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【文活9月号ライナーノーツ】赤野シン「陶酔」
この記事は、文活マガジンをご購読している方への特典としてご用意したライナーノーツ(作品解説)です。ご購読されていない方にも一部公開しています。ぜひ作品をお読みになってから、当記事をおたのしみくださいませ。
物書きは、と主語を大きくするのは好ましくありませんが、少なくとも私は、ロマンチストで、運命論者な節があります。こうして「文活」に参加させていただいたのも、恵まれた縁あってのことですから。
遅れまして申し訳ございません。はじめまして。赤野シンと申します。過去のライナーノーツを拝見させていただいて、皆様の色が濃く出てるなぁ、と思い、私もインパクトのある文章を頭に置こうと試みたのですが、敢無く失敗。ここからは無理に張り合わず、参考にさせていただきながら、つらつらと書いていきたいと思います。
はじめに
物語を創作するとき、どこから描きますか。私は、結を最初に描きます。理由はありまして、私がロマンチストで運命論者であるから、これに尽きます。
物語に対しての自分の役割を明確にすると、動き出したストーリーを見守ること。ただそれだけ。あとは本人に委ねるしかないのです。
時間が流れ、場面が映りかわる。伴って鳥は巣立ち、花が咲いて、見向きもされずにそっと散る。そこに私が介入する余地はなくて、ただ見守って、見守って、それをひたむきに、写実的に描写することしかできない。虚無に駆られ、それでもなお、手出しはできない。なぜなら、どうあがいても結に帰着するようになっているのだから。
このように、私の創作過程では、結を描くときのみが、手放しに喜べる、楽しめる最後の時間です。あとは虚無と隣り合わせにあるのが実情でございます。しかし、それが嫌いかと問われたならば、決してそうではなくて、むしろ好きに近い訳です。物語と心中している心地がします。ええ。私は死にたがりなのかもしれません。そして、かなり自分に酔っている。
ちなみに、このライナーノーツにおいても、結からの下りは同様ですから、是非最後まで楽しんでいってください。
本題に入りましょう。まず、今月の小説のテーマである「のこる」について少しお話しします。このテーマを伝えられた際に、まず、何を書こうか、と一晩は悩んだのですが、思い浮かんだものと言えば、「遺言」であったり、「手紙」でした。しかし、私の作品「陶酔」では、どちらもストーリーに関与することは無かったのです。
「のこる」とは何か。湯船に浸かりながら、ソファに横たわりながら考えていくうちに、結果、無意識、運命、刹那、そんな言葉が次第に思い浮かびました。熟考した挙句に導き出したものは、意志を媒介していないということでした。
今回の着眼点は「のこる」と「のこす」の違いにあって、先述した意志が大きく関与しています。前者は意志がなく、後者には存在する。故に、「遺言」や「手紙」を採用することができませんでした。(勿論これは個人の見解ですから、それがダメということではありません)
では、「のこる」にあって、「のこす」に無いものは何か。これは最後にとっておきたいと思います。
話はガラリと変わりまして、最近の私の自堕落な休日を紹介します。昨今の時世の流れによって、家で一人、映画を見て、小説を読み、たまには書く。そんな生活の最後に、決まってお酒を飲みます。勿論ウイスキー。それもロックかストレート。これにも理由がありまして、足繁く通っていたBARのマスターが、如何せんウイスキーが好きな方で、ウイスキーは私の中で大人の象徴になった訳です。彼に憧れてウイスキーを嗜み、次第に惚れて、毎日を彩っている。ウイスキーは役割を変えて、日常に溶け込み、私に寄り添ってくれています。
作品を読んでいただいた方は、既にお察しの通りだと思いますが、ウイスキーが今作の軸を担っているのは、私の自堕落な生活が背景にあります。私はウイスキーを飲む時に、その香を嗅いだだけで、あのBARの、あの椅子に座って、他愛もない会話を繰り広げて。そんな日々を追想できるのです。
今回使用させていただいた写真は、私が通っていたBARのマスターに頼んで、沢山の方々のご協力の下、撮影させていただいたものです。良ければ、雰囲気だけでも味わっていただければ。
大変長くなりましたが、いよいよ作品について触れて参ります。それでは。
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