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〈38〉緊急時と訪問自粛
※文化時報2022年8月9日号の掲載記事です。
新型コロナウイルス感染拡大の第7波は、これまでの感覚と大違いである。
今までなんとか乗り切ってきた医療・福祉現場は崩壊寸前の危機となっている。利用者・職員ともに感染者や濃厚接触者が続出している。酸素濃度が80台まで低下している高齢者に救急車を要請しても到着まで数時間かかっている。こんな大混乱は初めてである。
一度感染した職員が感染している利用者のケアに当たる。現場では「老老介護」ならぬ「陽陽介護」と呼んでいるそうだ。
現場の職員は、心身とも激しく消耗している。こんな時に魂のケア(スピリチュアルケア=用語解説=)が必要となるはずだが、多くの現場で宗教者の訪問は自粛しているのではないかと思う。関係者として悲しい。もっと宗教者を頼りにしてくれたらいいのにと歯がゆく思う。
でも、これは宗教者側の普段の関わり方を反省すべきだろう。単なる話し相手としか認識されていないので、感染拡大した緊急時になると訪問自粛を言われてしまう。医療や介護の専門職の代わりはできなくても、せめて食事の用意や片付け、掃除くらいの役に立ってもいいのではないかと思う。普段からそうしておけば、緊急時に「来ないで」と言われることもないだろう。
このコラムが紙面に掲載される頃、夏の甲子園大会が始まっているだろう。同時に寺院業界では一年中で最も忙しい棚経の時期も始まる。
真夏の風物詩となっている甲子園と棚経。勤行はお坊さんに任せて、家人はテレビ観戦に夢中という家も珍しくないと想像する。「棚経はもう結構です」と断られないだけマシなのかもしれない。
でもいずれ「昔はお盆になるとお坊さんが走り回っていたなあ」と懐かしがられる日がくるかもしれない。それはそれでいいのかもしれないが、その頃には医療・福祉現場に宗教者がなくてはならない存在になっていてほしいものである。(三浦紀夫)
【用語解説】スピリチュアルケア
人生の不条理や死への恐怖など、命にまつわる根源的な苦痛(スピリチュアルペイン)を和らげるケア。傾聴を基本に行う。緩和ケアなどで重視されている。
三浦紀夫(みうら・のりお)1965年生まれ。大阪府貝塚市出身。高校卒業後、一般企業を経て百貨店の仏事相談コーナーで10年間勤務。2009年に得度し、11 年から仏教福祉グループ「ビハーラ21」事務局長。21年には一般財団法人安住荘の代表理事に就任した。上智大学グリーフケア研究所、花園大学文学部仏教学科で非常勤講師を務めている。真宗大谷派瑞興寺(大阪市平野区)衆徒。
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