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【能登半島地震】〈社説〉宗教界にも防災組織を
※文化時報2024年10月11日号の掲載記事です。
元日の地震から立ち上がり、復興へ向けて歩んでいた能登半島を、今度は記録的豪雨が襲った。死者・行方不明者を出し、多数の住民から日常を奪う災害が約9カ月間で2度も起きたことに対し、自然の脅威という言葉だけでは片付けられない理不尽さを感じる。
秋雨前線の影響で線状降水帯が発生し、9月21~22日に石川県輪島市、珠洲市、能登町へ大雨特別警報が出された。河川の氾濫と土砂崩れが相次ぎ、一時115カ所もの集落が孤立した。
地震で住居を失った人々が暮らす応急仮設住宅団地は、6カ所が床上浸水した。このうち輪島市内の4カ所は、元々洪水のリスクが高い区域に立地していたという。山間部が多く建設場所が限られていたとの事情があったそうだが、入居者が受けた心身のダメージは計り知れない。十分な検証が求められる。
宗教者の支援活動は、今回も素早かった。重機による土砂撤去や、人海戦術による片付けや炊き出しなど、有志がそれぞれ得意な分野で復旧に尽力した。頭の下がる行動力である。
各教団は、こうした宗教者が活動しやすいよう環境を整えるべきだ。救援物資の調達や資金援助が欠かせない。大々的な勧募の呼び掛けを再開するなどし、宗門の関心を被災地に振り向ける努力も必要だ。
「心が折れた」「神も仏もない」と感じている被災者たちに寄り添うことも、宗教者にはできる。
ただし、傾聴には一定のスキルが必要な上、安易な言葉がけが被災者を傷つける恐れもある。息の長い支援になることを見越し、今からでも宗教者や檀家・門徒、信徒を含めた傾聴ボランティアの養成に注力してほしい。
こうした対策を、全て単独でできる教団は限られている。防災から復興まで、あらゆる災害対応を宗教界全体で行うために、宗派を超えて予算と人員を分担する防災組織を結成すべきではないか。
能登半島には真宗大谷派や曹洞宗、浄土真宗本願寺派の寺院が多い半面、末寺が1カ寺もない宗派もある。元日の地震では、被災寺院の支援に追われた教団もあれば、被災者への義援金を集めた教団もあった。
もし宗教界全体をつかさどる防災組織があれば、信仰の大切さを知る人々の善意を集約し、復旧復興に効果的に役立てられただろう。ゼロから設立せずとも、超宗派で災害対応に当たる団体はすでにある。プラットフォームになれないか。
これは石破茂首相が先の自民党総裁選で設置を主張した「防災省」に対応する組織になり得る。防災省創設の実現可能性は未知数なものの、現状の関係省庁や自治体のカウンターパートとして機能すれば、行政と宗教界の協力を加速できるに違いない。
今回のような複合災害は、いつどこでも起こり得る。南海トラフ巨大地震や首都直下地震はもちろん、異常気象や新たな感染症の流行を含めると、災害のリスクは枚挙にいとまがない。
だからこそ、各教団は独力で備えず、他教団や行政と協力すべきだ。それが、宗門を守る最も有効な手段となるはずである。
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