土日カメラマンのとことんシマエナガな生活
私の生活を一変させた、衝撃的な出会い
今から5年くらい前の冬だったでしょうか、札幌市内の公園でシマエナガに出会ったのは。木の高いところで「ジュリジュリ」と鳴いていた小鳥が、突然私の目の前に降りてきて、首を傾げてニコッと挨拶してくれた(ように見えた)のです。これが噂に聞くシマエナガか!と深い感動を覚えました。真っ白でふわふわの愛らしい姿は、まさに「雪の妖精」。ただ、そのときは鳥との距離があまりにも近すぎて、500ミリの望遠レンズでは撮影できませんでした。この最初の出会いで撮影できなかったこともあり、それからシマエナガを追いかける生活が始まりました。
カメラマンをメロメロにする小悪魔の魅力
シマエナガはスズメより小さく、体重は10グラムにも満たない軽さ。とても敏捷で1か所に留まることは滅多にありません。たいていは木の上の方を飛び回っているので、見上げて撮った写真に写るのはおなかばかり。ほとんどボツになります。ボツになるとわかっていても、つい何回もシャッターを切ってしまいます。なぜならこの出会いを逃すと、その日はもう会えないかもしれないからです。時折、気まぐれに下の方に降りてきてくれることがあり、その瞬間が絶好のシャッターチャンス。こちらの心を見透かすかのように、首を傾げたシマエナガに見つめられると、カメラマンはみんなメロメロになってしまいます。この至福の時間を得るために、飛び回るシマエナガをずっと追っかけていたのですから。
たまに10人以上のカメラマンが、公園にいる1つの群れを追いかけることがありますが、写真に興味のない方から見るとある種の異様な集団に見えているのかなあ、と一瞬心によぎります。でも、そんなことは気にしません(笑)。シマエナガの愛くるしい妖精のような姿を撮影することさえできれば、これに勝る幸せはないのです。
大の大人を魅了する小悪魔的な魅力をもったシマエナガ。最近は、朝の情報番組のマスコットキャラクターになったこともあり、子供から大人までファン層が広がり、一大ブームになってきました。
動画を中心に撮影
私はIT企業のマネジメントが本業ですが、数年前から土日カメラマンとなり、シマエナガやエゾリス、エゾモモンガなど北海道に生息するかわいい鳥や動物、美しい風景などを撮影しています。
最初は写真撮影が中心でしたが、2021年2月にSONYのα1というカメラに変えてからは、おもに動画を撮影するようになりました。写真は一瞬の時間を切り取りますが、動画は被写体の動きや表情の変化を記録することができて、写真とは違った魅力があります。私の撮影スタイルは、ほかのカメラマンと少し違うかもしれません。
少し専門的になるかもしれませんが、私の撮影スタイルをご紹介したいと思います。カメラの設定は、120FPS、24コマ、4Kのスローモーション撮影をデフォルトとしています。この設定はシマエナガのように動きが速い被写体を撮影するとき、特に威力を発揮します。以前、NHKの自然番組「ダーウィンが来た!」でシマエナガの特集が放映されました。特集では、普通のカメラでは撮影が困難ということで、特殊なハイスピードカメラを使って撮影したことも紹介されました。シマエナガの撮影にハイスピードカメラを使ったことは、よく理解できます 。
また、私は撮影時に三脚を使いません。シマエナガのように動きが速い鳥を、三脚を持って追いかけることはそもそも不可能ですし、ほかの被写体を撮るときも、瞬時に立ち位置や撮影角度を変えることができるように手持ちで撮影しています。動画の撮影では三脚を使わないと手ブレの問題が発生しますが、じつは手ブレを起こしにくい撮影方法があるのです。
α1はハイスピードカメラのような性能はないかもしれませんが、写真モード、動画モード、スローモーション動画モードを手元のダイヤルで瞬時に切り替えられます。この機能を活用し、撮影しながら状況に応じて写真と動画を切り替えているのです。また、スローモーションで撮影した動画の中から気に入ったシーンを静止画として切り出すこともでき、とても便利です。
シマエナガの魅力を、世界のすべての人たちへ
私は北海道にしかいないシマエナガの魅力を、老若男女を問わず全世界の人たちに伝えていければなあ、と思っています。そのためにユーザ層の中心が若い人のTikToKやYouTube、InstagramなどのSNSに投稿したり、書籍を通じてその魅力を伝えたいと考えて情報発信しています(みなさん、ぜひフォローしてくださいね)。
これから寒くなり本格的なシマエナガシーズンを迎える北海道。楽しみな季節がやってきました。シマエナガは冬になると街中の公園などで見ることができるので、探鳥地ガイドも掲載されている『とことんエナガ、シマエナガ』を参考にシマエナガに出会う旅などいかがでしょうか。シマエナガを探す方法はいろいろありますが、一番簡単なのは望遠レンズ付きのカメラを持った複数のカメラマンを見つけることかもしれません。小悪魔に魅了されたカメラマンたち。その中に、もしかしたら私もいるかもしれないですよ。
奇跡の一枚
最後に、思い出深い撮影エピソードを紹介しましょう。下の写真は2021年α cafe第10回スペシャルフォトコンテストネイチャー部門で銀賞を受賞した「雪に舞うシマエナガ」です。2020年の自由部門の「キレンジャク屏風絵」に続いて2年連続の銀賞でした。
撮影した日は吹雪でメガネとカメラのファインダーに雪が積もって前がよく見えない状況でした。そして寒さで指が凍えてシャッターもまともに押せなくて、連写モードにしていたのに、撮れたのはこの写真たった一枚でした。前後のカットがないのです。奇跡的な一枚でした。自分の力で撮ったのではなく、カメラの神様に撮らせていただいたのだと私は信じています 。
Author Profile
磯真査彦(いそまさひこ)
北海道札幌市在住。北海道大学卒。IT企業勤務。土日を中心にシマエナガや北海道のかわいい動物、美しい風景を撮影。フォトコンテストでの受賞歴多数。
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