【能登半島地震】「早期の制度設計を」石川県の寺社再建補助に一抹の不安
※文化時報2024年9月6日号の掲載記事です。
石川県が宗教施設を地域コミュニティー施設と位置付け、能登半島地震で被害を受けた建物の再建に補助金を交付する方針を固めたことを受け、被災寺院関係者は胸をなでおろす一方、不安を払拭できていない状況だ。補助対象施設の範囲が決まっていないことや、申請手続きの方法によっては再建が進まなくなることへの懸念もあり、早期の制度設計を求める声が上がっている。(大橋学修、高田京介、山根陽一)
本堂や庫裏、客殿が全壊した日蓮宗本住寺(珠洲市)の大句哲正住職は「公的な基金から補助金が交付されたり、宗門などから多くの支援を頂けたりすることは、大変にありがたい」と話す。
「多くの檀家宅が全壊し、仮設住宅に住む人も少なくない」と、再建費用を檀信徒に募る難しさを吐露し、補助金については「檀家と相談しながら用途を決めたい」と語る。
登録有形文化財の回廊や塔頭(たっちゅう)芳春院が全壊した曹洞宗大本山總持寺祖院の副監院で、自坊や兼務寺院が全半壊した高島弘成・龍護寺(志賀町)住職は「すでに受け付けが始まっている公費解体でも、実際に行われた数は、申請件数の10%にも満たない」と、再建が進まない可能性を不安視。「申請の受け付けを始める時期や支給段階についても不透明すぎる」と指摘する。
補助対象の宗教施設が「地域のコミュニティーを担う」ことを要件としていることにも「基準が明確でない。信者数や檀家数で判断するにしても、調査する包括宗教法人ごとに基準が異なるため、調査自体の正確性に疑問が残る」と課題を挙げた。
手続き次第で復興断念
浄土宗宝幢寺(高田光彦住職、七尾市)は、倒壊を免れた部分を生かして本堂を再建し、庫裏は建て替えようとしている。本堂の見積もりを宮大工に依頼したところ、「1億円を超える」と言われたという。
高田光順副住職は「本堂再建に補助金が交付され、生活資金に対する補助もある。庫裏についても一般住宅と同じ200万円が交付される。こういったことは本当にありがたく感じる」と感謝する。
一方で、申請手続きに不安があるという。再建費用を確保する見通しが立たなければ、着工時期や完成時期を記載した再建計画書を作ることが難しい。補助金の申請時に添付が求められるようだと、資金計画の見通しが立たなければ申請できなくなる可能性があるという。
真宗大谷派宗議会議員の諸岡敏・明敬寺(輪島市)住職は「申請に係る書類や調査の有無で、面倒なことになり、ぬか喜びに終わる可能性もある」と危惧。また、多数の寺院が被災していることを背景に、復興基金の財源が不足することを心配する。
あと4カ月で地震発生から1年。冬が訪れれば雪害で堂宇の損傷が拡大しかねない。諸岡住職は「被災地の人でも、再建に補助金が出ることを知らない人が多い。そもそも、復興基金540億円の使い道に関する住民説明会はなく、報道で知る内容がほとんど。県や自治体は、広報を報道任せにしている姿勢が見える」と苦言を呈した。
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