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【2】着ける当てのない山盛りのバッジ。

 「こんなんあんねんけど」

 文化時報社を引き継ぐとき、前社長の奥様から、ある有名な焼き菓子の缶を渡されました。中身はもちろん、バターの香り高いサクッとしたお菓子…ではなく、親指大のピンバッジのようなものが、ごろごろ入っていました。

 社章でした。

 現在は誰も使っていません。奥様に尋ねても、由来はご存じないとのこと。う~む。ガラク…いえ、大切な物ですよね。そのまま会社の棚に眠らせておきました。

 しばらく放置していたのですが、先日、応接室に飾ってある額入りのオブジェを何気なく見ていて、あっと声をあげました。

 「もしかして、社章と同じデザイン?!」

オブジェ

 「文化」と縦書きで書いた文字を丸で囲い、その周りに菊…?のような花びらが15弁、施してあります。細部は微妙に異なるのですが、社章と同じです。

 もう一度、焼き菓子の缶をごそごそと開けてみると、社章を入れた小さな紙箱にも気づきました。

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 「御誂徽章」

 おあつらえきしょう、と読みます。御誂はオーダーメード、徽章は社章のこと。注文して作らせた品だったことが分かります。

 箱の裏側に、手掛かりがありました。業者の略称と、電話番号の下4桁が記してあったのです。ネットで検索すると、どうやら現在も営業しているもよう。さっそく電話して、経緯を尋ねてみることにしました。

 「文化時報社?聞き覚えないなあ…」

 社長とおぼしき男性が出てくださいましたが、すでに暗雲が漂っています。

 「どんなデザイン?…う~ん、やっぱり覚えないなあ。親から引き継いで40年ぐらいになるけど、それより前やね。どんな箱に入ってたって?…いやあ、そりゃあ古いわ。うち、もう使うてへんやつやん」

 そして社長とおぼしき男性は、おっしゃいました。「昭和の時代やな」

 またしても昭和レトロ認定された文化時報社。謎が謎のまま解決されず、ただただ古いという文化時報社。嗚呼、文化時報社…。

 それではみなさんご一緒に!

 「な~るほどっ、ザ・文化時報ワールドっ!」

(文・代表取締役 小野木康雄)

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