくれる小さな画面。それはそれは、だいたいの男子中学生が好きであろう有名なバンドの曲だった。
「知ってるよ。けど私だとこっちが好きかな。」
「それめっちゃ聴いてたときあった!それも好き!」
私はそんな少年が騒ぐ姿をみて妙に安心した。ごく普通の中学生だ。今更当たり前だけどただの男子中学生なんだ。私には兄弟がいない。弟がいたらこんな感じなのかなと少し嬉しくなった。


いつのまにか夕日も沈んでいた。これ聴いてみて!と少年が自分のつけていたイヤホンを片方外して私の耳につけた。イヤホンから流れる曲。バンドが有名になる前に出していたらしいバラード曲。少年は海を眺めながら身体を揺らしている。
「これいいね。帰ったら聴くね。」
そう言うと
「これもいいよ。」
と私の話は聞いていないようだった。制服。あまり高くない身長。スマホじゃなくてウォークマン。あまりにも男子中学生でとても愛おしくなった。
「そろそろ帰ろっか」
「あの人今日も、死ににこなくてよかったね」
少年が言った。私はそう言われるまでここにきた目的をすっかり忘れていて恥ずかしくなった。私は海を見ながらそれっぽく「そうだね。」と答えた。

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