【映画】「来る」感想・レビュー・解説
まったく意味不明だったけど、超面白かった!
というのが、見終わった素直な感想だ。
内容に入ろうと思います。
が、ちょっとこの物語、後から色々分かってくる系の物語だから、あんまり内容に触れられないなぁ。
田原秀樹は、香奈と結婚した。参加した法事で、秀樹の親族から、「ぼぎわん」の話を聞く。その地方では、悪い子供をさらうオバケとして、子供を注意する際に使われているようだ。しかし実際、かつて女の子が一人行方不明になっていた。秀樹とは仲が良かったはずだが、母親に聞かれても秀樹はその名前を思い出せなくなっている。
幸せな結婚をした二人は、やがて子供をもうける。「知沙」と名付けた娘を、秀樹は殊の外可愛がり、妊娠が分かった日から毎日ブログを更新するようになった。やがて秀樹は、周囲でもよく知られた「イクメンパパ」となった。
誰が見ても幸せそうな家族だったが、しばらくして秀樹は、学生時代からの一番の親友で、民俗学の助教授となった津田に、「妖怪は存在するのか?」と相談を持ちかける。詳しく聞いてみると、ある日秀樹が自宅に戻った時、玄関前に切られたお守りが散乱しており、また部屋中が荒らされ、香奈と知沙が号泣していた。香奈が「来たの…」と言ったことで、秀樹はすべてを理解した。「ぼぎわん」が、来たのだ。
津田の紹介で、頼まれればどんな原稿でも書くという怪しいライター・野崎と会うことになった秀樹は、野崎の知り合いだというマコトを紹介される。マコトはキャバ嬢だが、ユタの家系に生まれており、野崎が知る中でその方面の能力が一番強くて確かだ。マコトは田原家と関わるようになり、やがてまた「ぼぎわん」が来て…。
というような話です。
僕は割と、小説でも映画でも、「ストーリーの辻褄が合ってるか」みたいなところがちょっと気になってしまうタイプです。別に厳密に辻褄を検討するわけではないけど、なんかちょっと「それはおかしくないか?」ということに気づいてしまうと、全体の評価が下がってしまうようなところがあります。
この映画は正直、辻褄が合ってるのかどうかイマイチ判断できなしい、ってか合ってないような気もするんだけど、でも映画全体としては凄く面白かったんだよなぁ。普段の自分の感覚だと、受け入れがたい映画のはずだから、映像の強さとか、勢いとか、強引さとか、そういう部分を引っくるめて面白いと感じたんだと思います。
個人的に特に一番好きなのは、最後の壮大な展開ですね。僕は原作を読んでないけど、これまで見た中島監督作品では、原作からの改変が結構あったから、そのイメージで言うと、恐らくこのラストの展開は、原作とは大分違うだろうな、と思います。原作は、新人作家のデビュー作なんだけど、この映画のラストの展開は、ちょっと新人作家の発想じゃないような気がするので。
このラストの展開では、正直何度も、「ンなアホな」と笑っちゃいました。もちろん登場人物たちは真剣なんだけど、アホみたいなことを真面目な顔してやってるし、最後のありえない非日常感の舞台設定もシュールだし、そもそも何やってるんだか意味不明だし、なんかそういうのの相乗効果で、笑えてきちゃう場面がありました。
物語の展開のさせ方としては、凄く上手いなって思いました。冒頭から、色々違和感があったりするんだけど、それが中盤から後半にかけてちゃんと説明されていく(ただ、怪異的な部分はむしろ説明されないことが多くて、そういう部分が意味不明さに繋がっていくんだけど)。なるほどなぁ、それがそういう風に関わっていくんだなぁ、みたいな、ある種の謎解きみたいな感覚もあって、面白かった。それに、怪異的な部分はともかくとして、全体として扱われているテーマみたいなものが非常に現代的で、こういうことってどこにでも起こりうるよなぁ、と思いました。そういう、「どこにでも起こりそうなこと」と「起こりそうもない怪異的なもの」が異様な結びつき方をして、このちょっと異質な映画が出来上がっているんだなぁ、と思いました。
しかし、そういう意味で、妻夫木聡は、本人にとっては悪評になると思うんだけど(笑)、実にピッタリというか、役柄にドハマリした配役だなぁ、と思いました。いや、あくまでも、僕が妻夫木聡という役者から感じるものが田原秀樹と近いと感じた、ってだけの話ですけど。
途中から「比嘉琴子」って人物が出てくるんだけど、コイツもなかなか謎なんだよなぁ。ヒーローなんだか悪魔なんだか、イマイチ掴めない。ラストの方で、「正しさのぶつかり合い」みたいな場面があって、もう何がなんだかさっぱりって感じだったんだけど、「比嘉琴子」の持ってる「正しさ」の正体が未知数で、この映画だけでは判断出来ないなぁ、と思いました。
あと、岡田准一が出てくるんだけど、岡田准一の登場シーンで、僕は岡田准一だと認識出来ませんでした。正直、全然サブキャラだと思ってたんで、そいつが岡田准一だと分かった時はびっくりしました。あと、エンドロールを見て、「あぁ、あれが柴田理恵か!」と思いました。見ている間、ずっと気付かなかった(笑)
僕は中島哲也監督が好きなので、贔屓目もあるかもしれないけど、やっぱり面白いなぁ、と思いました。意味不明だけど(笑)
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