
【能登半島地震】復興ツーリズム目指す 高野山真言宗・北原密蓮さん、住職就任へ
※文化時報2024年8月27日号の掲載記事です。
石川県穴水町で傾聴移動喫茶「カフェデモンク=用語解説=」を行う臨床宗教師=用語解説=の北原密蓮さん(54)=石川県七尾市=は今秋、同町曽良地区にある高野山真言宗千手院の住職に就任する。長年無住寺院だった千手院を、ボランティアの宿泊場所や「復興ツーリズム」の拠点として整備したい考えだ。(松井里歩)
のと鉄道穴水駅から車で30分ほど海沿いに進んだ先にひっそりとたたずむ千手院は、10年以上無住になっていた。元日の能登半島地震では鐘楼堂やお墓が被害を受け、本堂には倒壊の危険を示す「赤紙」が貼られた。
そうした状況下ではあったが、北原さんは災害ボランティアの宿泊場所がないことを案じ、庫裏を改修することで泊まれるようにしようと考えた。現在は徳島県などから学生ボランティアも多く入り、そのための準備を行っている。
地震では北原さん自身も被災した。七尾市の自宅アパートは、家中の棚が倒れて物が散乱。避難先の中能登町にある夫の実家も半壊相当で、日中は中能登で過ごし、夕食と風呂は七尾へ戻って済ませるのだという。千手院のある穴水を含めて行き来する毎日だ。

千手院での活動に協力しているのが、地元のNPO法人チーム能登喰(く)いしん坊。これまで10年以上にわたり、能登の食材を使ったオリジナル食品の提供や駅弁開発などを行ってきた。代表の森本敬一さんは中学まで北原さんと同級生で、寺院巡りをしていたときに偶然再会したという。
北原さんは、能登の真言宗寺院を観光資源としたいと考え、森本さんに協力を依頼。復興ツーリズムとして、お寺で精進料理を提供するなどの計画を立てており、大手旅行会社ともツアーのプランを企画中。2年後には旅行商品として提供することを目指す。

森本さんは「お寺だからこその『本物の祈り』を大事にしたい。旅行をきっかけに自分を見つめたり、復興に寄り添ってもらったりする機会になれば」と意気込みを語った。
【用語解説】カフェデモンク(宗教全般)
2011(平成23)年の東日本大震災を機に始まった超宗派の宗教者による傾聴移動喫茶。コーヒーやスイーツを振る舞い、人々の心の声に耳を傾ける。曹洞宗通大寺(宮城県栗原市)の金田諦應住職が考案し、僧侶や修道士を意味する英語のモンク(monk)と文句、悶苦の語呂合わせで命名した。全国の災害被災地や緩和ケア病棟など14カ所に広がっている。
【用語解説】臨床宗教師(りんしょうしゅうきょうし=宗教全般)
被災者やがん患者らの悲嘆を和らげる宗教者の専門職。布教や勧誘を行わず傾聴を通じて相手の気持ちに寄り添う。2012年に東北大学大学院で養成が始まり、18年に一般社団法人日本臨床宗教師会の認定資格になった。認定者数は24年4月現在で210人。
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