『口笛 ~一本の木と一輪の花~』
ぼくは地上を照らしながら、ぼんやり眺めるのが好きな太陽。
ある日ぼくは森の外れに、とある一本の木を見つけました。
その木は少し小振りでしたが、大地にしっかりと根を降ろしているようで
「どんな嵐が来ても、俺はへっちゃらさ。」
という感じで遠くを見渡しては、いつも口笛を吹いていました。
そして、その木の根元には、花がたくさん咲いていました。
花達は、その美しさを競い合うかのように咲いていました。
ある日、木はそんな花達からわずかに離れた所で、うつむいて咲いている一輪の花を見つけました。
木は花に話し掛けました。
「元気ないね。どうしたの?」
花はうつむいたまま小さな声で答えました。
「この前の嵐で葉が傷んだの。ありがとう。でも大丈夫だから…」
「そう…」
木は少し気になりましたが、またいつものように口笛を吹き始めました。
何日かして、今度は花が木に話し掛けました。
「この前はありがとう。素敵な口笛ね。また聞かせてくれる?」
木は少しの間、花を見てから答えました。
「まだ元気出てないみたいだね。いいよ、こんな口笛でいいなら…」
やがて木は口笛を吹き始め、花は目を閉じてじっとそれを聞いていました。
それから木と花は、毎日話をするようになりました。
そしてうつむいていた花は、少しずつ上を向くようになっていきました。
今日も森には口笛が響いています。
太陽はそんな木と花に目を細め、空からそっと見下ろしているのでした。
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