【能登半島地震1年】区切りの除夜の鐘 高野山真言宗千手院
※文化時報2025年1月14日号の掲載記事です。
能登半島地震で被災した石川県穴水町の高野山真言宗千手院(北原密蓮住職)では12月31日午後11時半ごろから、除夜の鐘をつきに近隣住民らが集まった。本堂では北原住職が、犠牲者の供養や能登の復興、世界平和などを願って法要を行った。
千手院の除夜の鐘を切り盛りしている滝谷芳朗さん(76)は、無住寺院だった時も変わらずつき続けて50年以上になる。ここ10年ほどは息子と孫と3人だけでついていたが、今年は久しぶりのにぎわいで、「今日は200以上ついとるんじゃないかな」と笑顔を見せた。
子どもを連れて訪れた京都府内の50代女性は昨年の元日、近くにある実家に帰省していたとき、ちょうど千手院の近辺で地震にあった。「来るかどうか少し考えたが、例年通り鐘の音を聞くと気持ちが安らぐ。普段の音なのに、今年は何だか特別」と話していた。
今年は北原住職のつながりでボランティア団体のメンバーらが手伝い、豚汁や甘酒も振る舞った。
北原住職は、地震発生時刻の午後4時10分に再び大きな地震が起きるのではないかという漠然とした不安を打ち明けつつ、「今日の法要は新年の区切りを迎えるお手伝い。ああ、一年がまた始まるなあ」と、ため息交じりに笑った。
498人と16人悼む 高野山真言宗天王寺
石川県輪島市町野町の高野山真言宗天王寺(廣澤佑昇住職)は元日、地震発生時刻の午後4時10分に合わせて、犠牲者の追悼と早期復興を祈願する一周忌法要を営んだ。宗派の加藤栄俊法会部長を導師に、県内の僧侶ら約20人が出仕し理趣三昧を勤修。各寺の檀家や住民など50人ほどが参列した。
会場では地震498人、豪雨16人の県内犠牲者数に合わせた514個のキャンドルに明かりをともしたほか、参列者にろうそくを配り、高野山奥之院に伝わる「不滅の聖燈(しょうとう)」を分けて持ち帰ってもらった。
法要後にはぜんざいを振る舞った。