【能登半島地震】元日「無常の極み」 宮城・徳本寺で復興祈願
※文化時報2024年3月19日号の掲載記事です。
宮城県山元町の曹洞宗徳本寺で10日、東日本大震災の物故者慰霊と能登半島地震の復興祈願法要が営まれた。早坂文明住職(73)の導師で、亘理郡内9カ寺から出仕した僧侶らが、江戸時代から伝わるとされる大般若経600巻の転読を行った。近隣からは約50人の檀信徒らが参列し、順番に焼香した。(佐々木雄嵩)
早坂住職はあいさつで元日の能登半島地震について触れ「現実はわれわれの想像を超える。無常の極みを思い知らされ、心は13年前に戻った」と述べた。
その上で「無常そのものに人生があるのではない。受け止め方にこそ人生がある」と強調。「われわれはあの日から、自問しながらも最良の一歩を選んで来た。能登もそうであると信じている」と語り、多くの参列者がうなずいた。
近くに住む堀川幸喜さん(70)と明美さん(61)夫妻は、初めて孫の恋和(こいな)さん(5)、喜愛(きいと)君(4)を連れて参加。明美さんは「13年たって、ようやく語り継いでいかなければと前進する気持ちになった」と語った。
経験 今こそ生かす時
早坂住職は公益社団法人シャンティ国際ボランティア会(SVA)の理事として長年、災害支援活動に従事してきた。後進に道を譲るため、昨年末に退任したが、今も能登半島で活躍する仲間たちを頼もしく思っているという。
早坂住職は「今後は被災者を元気づける後方支援活動が重要になってくる。今こそ東日本大震災で培ったノウハウが生かされる時だ」と語った。
震災当時、山元町はシャンティ移動図書館の拠点となり、各地の避難所で本の貸し出しとサロンが開かれた。閉じこもりがちだった人々が外に出るきっかけになったという。早坂住職は「必要があれば経験を基に助言を行い、能登復興の一助となるつもりだ」と力を込めた。