【映画】「グンダーマン 優しき裏切り者の歌」感想・レビュー・解説
内容に入ろうと思います。
舞台は東ドイツ。1992年頃と19976年頃の2つの時代を行き来する。
グンダーマンは、HPによると、「ベルリンの壁崩壊後の東ドイツにおいて、最も重要で最も有名な実在のシンガー・ソングライター」だという。僕は彼のことをそもそも知らなかった。
グンダーマンは、共産主義だった東ドイツで、昼間は炭鉱でパワーショベルを運転する労働者だ。しかし夜になれば、仲間と共に歌を歌うシンガーに変わる。彼のバンドは徐々に人気になっていくが、グンダーマンは労働者としてははみ出し者だった。仕事は真面目に行うが、党のやり方を批判したりと何かと騒がしい。しかし、陽気な男で誰からも愛されるような楽しい男だ。
そんな彼は、まさに炭鉱で働きながら歌っていた当時、スパイを行っていた。
シュタージという組織が、1950年に東ドイツで設立された。映画の中では詳しく語られないが、HPの説明によれば、「盗聴や密告を通して東ドイツ全域を監視し、ドイツ社会主義統一党の支配体制維持を目的に、反体制運動や危険思想をもつとみなされる人物を弾圧していた」組織だそうだ。彼はそんなシュタージに協力し、周囲の人間に関する情報を密告していた。
時代が過ぎ、東西のドイツが統一された後、シュタージの協力者が次々に告発されるようになっていく。グンダーマンは、妻のコニーにどうするのか問われる。告発されるのを待つのか、それとも……。
陽気で優しい男は、自らの信念に基づいて恥じることなくスパイ活動を行っていた。しかし、やはりその過去に悩まされることにもなる。彼のいるバンドは、契約を結べそうだ。しかしそんな時、彼がシュタージの協力者であると明らかになったらどうなるだろうか……。
というような話です。
正直なところ、この映画から得られる情報だけでは、ちょっと不足している感じがあって、うまく捉えきれなかった。上述した通り、映画の中では「シュタージ」についてそこまで詳しく触れられないし、シュタージに関わった人間が社会的にどう扱われるのかみたいな情報も少ない。
まあ当然といえば当然で、ドイツ人はこれらの情報についてある程度知っているということなのだと思う。だから説明しない。事実を基にした映画を見る際に常にこの点がネックになるなぁ、と僕は感じている。
決して面白くなかったわけじゃない。グンダーマンは、一筋縄ではいかない割と厄介な人物で、でもだから凄く興味深い。妻のコニーも魅力的に描かれているし、共産主義への理想がまだ続いていた時代の雰囲気も興味深い。
ただやっぱり、作品の根幹に関わる重要な情報が、映画を見るだけではなかなか伝わってこないという部分が、難しかったなと思う。そこだけが残念だった。