演劇みたいな、演劇部OB会の話
これは現実に起きている、演劇みたいな話。
私が再び辿っている、話である。
ロードムービー的な色味を帯びてきた、話のことである。
[前談]演劇部のOB会
私は高校時代、演劇部に所属していた。
全国大会にも行き、当時の私たちは強豪でもなく、
ぽっと出だったので、もちろんお金もなかった。
「数十名いる部員全員を全国遠征に連れていくことはできない。」
なんてことも当時の顧問の先生に言われ、
「そ、そんなのダメだ〜〜!」
となり、資金のためにそれまでになかったOB会を設立した。
それから8年後。
こんな一報が入る。
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銀行から、演劇部OB会口座について確認の電話があったそうです。
口座名義者と連絡が取りたいようなので、担当者は顧問の先生まで電話お願いします!
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担当者も何も、この数年OB会は動いていなかった。
当時コアで関わっていた私を含めたメンバーは、進学や就職など大きな生活変化の中で、余裕なんかあるはずもなく、何も動けていなかった。
しかし、今の顧問の先生に迷惑がかかっている。
ということで、少し面識があった私が、学校に連絡することにした。
「OB会ってなんだっけってなったんですよ。」
衝撃の顧問の先生からの一言。
存在すらもう引き継がれてなかった。
「誰か一言くらい伝えてくれよ!!!!」
と、歴代顧問の先生に少しだけ思いを馳せたものの、
致し方ない。実際動いていなかったのだから。
本題を聞くと、
口座を継続するためには、OB会の規約や収支報告、活動内容、口座番号などをゆうちょ銀行に報告しなければならない。
ということだった。
「な、なんもやってねえ〜〜〜〜〜〜〜!!!」
と内心思いつつ、
「一旦確認して、私たちでなんとかしますね。」
と顧問の先生に約束した。
どうする?
ほぼ幽霊となっているOB会。
解散か、継続か。
継続するにしても、また新たに運営を整える必要がある。
今の世代から、もう一度育て直すことになる。
もちろん、母校演劇部は今でも応援しているし、
夏大会はなんだかんだ気にしている。
だから、求められたら動けないことはない。
おそらく、自分が責任の取れる、
動ける範囲で組織を継続するほかないとは思った。
[本題]今どうなっているんだっけ?
早速、演劇部のライングループで確認。
通帳は誰が今持っているのか。
記憶の中では1個上の先輩だったので、もしかしたらわからないかもとも思ったのだが、先輩から引き継いでいたメンバーがいたので、まず一安心。
なんとか対処しないとなと思っていた頃、
また新たに、対応すべき事項がやってきた。
取引目的を銀行側に提出する必要があることがわかった。
ますます困った。
めちゃくちゃ詳細に情報がいる。
名義、担当役員、活動内容。
当時のパソコンとは異なるものを使っているし、
実際に当時のパソコンは壊れていたはず。
どこかに落ちていないか、検索をすると、サイトが出てきた。
微かに記憶があった。
自分が作ったであろう、サイトの装飾パーツ。
「え、私??私なのやっぱり???」
でも運営していた記憶がない。
最後の更新は、2019年の春。
後輩の劇の告知だった。
同じ世代の、サイト関連を引き受けていたメンバーに聞いてみた。
「俺じゃない、俺が触った記録がないし、記憶もない。」
「ええええええ〜〜〜?!」
「梢、これね、でも最終更新が2023年だ。」
「は???」
2023年って、自分の認識が間違っていなければ、去年。
え????
「「のあ不動産。」による更新だ。」
だ、誰だ〜〜〜〜〜〜?!
もしかしたら、そういう「404」的なスラング的なものかとも思ったが、
どうやら違う。熊本の不動産会社。
ますますわからない。
もしかしたら、後輩に引き継いでいた…??
一抹の淡い期待を胸に、
久しぶりに後輩に連絡してみた。
「わからないですね。おそらく自分たち、触ってないです…。」
なんなんだこの展開。
自分たちで作ったはずのOB会に、サイトに、
いるかいないかわからない誰かを探す旅みたいな、
久しぶりに、離れ離れになっていた登場人物たちが
再びつながるみたいな展開になりつつある。
演劇や小説、映画みたいな展開に絶句する自分と
面白がっている自分がいた。
当時一緒に会を作った、というか色々教わっていた顧問にも連絡した。
「私のとこには、規約しか残ってないな〜。いる?」
「いやサイトにもう載ってるからいらない!!笑」
どうやら名簿なども残っていなかったみたいだった。
当時、顧問はすでに別の高校に異動していたからかもしれない。
いやにしても、
社会人の今だから思うけど、
そこは大人がログを取っとけよ!!
子どもだけの運営なんか期待できるわけないじゃないか!!
とも思ったが、そんなこと言っている場合ではない。
「あの時、そういう書類作ったりとかやってたのって誰だったか覚えてます?」
「えー、梢じゃない??」
いや、そうですよね、そうなんだよね。
にしても、ああいった書類が当時の私ができたはずがない。
もちろん、当時の顧問も実務で動いてるとは思わない。
そういうのはきっと誰かに任せているはずだから。
設立にあたって、一緒にやってくれていた人がいたはずなのだ。
もはや過去の自分に弄ばれているような気持ちだ。
過去の私が、新たな人格として存在していて、
対峙してるような感覚。
本当に覚えていない。
考えれば考えるほど、大人がなんとかしてくれよと思った。
組織について、その運営について理解できるわけもない子どもではなく、
せめて自走するくらいまでは、責任を半分でも持ってくれよと思った。
言っても仕方がない。から、
私が、なんとかしてやろう。
子どもだった時の自分たちを、大人になった自分がなんとかしてやろう。
そんな心境である。
果たして。
(これで結果、全部私がやってたみたいな流れだったら怖すぎる)