【能登半島豪雨】僧侶有志輪島入り 真宗大谷派「北陸門徒ネット」
※文化時報2024年10月8日号の掲載記事です。
石川県奥能登地域を襲った記録的豪雨を受け、真宗大谷派の有志らでつくる「災害支援北陸門徒ネット」は9月26日、輪島市町野町で支援活動を行った。町野町は山間部にあり、土砂崩れで道路が寸断して、2日間にわたり約1800人が孤立。濁流が流れ込んだスーパーや押し流されて放置された車、陥没した道路や大きな水たまりなど、集落の至る所に爪痕が残り、すさまじい水害だったことを物語っていた。(山根陽一)
言葉がグリーフケアに
支援活動は崖超(きし・はるか)浄明寺(輪島市)副住職が先導し、県内のほか岩手、茨城、東京、福岡などから大谷派僧侶15人が集まった。グリーンコープ生活協同組合連合会と共に、避難場所となっている市立東陽中学校や隣接する町野多目的集会施設などで、泥かきや畳の搬出、清掃作業を行った。前日の9月25日には、大屋公民館で炊き出しをサポートした。
崖副住職の自坊である浄明寺も、土砂崩れに見舞われた。境内の池の出口がせき止められ、汚水が建物内に流れ込んだ。地震で被害を受けた本堂や庫裏の修復もままならない中、より深刻な被災地の支援に注力する。
「被災者が声をかけ合い、『また来てね』『また来るね』と言葉をかけ合うことが大切。胸の内を言葉に出してみることがお互いの理解を深め、グリーフ(悲嘆)ケアにつながる」と指摘する。
分からなくても考える
真宗大谷派仏教青年同盟委員長の金暁正・長安寺(岩手県大船渡市)副住職は、今回初めて北陸門徒ネットの活動に参加した。
東日本大震災の被災者として、能登半島地震の被災者を救援するため炊き出しや住民との情報交換、視察の計画を数カ月前から立てていた。それが、思いも寄らぬ豪雨に見舞われて急遽(きゅうきょ)、被害の大きかった町野町に入ったという。
行政や他の支援団体と協力し、浸水した建物の清掃を行ったが、自身の被災経験からこれから先に訪れる試練を想像すると、つらくなる。「再び支援する機会があれば手伝いに来たい」と語った。
月に1度は被災地で活動する加藤雅輝遠慶寺(石川県小松市)住職は「現地の人々の苦難は、恵まれた日々を送る私たちには分からない。でも現場で見て、感じて、考えたことを多くの人に伝えるのが私たちの仕事」と力を込める。
加藤住職と共に足しげく奥能登に通う佐竹融光玄寺(同市)副住職は「まさかの水害に、地元住民は心が折れている。微力ながらコツコツと、できることを重ねていきたい」と話した。
現地で作業を行う輪島市町野支所職員の堤夕美香さんは「多くの方々の支援があって何とかやっていける。地震と豪雨の二重被害で住民の心労は想像を絶するが、根気強くサポートするしかない」と前を向いた。
大谷派・浄正寺坊守が犠牲に
能登半島豪雨で真宗大谷派浄正寺(石川県珠洲市)の坊守、貞廣一枝さん(79)が亡くなった。流れ込んだ土砂で寺院兼住宅が屋根まで埋まり、連絡が途絶えていた。消防や警察などによる捜索で9月24日午後、居間で発見され、死亡が確認されたという。
貞廣さんは、地元で教員を務めていた。定年後の約10年前に金沢真宗学院に入学。当時指導に携わっていた金沢教区の住職は「とても明るく、世話好きな方だった」と語る。2022年6月に夫の深韶前住職を亡くしてから、金沢市内で教員を務める長男が住職を代務しており、継職するまで寺務を行うことになっていた。
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