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【能登半島地震】被災寺院の売買懸念…文化庁、解散命令請求を推進
※文化時報2024年8月20日号の掲載記事です。
能登半島地震からの復興を断念した被災寺院が不正に売買される恐れがあるとして、文化庁が石川県に対し、宗教法人の解散命令請求手続きを推進するよう働きかけていることが分かった。2023年に創設した不活動法人対策推進事業を用い、解散事由に当たるかどうかの調査を求めている。
文化庁は、不活動状態に陥った宗教法人が不当に取得され、脱税やマネーロンダリングに悪用されることを懸念している。昨年3月には、都道府県の担当課に「不活動宗教法人の判断に関する基準」を通知。財産目録などの提出を行っていない宗教法人のうち、書類提出の督促状が届かない場合などには、不活動法人とみなすよう求めた。
能登半島地震では、石川県内の寺院に解散の意図を問い合わせる不審な電話が相次いだ。このため文化庁は、石川県が不活動と判断した宗教法人に対し、必要な対策が行えるよう、事務経費の全額を交付する補助金を本年度予算で確保している。
県は、現地調査などで情報収集を行い、有識者で構成する対策会議で審議。任意解散が可能な場合は、関係者や包括法人=用語解説=に働きかける。不可能な場合でも宗教法人法に定める解散命令請求手続きを進める。
【解説】地震で「不活動」深刻化
文化庁が石川県に対して不活動化した宗教法人の解散命令請求手続きを進めるよう働きかけたのは、能登半島地震で不活動寺院が増える懸念があるためだ。教団の中には、すでに合併や解散を決めた寺院の支援を検討しているところもあり、問題意識は宗教界と共通している。
能登半島には、経済力の乏しい小規模寺院が多い。真宗大谷派が2017(平成29)年に行った調査では、年収100万円以下の寺院が約4割を占め、住職の年金を主たる収入とする寺院も多かった。
珠洲市では20年に65歳以上人口が5割を超え、将来の寺院の担い手がいなくなることが懸念されていたが、地震で人口減少が加速。今年6月末時点で1万1763人となり、地震直前の23年12月末から810人減となった。前年同期の減少幅(198人)を大幅に上回るペースだ。
解散命令請求の基準を示した宗教法人法81条1項3号には「礼拝の施設が滅失し、やむを得ない事由がないのにその滅失後2年以上にわたってその施設を備えないこと」とある。門徒や檀信徒も被災し、堂宇再建の費用負担は難しくなっている。復興されないまま、不活動法人とみなされる寺院が出てくる可能性はある。
日本宗教連盟が7月19日に大谷派能登教務所で開いたセミナーで、竹原了珠教務所長は「お寺の心が折れないようにすることが、10年先の人々を支える」とする一方、「不活動化する前に、安心して解散できるようにする選択肢を用意することも必要だ」と述べた。行政と宗教界が連携して対策を取ることが求められる。(大橋学修)
【用語解説】包括法人(ほうかつほうじん=宗教全般)
寺院や神社、教会を傘下に置く宗派や教団。宗教法人には、寺院や神社、教会などのように礼拝の施設を備える「単位宗教法人」(単位法人)と、宗派や教団のように、寺院や神社などを傘下に持つ「包括宗教法人」(包括法人)がある。いずれの宗派の傘下にないものを「単立宗教法人」と呼ぶ。
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