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全面解除で油断するな

※文化時報2022年4月1日号に掲載された社説です

 新型コロナウイルス対策のまん延防止等重点措置が3月21日までで解除された。1月上旬から約2カ月半、最大36都道府県に適用された今回の措置は、感染拡大の第6波が続いているさなかに終了した。これがどのような影響を与えるのか誰にも分からない以上、私たちは慎重な行動を続ける必要がある。

 第6波のピークは、全国の新規感染者数が約10万5600人に達した2月5日だったとみられる。もっとも、オミクロン株による爆発的な感染力を前に、PCR検査がどこまで追い付いていたのかは心もとない。

 加えて、ピークから1カ月以上が経過したにもかかわらず、新規感染者数は下がり切っていない。3月26日時点でも約4万7400人に上っており、専門家たちが指摘するように減少スピードは緩やかである。

 岸田文雄首相は、まん延防止等重点措置の解除を表明した3月16日の記者会見でも、新型コロナ対策を「緩める」とは言わなかった。「最大限の警戒をしながら、可能な限り日常生活を取り戻す移行期間」と位置付け、マスク着用や3密の回避など基本的な感染予防の徹底を呼び掛けた。

 注目すべきは、岸田首相の現状認識である。最大限の警戒を続ける理由として挙げたのが、新型コロナはオミクロン株であっても致死率や重症化率が季節性インフルエンザより高いこと、汎用性の高い経口治療薬が存在しないこと、そしてウイルスのさらなる変異の可能性が残ることの3点だった。冷静な見方であり、評価できる。

 感染拡大後の2年間でさまざまなことが分かってきたとはいえ、新型コロナは人間にとって未知なるウイルスであることには変わりない。それに、宗教を大切にする私たちは、人間が科学で自然をコントロールできないことを十分知っている。

 過度に恐れるなという意味合いで、「正しく恐れる」という言葉が使われることがあるが、正しさの根拠を科学に求めるのは、人間の傲慢(ごうまん)である。恐れるという心の動きは、神仏を信じることと表裏一体であり、そこには正しさも誤りもないはずだ。

 新型コロナを過度に恐れなくなった結果、韓国では世界最悪の水準で新規感染者数が急増し、3月16日には約62万1300人にもなった。2020年の第1波では、徹底した検査とビッグデータの活用によって感染者を追跡する「K防疫」で封じ込めに成功したが、今回の感染爆発は政府が昨年11月から行動制限を大幅に緩和したことが要因の一つとみられている。

 韓国では、死者も増加している。CNNの報道によれば、保健当局は3月21日、全国の火葬場に営業時間の延長を指示し、葬儀場に施設の拡張を命じたという。

 英国やフランスなどは、感染がいったん収まりかけたのに、再拡大している。日本も同じ轍を踏まないとは限らない。まん延防止等重点措置の解除を政府による免罪符と受け止めず、油断しないことが肝要である。

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