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【能登半島地震】青年僧侶ら重機操る 災害支援の即戦力へ免許取得

※文化時報2024年12月6日号の掲載記事です。

 災害時に重機を使って救助や復旧・復興に当たれる僧侶になろうと、真言宗各派の青年僧侶らでつくる全真言宗青年連盟(全青連、門屋昭譽理事長)のメンバー32人が11月11日、重機講習を受けた。能登半島地震の被災地でも活動する一般財団法人日本笑顔プロジェクト(林映寿代表理事)と協働した初の試み。土木に精通していた弘法大師空海の精神を現代に生かし、即戦力となって被災地に貢献する。(春尾悦子)

防災意識高め、準備

 自然に囲まれた約4千平方㍍の敷地に、青年僧侶たちの歓声が響いた。長野県小布施町の防災パークnuovo(ノーボ)小布施で行われた重機講習会の実技講習。6~7人が交代で小型パワーショベルなどの重機に乗り込み、時間の許す限り操縦した。

 僧侶たちの目的は、重量3トン未満の小型車両系建設機械の運転資格(重機免許)を取ることだ。

 重機免許の取得は通常、建設機械メーカーなどが開く講習会を受けるが、主に建設業や土木業の従事者を対象としている。一方、日本笑顔プロジェクトの講習は一般の人々も参加可能。法令に基づく内容に加え、災害現場での重機の活用法などについて、実際に災害支援に当たっている現役オペレーターから指導を受けられるという特長がある。

実技講習で重機を操る青年僧侶

 通常は学科講習を含めて2日がかりとなるが、今回参加者らは事前にe—ラーニングで学科を修了しており、この日は実技に専念した。

 参加者からは「災害時における重機の有効性を深く学べた。資格を取得できたことで自信につながった」「防災への意欲が高まり、自助・共助の大切さを改めて実感した」「青年僧侶同士の交流も図ることができた」などの感想が聞かれた。

 全青連は、毎年さまざまな講習会を開いており、災害への備えと対応力の強化を目的とした講習は、隔年で実施している。金田正隆災害救援事務局長は「各地で頻発する自然災害に対し、私たち僧侶が現場で役立つ支援とは何か、またどのように貢献できるのかを模索している」と話す。

 今回の重機免許取得は、あくまで災害支援のスタート地点。被災地で実際に重機を活用するには、継続して訓練する必要がある。金田事務局長は「参加者一人一人が防災・減災への意識を高め、これからの活動に向けて大きな一歩を踏み出すきっかけとなった。僧侶として災害時に即応できる体制を整え、地域社会への貢献を目指して今後も活動したい」と決意を新たにしている。

重機講習会には全青連のメンバー32人が参加した

 門屋理事長は、真言宗豊山派仏教青年会の重機操縦体験にも参加したことがあるという。「実際に被災したとき、何か少しでも力になれるように準備しておく必要がある。参加者は講習会を通してこうした活動があることを知り、体験できたことで、目的を達成できたのではないか」と語った。

能登町でも重機講習会

 一方、全青連が協働する日本笑顔プロジェクトの林代表理事は、真言宗豊山派浄光寺(長野県小布施町)の副住職でもある。

 2019年10月、台風19号で千曲川の堤防が決壊し、小布施町や近隣市町村では家屋や田畑に大量の泥が流れ込んだ。ボランティアが人力でかき出すのでは到底追い付かず、日本笑顔プロジェクトとして重機を集めるまでは良かったが、操縦できる人が足りなかった。

6~7人ごとのグループで、可能な限り操縦する時間を設けた=11月11日、長野県小布施町

 そこで、日頃から重機オペレーターを養成しておくことの必要性を痛感した林代表理事が2020年10月、浄光寺近くの遊休農地に防災パークnuovo小布施を開設。楽しみながら防災について学べる「体験型ライフアミューズメントパーク」と位置付け、これまでに2千人以上のオペレーターを養成してきた。

 林代表理事ら日本笑顔プロジェクトのチームは、能登半島地震の被災地に40回以上通うなど、息の長い支援を続けている。発生から間もない1月3日、重機を伴って石川県輪島市に入り、4日には珠洲市で市や自衛隊などと連携して道路の復旧作業に当たったほか、9月の豪雨災害でも土砂の撤去を行った。

 能登の住民からは、自分たちも重機を操縦して復興を進めたいとの声が相次いでいるという。このため日本笑顔プロジェクトは11月18日、能登町で、まず行政と社会福祉協議会の職員らを対象に重機講習会を開催。12月からは住民を対象に、無料で講習会を開く予定だ。林代表理事は「重機を使ってできるのは、泥を取り除き、道を開くことだけではない。思い出の品を掘り出すなどして、心に寄り添う支援もできる」と話している。

林代表理事

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