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【能登半島地震】金沢で学術集会、被災体験発表も エンドオブライフケア学会
※文化時報2024年10月25日号の掲載記事です。
日本エンドオブライフケア学会は13、14の両日、金沢市で第7回学術集会を開催した。テーマは「悲しみに寄り添うエンドオブライフケア~その人らしい生と死を支えるために」。医療や福祉、グリーフ(悲嘆)ケアの現場で働くスタッフや研究者らによる多彩な講演や発表が行われた。14日には能登半島地震チャリティーランチイベント「能登の人々と暮らしに寄り添って」が開かれ、被災した学生や看護師、現場でケアに当たる専門職らが自らの体験を赤裸々に語った。(松井里歩)
夜終わらせるため
ランチイベントには、石川県能登町出身の看護学生、桜井菜摘さん▽輪島市の訪問看護師、中村悦子さん▽看護師やケアの専門職らでつくる団体「DC―CAT」で支援看護師として活動する浅岡裕子さん―の3人が登壇した。
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桜井さんは、県立看護大学(かほく市)の4年生。普段は能登町を離れ一人暮らしをしているが、元日は実家に帰省していた。
数年前から能登地方はたびたび地震に見舞われており、揺れが起きたときも最初は「また来たのか」と深刻には捉えなかったという。
その後は崩れた道路を迂回して避難所に身を寄せた。しばらくすると大学の授業が始まり、かほく市のアパートに戻りつつも、土日には実家に物資を届けたり、2次避難所の支援を行ったりして家族の生活を支えた。
桜井さんは「地域の人に支えられて育ってきた。次は能登を支える若者として力になりたい」と、看護師として働きながら地元への貢献を模索する。「明けない夜はないというが、夜が明けるための方法は教えてもらえない。夜を少しでも早く終わらせるために活動していきたい」と述べた。
地域力育成が重要
中村さんは、勤務先の訪問看護ステーションの利用者名簿を普段から持ち歩くことや、まずスタッフの安否確認をすることなど、日頃から心がけていたことを実践したと明かした。
地震後は勤務先が自主避難所になったり、市外へ避難した人から「早く輪島に帰りたい」と電話を受けたりした。孤独になりがちな状況では「食べる、出す、動く、しゃべるがどこでも大切。ストレスをため込まず、吐き出せるコミュニティーの構築が急務だ」と訴えた。
その上で、支援に頼るだけでなく、自助・共助で支える地域力を育むことの必要性を訴えた。
浅岡さんは元日、石川県や富山県に住む友人たちに安否確認のメッセージを送った。能登を訪れたことはなかったが、地震を機に自分に何ができるのか自問。DC―CATの存在を知ってメンバーになることを決めたという。
2月以降には、避難所や高齢者施設で災害関連死を防ぐためのケアを行っている。「なぜ活動を続けるのか、自分でもよく分かっていないところもあるが、自分なりに被災地の支援を続けたい」と話した。
欲は生きる原動力
ランチイベントの後には「エンドオブライフケアにおける宗教者の役割」と題したシンポジウムが行われ、東北大学大学院の谷山洋三教授や日蓮宗妙法寺(金沢市)の出島元寿住職、天理大学人文学部の山本佳世子准教授らがそれぞれ発表を行った。
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出島住職は、法華経に説かれる「化城喩(けじょうゆ)」を紹介した。
珍しい宝を求める旅で疲れ果てた人々に、隊長が幻の城をつくって休憩させた後、「本当の宝はもうすぐだ」と告げて城を消し、先へ進むよう促した―とのエピソードを指す。
出島住職は「このたとえからは、努力することを学ぶという解釈が一般的だが、それよりも、人間は前に進むのに欲がなければならないと教えているのではないか」と指摘。欲は人の生きる原動力であり、その人らしさを作るものだと伝えた。
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