【映画】「DAU.ナターシャ」感想・レビュー・解説
この映画、映画そのものではない情報が、とにかく魅力的で、興味を惹かれた。
何しろスケールがとんでもない。10万人のオーディションの中から選んだキャストを、スターリン体制下の秘密都市を模した巨大セット(欧州最大のセットだという)で2年間実際に生活させ、その生活を至るところからカメラで撮影した、という、尋常ではない撮影手法で撮られた映画だ。当時の衣装や食事で生活し、当時の通貨を使わせ、当時の日付の新聞が毎日届けられるという徹底ぶりで、役者たちは役を超えてその人物になりきったという。制作年数15年、700時間にも及ぶ撮影テープから創り出された第一弾(パンフレットにはそう書いてある)が、この「DAU.ナターシャ」である。
メチャクチャ面白そうじゃないか。
と思って観に行った。しかし、そういう外的な情報からなんとなくイメージしてた感じとはちょっと違っていた。
まずは内容から。
舞台は、秘密研究所に併設された食堂。研究所で働く科学者がやってくるその食堂で働くのは、年配のナターシャと、若いオーリャ。二人は、仕事はちゃんとこなし、食堂が閉まった後に酒や食材を勝手に飲み食いしている。そして、仕事後のその飲みの場では、罵ったり喧嘩したりしている。しかし、オーリャの家で行われた、科学者たちを招いたパーティーの場では、二人は非常に仲が良い。
そのパーティーの場でナターシャは、外国人科学者であるリュックと親密になる。ナターシャは英語が、リュックはロシア語が喋れず、通訳をオーリャが務めている。ナターシャとリュックは、その夜セックスをし…。
というような話です。
このプロジェクトの「第一弾」だからということなんだろうが、前述したような「壮大なスケールのセット」「主要キャスト100人」みたいな雰囲気は全然感じられなかった。舞台は食堂かオーリャの家で完結するし、主要キャストも5人ぐらいしかいない。映像の作り方は確かに、「演技っぽくない感じで役者たちの行動を長回しで撮ってそれを繋いでいる」という感じがあって、それは「2年間そこで生活した感」がちょっと出てる部分なんだろうな、という気もするけど、全体的には、ちょっと微妙だったかなぁ。
ラスト1/3ぐらいで、物語は一気に緊迫するんだけど、そこからはなかなかおもしろかった。