違法の冷蔵庫
大学卒業とともルームシェアを解消することになった。
部屋に残った家電や家具、段ボール。
私たちは顔を見合わせた。
「ジャンケンやな」
ルームメイトの友美が冷蔵庫に手を置いて言った。
一緒に暮らしてきただけあって考えることは同じだった。
洗濯機は友美が勝った。
冷蔵庫は友美が勝った。
テレビは私が勝った。
電子レンジは私が勝った。
「私だけ持って行くの大変やん」
友美は笑っていた。
新しいアパートに引っ越した。
私はすぐに中古で冷蔵庫と洗濯機を買った。
まだ働いていなかったから、殆どの貯金がなくなった。
しかし、23歳にして初めての一人暮らしは胸が踊る。
インターホンが鳴る。
「冷蔵庫です。」
私は4階の角部屋で中古の冷蔵庫を待ち構えたが、運ばれてきたのは見覚えのありすぎる冷蔵庫だった。
若いお兄さんは設置するとそそくさと帰っていった。
冷蔵庫の扉を開けると一枚の紙が入っていた。
「やっぱりあげるわ」
いらない気遣いはルームシェアではよくあることだ。