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エナガがいつも仲間とくらすのには、理由がある

かわいくて人気のある鳥といえば、それはもうシマエナガがダントツ! 人気があるどころか、大人気で一大ブームになっている愛らしい小鳥です。ただ、シマエナガは北海道にしか生息していないので、北海道以外の人にとっては気軽に見られる鳥ではありません。でもエナガなら、本州以南で容易に観察することができます。シマエナガとは亜種違いで、顔に太い眉毛のような黒斑があるのが特徴。シマエナガのような絶対的なかわいさはないかもしれませんが、ふわふわっとした羽毛や顔以外の模様は同じです。

エナガだってキュート

エナガは身近な公園や野山で見ることができる鳥。ジュール ジュールという鳴き声を頼りに林を歩けば、見つけることができます。その名の通り(柄長)、尾羽が長いシルエットが特徴。きょろきょろ周囲を見渡して、木から木へ飛び移っていきます。枝にぶら下がったりしながら、小さな虫を見つけて採食します。
繁殖期以外は群れで行動しているので、比較的見つけやすい鳥です。群れの規模はさまざまですが、数羽の小さな群れから、数十羽にもなる大きな群れまで。ときには、他種と群れになって一緒に行動することもあります。

早春のまだ寒い時期から、巣づくりを始めます。このときは、群れを離れてつがいで行動しますが、夕方になると群れに戻って一緒に休みます。巣はドーム型で、コケで土台を作ったら、ガのまゆをほどくなどして、粘着性や伸縮性のある糸を得て、小枝で補強しながら縦横に編んでいき、伸び縮みするかごのように仕立てます。外装にはコケや地衣類を貼り付けてカムフラージュ。内装には大量の羽根を使います。数百枚から数千枚の羽根を詰め込み、保温性の高い巣に仕上げます。

卵はおもにメスがあたためます。卵は10個前後。メスは夜間も巣内で眠ることが多いので、尾羽にくせがついています。エナガは外見で雌雄を見分けられないのですが、子育ての時期に尾羽が曲がっている個体はメスとみて間違いないでしょう。
※巣を観察する場合は、遠くからそっと覗かせてもらう程度にし、短時間で済ませましょう。

ひなが生まれると親鳥はせっせと餌を運びます。やがて、ひなが一斉に巣立ち、枝の上にずらっと並ぶことがあります。これをエナガ団子といい、バードウォッチャーなら誰でも見たい場面ですが、ばらけてしまうことが多く、並んだとしても、後ろを向いていることが多いものです。『いつも仲間といっしょ エナガのくらし』のカバー(表紙)は、奇跡的に9羽すべてが正面を向いたまれな瞬間を、著者の江口欣照さんが捉えた写真。この記事で紹介したように、エナガの一年のくらしを通して、仲間と一緒じゃないと生きていけない興味深い生態とその理由を紹介した写真絵本です。

群れで行動する社会性の鳥はオナガなど他にもいますが、エナガには仲間と一緒じゃないと生きていけない、決定的な理由があります。それも含めて、仲間と力を合わせながら一緒に生きていく大切さを、本書を通して伝えられればと願っています。巻末にはエナガについてさらに学ぶことができるQ&Aも。シマエナガも登場します。


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