【能登半島地震】七尾の僧侶、被害語る 「Zoom安居」で情報共有
※文化時報2024年8月9日号の掲載記事です。
僧侶らでつくるオンライン学習会「Zoom安居(あんご)」は7月22日、「地震で倒壊した寺院は、いま」と題したトークイベントを行った。能登半島地震で被災した石川県七尾市の「山の寺寺院群」に位置する浄土宗宝幢寺の高田光順副住職と、現地を取材した浄土宗僧侶でジャーナリストの鵜飼秀徳氏が現地の状況を報告。参加者らが情報交換を通して、被災地への理解を深めた。
高田副住職は被災直後の様子を振り返った。
元日、妻と子ども、住職である父や妹家族などと寺にいたところ、大きな揺れにあった。子どもたちはこたつに潜り込み、住職も柱にしがみついたがしばらく動けなかった。警察官の義弟が強く脱出を促したことで、全員けがなく建物から出られた。
鐘楼堂や本堂が大きく崩れた様子を見て、中学1年の長男は、現実を受け入れられない様子だった。切迫した状況で貴重品や過去帳などを取りに行けず、玄関に置いていた防災グッズや長靴を手にするので精いっぱいだった。
高田副住職は妻の実家である金沢に避難。翌2日、寺に戻ると、父が「仏さん無事やった」とうれしそうに伝えてきて、初めて本堂が全壊ではなかったと分かった。
仏像などは総代宅の仏間に避難させた。当初は盗難防止のためお寺の情報を公開していなかったが、現状を知ってもらうことの方が重要だとして発信すると、有志のボランティアらが片付けを手伝いにきてくれたという。
高田副住職は今回の地震の教訓として「寺院が被災すると被害が大きすぎる。親しい僧侶とのネットワークで盗難を防ぎつつ、情報発信することが必要」と語った。
一方、鵜飼氏は3月に被災地へ入り、大規模な火災のあった輪島朝市や山の寺寺院群を取材。1月からほとんど変わっていない風景や、被災寺院の多い真宗大谷派の活動などを写真で紹介した。
参加者同士の意見交換では、支援金が被災寺院の元に来るのが遅く感じられることや、現場との意識に温度差があることなど、宗派に対する厳しい意見が上がっていた。