【映画】「四月の永い夢」感想・レビュー・解説

結構好きな映画でした。

冒頭、これはちょっと失敗かなぁ、と正直思いました。ちょっとポエムっぽい感じの、雰囲気良い系の映像から始まってて、ちょっとうわぁって思っちゃいました。でも、最後まで見て、僕的には結構好きな映画だったなと思いました。

ストーリーらしいストーリーはほぼない、と言っていいです。主人公の瀧本初海は、蕎麦屋でアルバイトをしている。休日には、マンガを読み、ラジオを聴くという割と地味な生活で、華やぐような日常は特にない。そんな彼女の元に一通の手紙が届く。元彼の両親からの手紙だ。息子のパソコンを処分する時に出てきた、あなた宛の手紙を同封します、と書かれていた。しかし彼女はその手紙を、すぐには読めなかった。
勤めていた蕎麦屋が来月閉店するとなり、彼女は就職先を探さなければならなくなる。しかし、なかなか身を入れることが出来ずに、ダラダラした生活を送ってしまう。そのタイミングで、蕎麦屋の常連だった方から手ぬぐいの個展に誘われていたことを思い出した。足を運んだものの、すぐ出てきてしまう。
気晴らしに古い映画を見て、映画館を出たところで、かつて中学教師だった頃の教え子に声を掛けられた。今はジャズシンガーだという。修行中、と言った感じらしいが。一晩泊めて、と頼まれ、一緒に銭湯に行き、かつての恋人の話をする…。
というような感じで、特別核となるような主軸がないまま物語が展開していきます。

僕がこの映画を良いと思ったのは、たぶん、主演の女優さんが素敵だったからだろうなぁ。「朝倉あき」って女優なんだけど、僕は知りませんでした。

映画の中で、主人公の初海に、登場人物の一人が「愛想笑いが似合わない人」だと言う場面があります。これ、凄い納得感がある表現だなと思いました。

これはもちろん、主人公である「初海」に対してのセリフであって、「朝倉あき」という女優に対するものではないと分かっているんですけど、なんとなく自分の中で、そこを意識的に混同したい気持ちもあったりします。

凄く雰囲気の良い人(めんどくさいので、「初海」と「朝倉あき」両方のことを指していると思ってください)だなぁ、と思いながら見ていました。役柄的に、元彼への何らかの気持ち(それが何なのかは徐々に分かってくる)がわだかまっているという感じで、それを表現するための演技なんだろうけど、柔らかい雰囲気があるのにどことなく近づけなさがあって、良いなと思います。「愛想笑いが似合わない人」というのはドンピシャな印象で、自分のその時々の気持ちに蓋をせずに、たとえ周りに多少の悪影響を与えても、自分の気持ちと向き合うべきだ、というような信念が感じ取れて、良いなぁ、と思いながらずっと彼女のことを見ていました。

これはたぶん、僕の超個人的な好みって話なんだろうから全然参考にならないだろうけど、僕としては、彼女が出ていれば、割とずっと見ていられるなぁ、という感じがしました。彼女が、何に対してどう反応するのか、誰かのアクションに対してどう行動するのか、一人の時間に何を考えているのか。セリフは多くないし、そのセリフも、誰に対しても割と敬語混じりであることが多くて、彼女の内面というのはセリフそのものからはあまり読み取れないのだけど、全体的な佇まいみたいなものから、なんか凄く色んなことを想像させる感じの人で、凄く良かったです。

というわけで今回の感想は、僕が朝倉あきという女優を好きになりましたよ、という話でした(笑)

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長江貴士
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