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傾聴「カフェデモンク」再開の秋

※文化時報2021年10月21日号の掲載記事です

 関西で活動する臨床宗教師=用語解説=らでつくる関西臨床宗教師会(野々目月泉会長)は14日、真言宗善通寺派大本山隨心院(京都市山科区)で傾聴移動喫茶「カフェデモンク」を開いた。対面での開催は1年ぶり。秋晴れの下、屋外に設けられた会場を12人が訪れ、僧侶らに心の内を打ち明けた。(主筆 小野木康雄)

 カフェデモンクは、2011(平成23)年の東日本大震災発生直後から続く超宗派の取り組み。宗教者たちがコーヒーやスイーツを振る舞い、被災者の話を聴いて寄り添った活動が、全国に広がった。曹洞宗通大寺(宮城県栗原市)の金田諦應住職が考案し、僧侶や修道士を意味する英語のモンク(monk)と文句、悶苦の語呂合わせで命名した。

 関西臨床宗教師会は、19年にカフェデモンクを本格的に開始。新型コロナウイルス感染拡大後は中止を余儀なくされ、直近の開催は昨年10月だった。代わりにオンラインでのカフェデモンクを毎月1回、行ってきた。

 今回は感染拡大に配慮し、床几とパイプいすを屋外に並べて、ペットボトルのお茶と持ち帰り用のまんじゅうを来場者に渡した。臨床宗教師は10人がスタンバイ。さまざまな苦悩に耳を傾け、涙ながらに打ち明けられるつらさを受け止めた。

 オンラインでのカフェデモンクには何度も参加してきたという看護師の鵜飼亜由美さん(51)は「緑に囲まれ、小鳥のさえずりが聞こえるこの空気感は、オンラインでは味わえない。会話だけでなく、相手の表情やしぐさも感じ取れる環境は、本当に大切」と話した。

オンラインも強力な武器

 コロナ禍により人との接触を極力避けることが求められる医療・介護現場で、傾聴の場をいかにつくるかは、スピリチュアルケア=用語解説=に当たる宗教者にとってかなりの難題といえる。家族同士の面会すらままならない状況下で、病院や施設には、宗教者の訪問を二の次と捉える傾向があるからだ。

カフェデモンク会場

屋外で工夫して行われた

 そうした中、関西臨床宗教師会が活路を見いだそうとしてきたのが、他ならぬオンライン傾聴だった。

 オンラインでのカフェデモンクは、昨年5月から原則毎月第4木曜に開催。全体で自己紹介をし合った後、〝小部屋〟に分かれ、参加者1人に臨床宗教師が2人ずつ付く。約40分間じっくり話を聴き、最後に全員でクールダウンする時間も設けている。

 真宗大谷派僧侶の野々目月泉会長(65)は「オンラインは強力な武器。こちらが五感を働かせて、相手の雰囲気をキャッチするよう心掛けている。使わない時代ではない」と話しており、今後もオンラインでのカフェデモンクを継続する。

 同会は、自分自身の傾聴の様子をロールプレイなどで客観的に振り返る「会話記録検討」などの研修会も、積極的にオンラインで開催している。
 
 一方で、今回再開した対面でのカフェデモンクにも力を入れる。京都の他の拝観寺院でも開催を計画中で、さまざまな人に利用してもらいたい考え。真言宗泉涌寺派僧侶の上原慎勢事務局長(61)は「福祉施設や社会福祉協議会など、公共の場にも広がっていけば」と語った。
        ◇
【用語解説】臨床宗教師(りんしょうしゅうきょうし=宗教全般)
 被災者やがん患者らの悲嘆を和らげる宗教者の専門職。布教や勧誘を行わず傾聴を通じて相手の気持ちに寄り添う。2012年に東北大学大学院で養成が始まり、18年に一般社団法人日本臨床宗教師会の認定資格になった。認定者数は21年3月現在で203人。

【用語解説】スピリチュアルケア
 人生の不条理や死への恐怖など、命にまつわる根源的な苦痛(スピリチュアルペイン)を和らげるケア。傾聴を基本に行う。緩和ケアなどで重視されている。

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