【能登半島地震】全員が被災地支援ただす 大谷派宗議会・代表質問
※文化時報2024年6月11日号の掲載記事です。
真宗大谷派の第75回宗議会(常会=望月慶子議長、竹内彰典副議長)は3日、質問戦が始まった。代表質問には与党会派・真宗興法議員団幹事長の轡田普善議員(富山・3期)と、野党会派・同朋社会をめざす会の旦保立子議員(東京・5期)、僧伽(さんが)代表の金子光洋議員(新潟・2期)が登壇。能登半島地震の被災教区への支援策や、最終報告が出された行財政改革への方針を中心に論戦が展開された。(高田京介)
離郷門徒対策を視野
代表質問では、登壇者全員が能登半島地震のお見舞いを表明し、関連の質問を行った。
轡田議員は、親戚関係にある蓮淨寺(石川県七尾市)や諸岡敏議員の自坊である明敬寺(輪島市)などを4月24日に視察したことを明かし、「能登の広さと奥深さに、支援の困難さがある」と述べた。その上で、木越渉宗務総長の執務方針演説にあった「仏教的・大乗的支援」の文言に触れ、宗派が今後行うべき支援を問うた。
本山の災害救援本部長を務める那須信純参務は、過疎化が急速に進んでいた能登地方の課題に言及。「『真宗の土徳』が喪失する危機にある。念仏相続のためにも、寺院と門徒の関係性の継続を願いに、離郷門徒対策を視野にした支援を尽くしたい」と表明した。具体的には、本山の御正忌報恩講などへの参拝助成や、能登教区での物故者追弔法会を営む考えを伝えた。
共済制度の在り方は
被災教区の共済査定を巡っては、5月31日時点で申請件数の約9割で査定員による調査が済んでおり、順次、給付額を審査会に諮っている段階だ。
轡田議員は、被災寺院の今後について「共済給付が大きく関わる」と指摘。損害保険の団体加入の必要性などを含め、宗務当局の見解をただした。
那須参務は、昨年に保険会社と代理店の計5社に、宗派の共済制度に関わる情報を共有したことを明らかにした。団体加入の協議については、能登半島地震で中断しているものの「現行制度を改めて精査した上で、抜本的な改革が必要」との認識を示した。
一方、財務長演説で表明された被災教区への経常費御依頼=用語解説=の減額規模や財源の補塡(ほてん)に関しても、与野党から質問が上がった。旦保議員は、4月末に行った能登視察の所感で復興の厳しさに触れつつ「被災寺院の一番の支援は、御依頼の減免」と断じた。
那須参務は、御依頼に関しては能登、金沢、富山、新潟の各教区に対し、2024年度に減額を行う方針を説明。賦課金=用語解説=の減額申請に関わる臨時措置規定を3月に定めており、「申請期間の延長と手続きの簡素化を行っている」と答弁した。
内局案、明言避ける
懸案の行財政改革を巡っては、検討委員会の最終報告が木越内局へ提出されたことを受け、改革の必要性を訴える与党議員から内局案などの具体化を求める声が上がっている。
轡田議員は、24年度予算案が積極予算になったことを踏まえ「(会計構造と宗務機構について)危機感を覚える」と強調。内局案などを念頭に入れた実施計画策定の推進を求めた。
木越宗務総長は、21年の内局巡回で「行革の実行なくして宗門の将来は開けない」との切実な声を聞いたとした上で「報告書の諸課題を精査し、順次可能な改革に着手していくことで、不退転の取り組みとしたい」と述べるにとどめた。
金子議員は、僧伽が公約に掲げる男女平等の観点から、会派議席の「3割以上女性」を目指すと表明。与野党を超えて男女間の格差是正に当たるよう呼び掛けた。
西受秀文参務は、宗会や教区会などへの女性参画が進まないのは、女性教師の割合が約17%にとどまっているためと分析。家事・育児など「ケア労働」の大半を女性が行っていることを踏まえ、「意識改革を進めていく必要がある」との見解を示した。
【用語解説】経常費御依頼(けいじょうひごいらい=真宗大谷派)
全国の門徒から任意の懇志を集めるため、全20教区に割り当てて依頼すること。宗派一般会計の経常収支を示す経常部歳入の6割超を占める。
【用語解説】賦課金(ふかきん=仏教全般)
宗派の運営資金として、一般寺院から集める納付金。近年は各宗派で見直しが進む。
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