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【文活10月号ライナーノーツ】奥村まほ「ストロベリーパフェ」
この記事は、文活マガジンをご購読している方への特典としてご用意したライナーノーツ(作品解説)です。ご購読されていない方にも一部公開しています。ぜひ作品をお読みになってから、当記事をおたのしみくださいませ。
文活10月号に小説「ストロベリーパフェ」を寄稿した奥村まほです。
普段からごはんやおやつの話ばかりしていて、お仕事でも食べものエッセイを書いたり、フードテック企業のお手伝いをしたりしています。
携帯の写真フォルダは、自分で見返してもときどき胸焼けしてしまうほど食べものの画像で埋めつくされています。
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そんなわたしのもとにとつぜん舞い降りてきた小説執筆のご依頼。最初は少し驚きましたが、テーマがど直球に「たべる」だとわかり、主催者のみなさんに食い意地が伝わっていたのかな?と嬉しくなりました。
食べものについて書き続けてきた自分、ありがとう!
ライナーノーツでは、食と文章についてわたしが日々考えていることと、小説「ストロベリーパフェ」の着想から完成に至るまでの作業手順や思考の流れを文字にしていきます。
食と文章
これまでたくさんの「食」に関する文章を書いてきました。最初から食にこだわりがあったわけではなく、自然と食べもののことばかり書くようになったという感じで、少し前まで、自分でもどうしてこうなったのかよくわからずにいました。
わたしは食について豊かな知識があるわけではありませんし、おいしいお店をたくさん紹介できるグルメ通でもなければ、便利なレシピをどんどん発案できる料理家でもありません。多くの人と同じように、毎日なにかを食べて、食べものに支えられてきた。ただそれだけです。
わたしが食のシーンを書き続けてきたのは、「いちばん身近だったから」。そして「生きることに直結しているから」。これに尽きるのではないかと思います。
外出することが難しくなってからは、なおさら食の大切さを実感するようになりました。生きるためにはなにかを食べなければならないし、食べる行為は人間の根源的な欲求でもある。でもそれだけでなく、食の「エンターテイメント」としての側面にものすごく助けてもらっていることをひしひしと感じます。
いまある環境のなかで生活をより楽しくしようと考えたときに、「できるだけおいしく楽しく食べること」は外せない要素でした。
でもその一方で、人との関わりが食事を楽しくする大切な要素なのだと思い知らされたのも、外出を控えるようになってからかもしれません。
今控えている人も多い「会食」は、まさに食を楽しむための有効な方法のひとつです。せっかくランチをするならできればだれかと一緒がいいなと思う。たまにはその道のプロである料理人が作ったとびきりおいしい料理を味わいたいと思う。それは、人間に必要不可欠な「食」をただの作業にしないための一種の知恵なのではないかとすら思います。
みずからの血肉となり、自分という人間をつくりあげていく食べもの。だれかの顔が見たいとき、だれかとゆっくり話したいとき、たいていセットになる食べもの。共に暮らす人々と、共有していく食べもの。
食べることについて書くことは、人生について書くことにつながり、人との関係を書くことにつながります。
だからわたしは、食べものについて書かずにはいられないのです。
小説「ストロベリーパフェ」について
1.着想・全体像
小説「ストロベリーパフェ」は、ずいぶん前に教えてもらった夫の実体験をもとにイメージを膨らませて書いた作品です。細かい設定は自分で考えましたが、以下の大まかな流れは事実に即しています。
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