【乃木坂46】天才・星野みなみ

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<索引>【乃木坂46】
https://note.com/bunko_x/n/n63472c4adb09

齋藤飛鳥は、星野みなみについて、こう言っている。

【齋藤 みなみはポテンシャルが高いという言葉がすごく当てはまると思う。オールマイティーでなんでもいけるし、力を抜くことも力を入れることもどっちも自分で操れる人。それが私にはすごくうらやましいというか、かっこいいなって。それは昔から思ってたよ。たぶん、1期はみんな同じことを思ってるんじゃないかな。みなみが振り入れでつまずいているところはほとんど見たことがないからね。たとえやらなくても本番でできちゃうっていうことをみんなもうわかってる】「BUBKA 2019年11月号」

正直、僕にとって、星野みなみというのは、なかなか謎めいた存在だった。

星野みなみを形容する言葉としてよく、「可愛いの天才」というのがある。星野みなみと言えば「可愛いの天才」、というのは多くのファンが持つイメージだろうし、メンバー達がよく話してもいることだ。確かに、まあそれは分かる。そりゃあ、可愛いだろう、と思う。

ただ。

どういう可愛さがそこにあろうと、アイドルというのは、「可愛さ」だけで戦える場ではない、ということぐらいは理解しているつもりだ。特に乃木坂46は、トップアイドルに上り詰めたグループだ。その中で、アンダーだった時期があるとはいえ、ほとんどの時期を選抜として活動している星野みなみには、「可愛さ」以外の何かがあるのだ、と思っていた。思っていたのだけど、僕にはずっと、それはよく分からないままだった。

ある意味でこういう見られ方は、彼女も自覚している。TV番組「乃木坂工事中」の中で、『今、話したい誰かがいる』のヒット祈願として、東京にある13の坂を齋藤飛鳥と2人で全力で登った時のこと。星野みなみは、「私たちはやる気がなさそうに見られがち」と発言していた。その時、僕は、「そうだよなぁ」なんて思ったと思う。僕は、星野みなみの凄さを全然理解できていなかったので、正直なところ「やる気があるわけじゃないんだろうなぁ」という風に見ていたし、「可愛さ」だけでここまで来てるのかなぁ、ホントにそんなことあり得るんだろうか、なんて風に思っていたと思う。

また、星野みなみの見せ方(見せられ方)がそう思わせていた部分もある。

【―そもそも握手会で「『パン!』って言ってください」と言われて、それに「パン!」と返すだけで成立するのは星野さんだけですよ。
本当にみんな麻痺してる(笑)】「BUBKA 2018年5月号」

【―でも、星野さんのそういうところに、齋藤飛鳥さんは「敵わないなぁ」とずっと思っていたみたいですよ。生田(絵梨花)さんも「台本を持ったまま舞台に上がったみなみを見たとき、勝てないと思った」と以前、語っていましたし。
甘やかされすぎだと思います(笑)。将来が心配】「BUBKA 2018年5月号」

こういう部分を僕自身が目撃しているわけではないが、言いたいことは分かる。「甘やかされてる」という、彼女自身の言葉が象徴しているように、星野みなみの、表に見えているイメージは、「星野みなみだったらしょうがない」という部分が強かったように思う。僕は、ライブにも握手会にも行かないので、乃木坂46に触れるのはテレビか雑誌のインタビューしかない。もしかしたら、ライブや握手会での星野みなみを見ていればまた違った印象かもしれない。ただ僕には、「なんかよく分からないけど選抜にいる人」だと思っていたし、その状況を説明するために「可愛いの天才」という呼ばれ方をされているんだろう、というような解釈をしていた。

しかし、ある意味でそれは、彼女にとっての「悩み」でもあったようだ。

【―あと、星野さんの悩みと言えば、『みなみちゃんは可愛いから大丈夫』みたいに…。
大丈夫じゃない!(笑)
―アハハハ!そう言わせてしまうだけのアイドル性があるということの証明でもあるし、それ自体は悪いことではないと思うんですけど、ご本人からすれば悩みだったと思うんですよね。
言われちゃいけないですよね(笑)。まあ、でもいいのかな?いまさらどうにもできないし。】「BUBKA 2018年5月号」

注視していたわけではないが、外から見ている限り、星野みなみの何が評価されているのかよく分からなかった僕としては、この発言を読んだ時に、ちょっと申し訳ないなと思った。とはいえやはり、よく分からない存在だというイメージは変わらないままだった。だから、齋藤飛鳥の星野みなみ評を知って、初めて腑に落ちたような感覚を抱くことが出来た。

乃木坂46には、悩んでいたり、沈思黙考しているようなタイプのメンバーが多いこともあって、僕は正直、星野みなみをそういう風には見ていなかった。天真爛漫というか、こういう言い方をすると悪いが、悩みがなさそうに見えていた。実際その印象は、あながち間違いでもない、ということもある。

【―でも、いい意味で変わらない自然体なところが星野さんの魅力ですよね。楽しみながら活動しているように見えます。
考え方を変えたら楽になりました。区切りを短くしてみたんですよ。“今回のツアーはこういうふうに頑張ろう”とか“このライブが終わるまでに目標をクリアしよう”とか、短いスパンで物事を考えるようになったら、いろんなことが楽しめるようになったんです。以前は“将来性”的なことをずっと言われていて、それで焦ってダメになっちゃったから
―“グループの次世代を担う存在”というイメージで見られ過ぎて?
そうです。だから、あまり先々のことまで考えるのをやめました。自分の中でその都度小さなテーマを作れば、そこまで肩の力を入れずに活動できるんです。あと、終わりが見えていたほうが頑張れるタイプなので】「BOMB 2017年10月号」

【―そんな中、「星野は気持ちの切り替えが上手い」って前にスタッフさんから話を聞いたことがあって、それってアイドルにとってすごく大きな武器だなと思うんですけど、何かコツってあるんですか?
基本的に寝たら忘れる(笑)。まあ、もともと人よりは長く悩まないタイプだと思います。「この悩みが一生付きまとうわけじゃないし、まぁいいや」って思える。あと、自分が良いと思っていれば、他の人に何か言われても大丈夫っていうか、良い意味で自分の意見優先に考えられるようになってからは、悩むことが少なくなりましたね。】「BUBKA 2019年7月号」

ただ、「考え方を変えたら」と言っているように、初めからそんな風に振る舞えたわけではなかったようだ。

「ENTAME 2018年5月号」
【初期の私は自分が嫌いすぎて。「何もできないのに、なんで前にいるんだろう」と悩んでいたんです。どんな性格なのか知られていない状態だったし、誤解されやすいタイプだから、どうしたらいいんだろうと考えて「何も伝えない方がいいのかな」と思うようになったこともありました】「ENTAME 2018年5月号」

たぶん、こういう時期の星野みなみを、僕がちゃんと見ていなかった、というだけのことなのだろうと思う。そもそも、乃木坂46を初期から追っていたわけではないので仕方ないのだが、今見えている姿とはまったく違う人間だったという。

【とにかく乃木坂46に入って私はかなり性格が変わったと思います。
―昔とは全く違う人間?
そうですね。全然喋らなかったし、人見知りだったので。昔の自分に戻りたくないです。意見を言えなくて後悔したことも多かったから】「BUBKA 2018年5月号」

まあそもそも考えてみれば、最初の『ぐるぐるカーテン』で、生駒・生田と共にフロントに立っていたのだ。乃木坂46がまだ何者でもない頃から、乃木坂46の最前線にいた。初期の活動については、絶対的センターだった生駒里奈について語られることが多いが、初期からずっと選抜(というかほとんど福神)に選ばれている星野が、「何もできないのに、なんで前にいるんだろう」と考えてしまうのは当然だ。【実は仕事帰りのロケバスの中で泣いています。(中略)音楽を聴くふりをしながら泣きますね。たぶん誰も気づいていないと思う】「BRODY 2017年6月号」という発言もしている。

自分のことを好きになれるようになったのは、ここ最近だという。

【―今、自分のことは好きですか?
今、好きです、うん。仕事でもプライベートでも、特に無理をせず、自分のペースで自分のやりたいことをがんばれているから、割と好きですね。
―それっていつ頃からですか?
20歳くらいからかな。この1,2年のことだと思います。それまでは逆に、自分を好きになる要素が見当たらなかった(笑)。ちょっとマイナスすぎる言い方に聞こえちゃうかもしれないけど、仕事をしていて、本当に楽しいのか、楽しくないのかでいうと、自分でもどっちなのか分からなかった時期もありました。】「B.L.T. 2019年11月」

こういう発言を知ると、やっぱり分からないものだな、と思う。もちろん、アイドルであろうがなかろうが、第一線で活躍している人には、そりゃあ何かはある。何も考えていないわけはないし、何もなくて選ばれ続けることもない。けれど、星野みなみには、そういうことを忘れさせる雰囲気がある。僕はなんとなく、それこそが星野みなみの凄さではないか、と思ったりもする。「何かあるはずなのに、何もないように見える」というのは、星野みなみでしか成立しないと思う。積極的にアピールせず、頑張っている感じも出さないのに、いつもふわっと最前線にいる、というのは、真似できるものじゃない。齋藤飛鳥も、【うかつに真似するとたいへんなことになるから、後輩は絶対にみなみの真似はしない方がいい】【みなみじゃないと成立しないことがいっぱいある】「BUBKA 2019年11月号」と言っている。今ならやっと、齋藤飛鳥が星野みなみに対して「敵わない」と言う理由が分かるように思う。

そんな齋藤飛鳥と、星野みなみはよくセットにされていた。「あしゅみな」という愛称もあるし、「次世代」という言われ方もしていた。共に、「1期生としてずっとやってきたのに、『次世代』という言われ方には違和感がある」いう発言をしていて、それは確かにその通りだと思うが、年齢的にも立ち位置的にもセットにされることが多かったし、また本人たちも不思議がっていたが、【齋藤 不仲説、なぜだかわからないけど一時期すごく言われてたよね】「BUBKA 2019年11月号」というように、「仲が悪い」という見られ方もされていた。【星野 共通の話題とかも特にないし、好きなアーティストも違うし、プライベートの過ごし方も真逆だと思う。】「BUBKA 2019年7月号」という2人だが、雑誌のインタビューでも、お互いをリスペクトしている感じが凄くよく伝わる。星野みなみは齋藤飛鳥について、【才能もあるのに努力もする。飛鳥は完璧なんで。】「BUBKA 2019年7月号」とまで発言している。

1期生の卒業が相次ぐ中で、星野みなみは齋藤飛鳥に対して、こうも言っている。

【仲の良さということでは飛鳥がいなくなっちゃったら私はもうがんばれない。】「BUBKA 2019年11月号」

齋藤飛鳥は星野みなみに「敵わない」と言い、星野みなみは齋藤飛鳥に「いなくなったら頑張れない」と言う。境遇としては、齋藤飛鳥はアンダーからセンターにのし上がった(という表現は、彼女には似合わないが)し、激変していると言えるが、星野みなみは正直、外側からの見え方的には大きな変化はない。性格も趣味も境遇もまるで違う、乃木坂46としてしか接点を持ち得なかっただろう2人。不本意ながらも「次世代」と言われ続けた彼女たちは、これからも乃木坂46として活躍していくだろう。僕は齋藤飛鳥が好きなので、どうしても齋藤飛鳥に力点を置いて見てしまうが、ある意味でコインの裏表のような、どちらもいなければお互いが成り立たないというような不思議な関係性がそこにある。

【―なぜ、ここ最近は楽しめるように?
変な言い方になってしまいますけど、”毎回これが最後かも”って思えるようになったんです。メンバーみんながずっと乃木坂にいるわけじゃないし、この瞬間が最後かもしれないなって思ったら、全力で楽しみたいし、がんばりたいなって。それが楽しめているきっかけになっているのかもしれないですね】「B.L.T. 2019年11月」

星野みなみは、星野みなみらしく、そのまま楽しみながら、乃木坂46としてあり続けてほしいと思う。

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長江貴士
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