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【能登半島地震】風呂開放や折り鶴奉納…個人でできる支援を
※文化時報2024年3月19日号の掲載記事です。
能登半島地震で被災した深江八幡神社(石川県羽咋市)の宮谷敬哉宮司は「個人でできる支援」を考えて、この2カ月余りを過ごしてきた。断水が続く地域の住民たちのために、自宅の風呂を開放。霊石「地震石」のある兼務神社のお札を授与し、初穂料を復興支援に充てている。最近では「奥能登に目を向けるべきだ」と、氏子たちにも協力を促すようになった。(大橋学修)
元日の地震後、羽咋市内は1月4日夕方まで断水した。
自衛隊が開設した入浴支援施設に、妻が幼い息子を連れて行ったが「こんな短い時間でお風呂に入るのなんて無理」とこぼした。
石川県内の公衆浴場は、7歳以上の子どもが混浴できない定めがある。家族で入れる風呂が必要だと考えた宮谷宮司は、自宅の風呂を開放することにした。すると親子連れだけでなく、入浴介助が必要なお年寄りや、コインランドリーに洗濯物を入れて待ち時間に訪れる奥能登の住民たちも利用するようになったという。
宮谷宮司は「当初は現地に入れず、支援できることが何もなさそうだった。だから、個人でできることを考えた」と振り返る。
1月の収入捨てる
深江八幡神社は、地元の千里浜海岸をゴールに行われるツーリングイベント「サンライズ・サンセット・ツーリング・ラリー」に協力してきたことで、バイカーの聖地として親しまれている。
地震の被害は、灯籠が倒れたものの軽微だった。ただ、1月の参拝を中止し、収入の柱である御朱印も授与しなかった。道路が寸断されて支援車両の通行がままならない中、バイカーが奥能登へ向かうのを避けるためだったという。
2月の節分を境に参拝受け付けを再開。節分には地域の氏子ら約200人が訪れた。被災した飲食店店主が作った巻き寿司を販売し、福豆の袋に「がんばろう能登」と印刷。折り鶴を奉納してもらった。奥能登の復興へ、氏子たちの意識を向けたかったからだ。
宮谷宮司が兼務する複数の神社は、全て何らかの被害を受けたが、奥能登に比べると〝かすり傷〟だと感じているという。
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兼務神社の一つ、大穴持像石(おおあなもちかたいし)神社には、「地震おさえの霊石」として信仰を集める「地震石」がある。これにちなんで、「地鎮復興祈願符」も授与している。初穂料は宮谷宮司力作の特別御朱印同様、復興支援に充てられる。
困難な復興、不安な将来
深江八幡神社は奥能登へのアクセスが比較的良く、神社本庁が行う災害支援や被害調査の現地拠点としても機能している。
石川県内には1867社が立地し、半数以上が被災。半壊以上の建物も多いという。
宮谷宮司は「復旧するにしても、御神体を移す場所がない。数百単位となると体育館規模のスペースが必要かもしれない」と話す。
多くは過疎化や高齢化が進む地域にあり、中には数人の氏子で護持している小規模な神社もある。自宅の再建すら見通せない中で、神社の復興は困難とみる向きもある。
宮谷宮司は「神職を継続できない宮司が現れれば、合併を考えなければならなくなる。思いもよらない問題が出てくるかもしれない」と、先行きを不安に感じている。
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