【能登半島地震】往復300キロ、孤立集落支える
※文化時報2024年1月12日号に掲載予定の記事です。
能登半島地震では、教団の枠組みにとらわれることなく、多くの宗教者が被災地支援を開始している。浄土真宗本願寺派本光寺(石川県小松市)衆徒の八幡真衣さんが代表理事を務める一般社団法人えんまんは2日、これまでに培ったノウハウを生かし、物資や資金を集めて石川県輪島市大野町の孤立集落に入った。片道151キロの道のりを往復し、支援物資を届け続けている。
地震発生当時、大野町では旅館「ねぶた温泉」の宿泊客約120人と地域住民100人余りが孤立した。行政の支援は届かず、通信障害のため、電波の届く所までは数キロ歩かなければならない。集落の窮状を外に伝えにくい状況だった。
えんまんは2日、八幡さんと知り合いの旅館関係者から要請を受け、メンバーが食料や水などを積み込んで出発。路肩の崩壊や土砂崩れで通行困難な区間を越え、車両が通れない約2キロは徒歩で物資を届けた。
旅館の宿泊客は、地震発生後に初めて食事を取ることができた。これ以降は、必要な物を聞き取った上で、十分に物資がある福井市内で購入。翌日に搬入している。
ライフラインが断絶しているため、湯を沸かすためのガスコンロや就寝時に暖をとるための寝袋などを大量購入。多くの支援物資を運ぶための車両をレンタルする必要もあり、1日当たり50万円ほどの資金を投入している。そのため、募金による支援を求めている。
旅行会社のツアーで訪れていた宿泊客は5日、車両が到達できる場所まで迎えが来たが、個人で予約した人は帰る手段がない。妊婦など徒歩での長距離移動が困難な人がいる上に、車両で移動する際には、多くの危険箇所を越える必要がある。そのため、道路の復旧を待たねばならないという。
今後、発電機や調理器具の搬入が可能になった段階から、炊き出しを開始する予定で、カット野菜や肉類を提供してくれる支援先も確保している。
連携も進んでいる。えんまんの支援団体の一つで、ひとり親家庭を支えるため社寺の活用に取り組む一般社団法人ハートフルファミリー(東京都新宿区)は、石油ストーブを提供した。国内外で人道支援に取り組む非政府組織(NGO)の日本国際民間協力会(NICCO、京都市中京区)に活動が着目されたことで、6日に協働体制をつくり、支援を拡大していく。
八幡さんは「私たちは、多くの人の『支援したい』という思いを一つにして届けている。危険を理由に被災地に入ることを反対する人もいるが、現場を知っている以上は放置できない」と話している。
寄付は「北國銀行大聖寺支店 普通 0047518」、名義「一般社団法人えんまん」まで。