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曖昧男

こんな時期に、洗濯物を乾かすサーキュレーターが壊れた。

仕方がないから脱衣場に扇風機を持って行って乾かす。
1Kの部屋が無風になり、蒸し暑い。

朝起きてすぐにレモンサワーの缶を開けた。
夜中に汗をかいたせいで喉が渇いていた。
そして、朝からアルコールを欲するほど、むしゃくしゃしていた。

「たしかに一緒にいて楽しいけど、曖昧ですね。
少し距離をおきましょうか」

曖昧にしているのはあなたのほうなのに
それさえも曖昧にしながら距離をおくなんて提案する精神。
私には理解できない。

熱が出て、仕事を休んだ。
バンドの練習もあったけれど、熱が出ていけないと言った。

そして家で眠れるだけ眠り、目が覚めたら缶ビールとレモンサワーを開けて飲み、許容量の風邪薬と頭痛薬を飲んで、また寝た。

寝れば寝るほど汗をかいた。

今日は最近出産した友達の家に遊びに行く予定だった。
朝までは行く予定でいた。
でも昼過ぎて調子が悪くなって、また今度にしようと連絡した。

神聖な空気に触れられる精神状態じゃなかった。

「距離をおいても、多分何も変わらないから、
明日からも普通に会いましょう。めんどくさいことは言わないので」

そう言いつつも、私は細かくてしつこい女なので
面倒なことから逃げるような真似は、絶対にさせない。

「何も変わらない笑」

そう、何も変わらない。
向き合うことに逃げ続けても何も変わらない。

あなたが、後出しじゃんけんが得意なのは知ってます。
後からなら、なんとでも言えるもんね。

あなたのことが好きだった、私の友達に
「君とは結婚してもいいと思ってた」
って、
その子が結婚した後に言ったこと、私は許さない。

お互いに好きだろうと思っていた相手に
関係を曖昧にされ続け
結果的に彼女は他の人を見つけて幸せに結婚したのだけど
だけど多分それは、幸せにしてくれなかった彼への復讐を込めている。

そして未だに彼女は傷ついている。
その証拠に、まだ彼女は彼に会い続けている。

あの時癒えなかった傷を、自分が傷つかない立場に立ってまで
癒そうとしている。
そして彼は「結婚してもいいと思っていた」なんて嘯く。

私は、そんなの許せるほどゆるふわな女じゃないので
とことんあなたを困らせたいと思っている。

楽しい部分だけ吸い取りたいなら、どうぞどうぞ。
でもそれは、今だけの話。

女は、未来の保証を大事にするらしい。
男は、今この瞬間の楽しさを大事にするらしい。

私から今この瞬間の楽しさを吸い取れなくなったら
あなたはどうするだろう?

他の男に行ってくれよと思うだろうか。
あの時あの子がそうして、あなたが助かったように。

私が他の男にいかず、ただただあなたとの時間を浪費し
どんどん年老いて、楽しみを吸い取られて抜け殻のようになったら
曖昧が好きなあなたもやっと
本音を言ってくれるだろうか。

「もう、苦しいからやめてくれない?」

それが、あなたが初めて言った本音だったのなら
私はそれがどんな言葉でも、宝物にして土に埋まる。

誰も得られなかったあなたの「本音」。
良い人を続けてきたあなたの「本音」。
誰も恐くて近づけなかった「本音」。
それを手に入れられるのなら、私はどれだけ今を吸い取られてもいい。

曖昧で突き通す男の
弱点は




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