龍大臨床宗教師研修 1年半ぶり現地実習
※文化時報2021年10月14日号の掲載記事です。
龍谷大学大学院実践真宗学研究科で毎年行われる臨床宗教師=用語解説=養成の現地実習が8日、約1年半ぶりに再開された。実習生6人が参加し、真宗大谷派超覚寺(和田隆彦住職、広島市中区)で夫に先立たれた妻たちの分かち合いの場などについて学んだほか、広島平和記念公園の「原爆の子の像」前で勤行し折り鶴をささげた。(編集委員 泉英明)
龍谷大学大学院の臨床宗教師研修は2年制で、初年度に座学、2年目は実習中心に学ぶ。今年の実習生は、宗教者以外が対象の臨床傾聴士を目指す2人を含む7人。グリーフ(悲嘆)ケアを僧侶養成に取り入れようと準備を進める真宗大谷派の橋本真・企画調整局参事も社会人枠で加わっている。
実習は例年、東日本大震災の被災地や全国の病院、介護施設などで傾聴を積み重ねて行うが、新型コロナウイルス感染拡大後は対面での研修実施が困難になっていた。
今後は、浄土真宗本願寺派の独立型緩和ケア病棟「あそかビハーラ病院」(京都府城陽市)でも、環境整備などを中心に現地実習を行う見込み。指導教員の鍋島直樹教授は「直接会って全身で話を聴くことの大切さを改めて感じた。気持ちを交換できる場になったと思う」と、現地実習の再開を喜んだ。
「生の声」僧侶に届く
龍谷大大学院の臨床宗教師研修は、戦争被爆地の広島での現地実習を毎年行っている。2016年度に自身も龍谷大学大学院の研修を修了し、認定臨床宗教師として活動する和田住職が全面協力している。
和田住職は被爆者の声を語り継ぐ「被爆体験伝承者」としても活動しており、超覚寺で行った午前の講義で、被爆当時の自坊の様子などを説明。本堂で定期的に行う自死遺族会「サラナンの集い」や、夫を亡くした妻たちの分かち合いの場である「和(なごみ)の集い」の概要も話し、「必要なのは、ただその場を提供して話を聴かせてもらうこと」と説いた。
午後の講義では、「和の集い」参加者の齋藤美佐子さん(65)と隅田弥生さん(63)が、「生の声」を届けた。
対面で直接話を聴く実習生ら
齋藤さんは、突然死だった夫の葬儀や法事などで、葬儀社から紹介された僧侶の振る舞いに傷つけられた経験を明かした。「お寺って何なの」と感じたことや、和田住職との出会いで信頼を回復した体験などを話し、「僧侶になる人は、人の気持ちを分かってほしい」と呼び掛けた。
隅田さんは、寺院には訪れにくい雰囲気があると指摘。「和の集い」を通じて気持ちが変わったことなどを語り、「私が生きている限り、夫も生きていると感じる。僧侶には、人が生きるための考え方を説いてほしい」と期待を語った。
実習に参加した実践真宗学研究科2年で本願寺派浄見寺僧侶の大西宗英さん(24)は「直接お話が聴けたことがありがたく、語り合いの場の大切さを感じた。自坊に戻って経験を生かしたい」と話した。
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【用語解説】臨床宗教師(りんしょうしゅうきょうし=宗教全般)
被災者やがん患者らの悲嘆を和らげる宗教者の専門職。布教や勧誘を行わず傾聴を通じて相手の気持ちに寄り添う。2012年に東北大学大学院で養成が始まり、18年に一般社団法人日本臨床宗教師会の認定資格になった。認定者数は21年3月現在で203人。
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