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【文活2月号ライナーノーツ】竹野まいか「土曜日のパン・オ・ショコラ」
この記事は、文活マガジンをご購読している方への特典としてご用意したライナーノーツ(作品解説)です。ご購読されていない方にも一部公開しています。ぜひ作品をお読みになってから、当記事をおたのしみくださいませ。
私、劣等感の塊なんです。いきなりこんなことを申し上げると驚かれて、というか引かれてしまうのでいささか勇気がいるのですが。
体育が苦手な子供でした。特に水泳、あいつは駄目だ。まずプールに枯葉とか虫の死骸が浮いているのが無理。そう、虫も全面的に無理です。数学も苦手。集団行動は好きじゃないけどずっと平気なふりをして生きてきました。大人になってからは週5で会社に行くことと洗濯物を畳むのが嫌いだと気付きました。
だけどほどほどに得意なことや好きなものもあります。ほどほどだけど。国語と英語は得意でした。作文とかもたぶん褒められることが多かった気がします。当時は興味がなかったけれど。それから好きな俳優は田中圭と成田凌と松坂桃李と松岡茉優と……この話は長くなるのでやめておきます。あとチョコレートが好きです。
そんな私が、このたび「文活」にお呼ばれして小説を書かせていただきました。冗談抜きに「ひょえー!」って声に出ていたと思います。本当に書けるんだろうか。いや、でも、書ける書ける。せっかくバトンを渡してもらったんだから。今だけは劣等感を横に置いて筆を取ることにしたいと思います。
というか誰? って感じですよね。
初めてお目にかかる皆さんも、そうでない方もこんにちは。
竹野まいかです。"まいたけ"と呼ばれています。
noteの街にやってきてちょうど3年ほど。あまりマメなタイプではないので更新は気まぐれです。エッセイや映画の感想文なんかを主に書いています。小説は数えるほどですがちょびちょびと。最近は映画・ドラマ好きが高じて脚本の勉強もちょびっとしています。
失われたパン屋をもとめて
今回は、パン屋を舞台にして主人公と見知らぬ人との心の触れ合いを描きました。
実は本作の冒頭、主人公がクロワッサンを食べる場面は、以前に「こんなドラマの冒頭が見たい」という妄想を自分のメモ帳に残していたのをほぼそのまま流用したのですが、これを書いたきっかけは、例の流行病によって私の住む街のパン屋が閉店したことでした。せめて創作の中ではパン屋が生き残ってほしいなと思ったのです。
この2年間で暮らしはかなり変わりました。少なくとも私の周辺ではお付き合いでの飲み会文化はほぼ絶滅し、旅行をする機会もなくなり、外食は避けるようになりました。そしていつの間にか近所のパン屋がなくなり、私はお気に入りのパン・オ・ショコラやクロワッサンを買うお店を失いました。
たかがパン屋、と思うかもしれませんが案外QOLに直結するものです。でも今更、後悔しても遅いのです。なくなって困るものにきちんと投資してきたでしょうか。安いから、楽だから、と安易な選択を重ねてきたのではないでしょうか。
日々の選択は小さなものですが、その積み重ねが街のパン屋を潰しもするし、世界を明るくもします。本作の主人公のほんの小さな心変わりのように、心が動くほうを選び取ることで世の中が楽しく明るいほうへと進んでいけたらと願っています。
(……というかテーマが「チョコレートな戦い」なのに、パン屋の話かよ!!!ってツッコミ待ちです。)
創作は、「嘘」と「勘違い」より始めよ。
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