【能登半島地震】祈りよ届け 高野の火まつり、被災地とともに
※文化時報2024年3月12日号の掲載記事です。
高野山に春を呼ぶ恒例の「高野の火まつり」(実行委員長、豊田高暢・地蔵院住職)が3日、高野山真言宗総本山金剛峯寺(長谷部真道座主、和歌山県高野町)前駐車場で開催された。各地から1200人超の参拝者が訪れ、「柴燈大護摩供」で招福と厄除(よ)けを祈願した。
長谷部座主が道場を清め、山伏問答が行われた後、法会部長の加藤栄俊常喜院(同町)住職を大祇師に法要を営んだ。願文師は、藤原栄善鷲林寺(兵庫県西宮市)住職が務めた。
四国八十八ヶ所霊場をはじめ全国の「霊場開き」としても知られるが、今年は能登半島地震の物故者慰霊と、早期復興祈願を掲げて実施。読経と共に天高く舞い上がる護摩の煙が能登半島に届けとばかりに、参拝者らは一心に手を合わせた。
風物詩も被災地と共に
高野山の風物詩として知られる「高野の火まつり」は、過去の災害でも被災地に思いを寄せて実施されてきた経緯がある。今年は能登半島地震の被災地に贈る義援金を会場で募ったほか、護摩木奉納など浄財の一部も被災地支援に拠出する。
開会に当たり、平野嘉也高野町長は「被災した人々の気持ちに寄り添い、一日も早い復興を祈る」とあいさつ。同町は、地震発生直後から車両や人員を現地に派遣して復旧支援に当たっており、平野町長の思いは強い。
高野の火まつりは、東日本大震災でも物故者慰霊と早期復興を祈願してきた。
2015(平成27)年の高野山開創1200年記念大法会では、慶讃(けいさん)事業の現代アート展で、間伐材を利用した護摩木に参拝者が願いを書き込んで積み上げた塔が展示された。翌16年の火まつりでは、この護摩木の一部を焚(た)き上げた。
その年の3月11日には、真言宗護國派と二實修験宗の協力を得て、宮城県東松島市内の海岸でこの護摩木を使った柴燈大護摩供が奉修された。
今年の高野の火まつりには、山内僧侶らに加え、高野山高校宗教科の生徒や高野山専修学院の院生らも法出仕。若い力が火まつりの運営と被災地への祈りを支えた。