【能登半島地震】「指定寄付金」活用を 税制優遇、寺院復旧に適用可能
※文化時報2024年7月30日号の掲載記事です。
日本宗教連盟(日宗連、石倉寿一理事長)は19日、石川県七尾市の真宗大谷派能登教務所で、能登半島地震をテーマにした宗教法人の公益性に関するセミナーを開いた。文化庁宗務課の一色潤貴専門官が登壇し、被災した寺院など宗教施設の復興に指定寄付金=用語解説=制度が使えると説明。参加した地元寺院からは、周知不足への指摘や教団の支援を求める声が上がった。(大橋学修)
教団に協力求める声
宗教施設の復旧に指定寄付金を適用することは、財務省が5月27日に告示したことで可能になった。適用されれば企業などは寄付金を全額損金算入でき、個人は所得の40%を上限に寄付金額から2千円を減じた額を控除できる。こうした税制優遇によって、資金が集めやすくなる。
一色専門官によると、指定寄付金の公募は、包括宗教法人がまとめて行う方法と、被包括宗教法人が個別に実施する方法がある。
寄付金の分配基準を設けるのが難しいため包括法人が行った例はなく、被包括法人が行う場合も知名度が低いため苦戦しがちという。
参加者からは、包括法人が取りまとめて全国に発信するよう求める声が上がり、大谷派願正寺(石川県七尾市)の三藤了映住職は「地元企業の寄付を頼りにすると、寺院間で取り合いになる。教団の知名度で、全国に広く周知する必要がある」と訴えた。
日宗連は6月20日、馳浩石川県知事に対し、行政書士への報酬など申請書類の作成にかかる費用を支援するよう要請した。日宗連宗教文化振興等調査研究委員会の戸松義晴委員長は「指定寄付金制度は、宗教に公益性があることが前提。宗派・教派を超えて地域を支え、役立つことが必要だ」と話した。
セミナーではこのほか、宗教施設の防災に詳しい大阪大学大学院の稲場圭信教授(宗教社会学・共生学)が登壇。能登半島地震の発生直後に少なくとも35社寺に千人以上が1次避難し、県外の宗教者がいち早く支援活動を始めたことを紹介した。
稲場教授は、緊急時に避難場所や防災拠点となることが宗教施設の公益性を高めると述べ、「子ども食堂など、平常時の取り組みがいざというときの支えにつながる」と呼び掛けた。
【用語解説】指定寄付金
公益法人などが広く一般に募集し、財務大臣が期間と募金総額を指定する寄付金。教育または科学の振興、文化の向上のための支出で、緊急を要するものが対象となる。寄付者は所得税や法人税の優遇措置を受けられる。宗教法人の場合は通常、国宝や重要文化財の修理などに限られるが、阪神・淡路大震災や東日本大震災、熊本地震などでは、特例として建物復旧のための募金も対象となった。