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【能登半島地震】〈社説〉非当事者にできること

※文化時報2024年12月13日号の掲載記事です。

 真宗興正派と文化時報社が11月に共同開催した「記者が見た能登―被災地報道写真展2024」は、既報の通り533人が来場し盛況のうちに閉幕した。能登半島地震の被災地に思いを寄せ、写真展を応援してくださった全ての方々に、心より感謝申し上げる。

 募金やチャリティーイベントで集まった浄財は総額32万3211円に上り、いずれも浄土真宗本願寺派の僧侶が代表者を務める一般社団法人えんまん(八幡真衣代表)と震災支援を続ける会(石﨑博敍代表幹事)に、全額を寄託した。両団体は共同で、石川県輪島市の応急仮設住宅で傾聴サロンを開いており、今回の支援金は宗派や僧俗を超えた傾聴ボランティアへの補助に充てられる。

 八幡代表には写真展で記念講演をお願いし、地震発生当日、同県小松市で子ども食堂を開いていた時に被災したこと、翌日から輪島市に支援物資を運んだことを語っていただいた。心を打たれる数々のエピソードと合わせ、印象に残ったのが「非当事者でもできることがある」という話だった。

 当事者という言葉は、簡単に使えるからこそ厄介な課題をはらむ。皮と中身の境目が分かりづらいタマネギのように、当事者と非当事者の線引きが難しい点だ。八幡代表も被災したが、小松より大きな被害を受けた地域の人々を当事者、自身を非当事者と捉えている。

 地域活動家の小松理虔(りけん)氏は「事を共にする人」の意味で「共事者」という概念を提唱し、脳性まひで車いすに乗る東京大学先端科学技術研究センターの熊谷晋一郎教授は「当事者研究」に取り組んでいる。言論・学術会でも盛んに議論されている当事者と非当事者の溝を、八幡代表は「非当事者の自分にできること」をする、という行動力で乗り越えている。

 写真展を巡っては、会場の本山興正寺(京都市下京区)を訪れた人はもちろん、会員制交流サイト(SNS)で情報を共有した人やチャリティーバザーに物品を提供した人など、支えてくださった全ての方々が「非当事者の自分にできること」をしたといえるだろう。

 境内には、訪日外国人客(インバウンド)の姿もあった。能登半島地震のチャリティーを行っていると説明すると、結構な数の人が募金に協力し、写真展を見た。異国の地で起きた地震である。非当事者に違いない人々が行動を示してくださったことは、まるで私たちが当事者であると錯覚するほど励みになった。

 たとえ被災地に行かなくても「見ることによる支援」はできる。私たちは、そのように考えて今回の写真展を開いた。記者たちが記事を書くだけでなく、全社一丸となって「非当事者にできること」をした。そして、地震発生から1年を迎える来年元日以降も、変わらずに模索していく。

 宗教者の方々は、どうだろうか。「非当事者にできること」は何かを考え、行動していただけるだろうか。

 記念講演で八幡代表は「『何もしてあげられない』ということは、決してありません」と断じた。できることは必ずある。私たちも、共に考え続けたい。

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